21世紀型スキルの新しい評価
☆埼玉教委×インテル×東大が動き出した「21世紀型スキル研修」。ここでは、新しい評価が盛り込まれているはず。どんな評価だろう。
☆このインテルの動きや東大のジグソー法などの動きは、基本的には、89年のベルリンの壁以降の新しい学習の考え方の成果が前提になっている。当然95年以降の爆発的なIT革命の影響も受けている。とするならば、この時期黄金の脳科学の時代でもあるから、脳科学の成果も加算されているはず。
☆となると、その理論的根拠づけは、ダニエル・ゴールマンのEQ、ハワード・ガードナーのMI、シーモア・パパートの3Xに代表されるような学習理論に依拠していることは明らかである。彼らは脳科学やもちろんICTの成果も活用している。
☆しかし、何より重要なのは、結局その流れをたどいっていくと、フロイトやピアジェ、デューイなどに源流がある。だから右顧左眄せずに、きちんと基礎を押さえておけば、21世紀型スキルやそれを活用した21世紀型教育について「わかんない」ということにはならないはず。
☆しかし、「わからない」という言葉は、巷に山のように吐き出される。それはなぜか?これもピアジェやデューイを源流とするコールバーグの道徳発達理論をコミュニケーション行為のレベルに批判的に対応させたハーバーマスの考え方が役に立つ。
☆ここで吐き出される「わからない」という言葉は、無知という意味を含んでいるのではなく、抑圧的な排除の意味が含まれている。
☆官尊民卑、学尊民卑、パワハラベースの抑圧的コミュニケーションが支配しているということを暗示しているのである。
☆このようなコミュニケーションのレベルでは、新しい評価はできない。基本抑圧的コミュニケーションは、レッテル貼り、アメとムチによるコミュニケーションがふつうだからだ。
☆だから、今までヴィゴツキーの「最近接発達理論」というのが浸透してこなかった。ヴィゴツキーの理論もピアジェが源流だし、デューイやシーモア・パパートとシンクロする。偏差値のように見える学力を一生懸命伸ばすことを試みてきた20世紀型の教育。
☆21世紀型スキルは、そのなかなか伸びない生徒の躓きをサポートし、伸ばしてあげることができる!というなんという間違い。この間違いを犯してしまうのが抑圧的コミュニケーションのフレームなのである。
☆実は「最近接発達理論」は、一人ひとりの生徒の「見えない学力」を見出し、それを応援することで、見える学力にも有機的にリンクして、最終的には生徒が豊かに育っていくという考え方なのである。
☆したがって、「見える学力」をいかに伸ばすかにしか主眼がない、つまり偏狭な見方をしている塾・予備校では、ヴィゴツキーの考え方は無視されてきたわけである。同時にその偏差値に結局は影響を受ける学校側も、同様のことが起きていたわけである。これでは、いじめや不登校が増えるわけである。
☆1人ひとりの才能を見出すことはやっていると、反論されるかもしれない。しかし、それは理屈にならなければ、たんなる思いやりにすぎない。その思いやりは大切であるが、教育とはシステムである。そうでないという方もいるかもしれないけれど、持続可能性には組織とシステムが欠かせない。
☆その中にはいって教育をやっているのだから、思いやりが重要だと思った場合、それを組織化しシステム化しなければ、独りよがりになる。組織化やシステム化をただ拒否するのは、科学的ではない。天動説を否定できないかつての見識者と同じである。
☆組織化することやシステム化することを悪とみなすのではなく、組織化やシステム化の正当性、信頼性、妥当性をいかに設計するのかについて議論しなければならない。つまり抑圧的コミュニケーションレベルからメタ認知段階のコミュニケーションレベルにシフトする必要がある。
☆そこでやっと新しい評価、つまり「最近接発達領域」を見出し、そこをサポートできる評価が構築されるのである。
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