佼成学園女子 AERAで留学コース評価される
☆週刊誌『AERA(アエラ)』2012年7月16日号に、佼成学園女子の「留学コース(特進留学コース)」の一定の評価が掲載されている。
☆同校サイトに詳しく書かれているので、ぜひご覧いただきたい。
☆ただ、この記事の質感であるが、たしかに、政府や文科省、都教委は、高校留学を促進しようとしているし、東大でも秋入学やグローバルリーダー養成コースを来年から設置するなど、時流に乗ってはいるが、大事なことをあえて言っていないということを見逃してはいけない。
☆つまり、AERAという雑誌の性格上、啓蒙的なことは書けないだろうから、留学すると英語が得意になる、英語が得意になると大学入試に有利になるという流れで、書かざるを得ない。
☆しかし、ちょっと考えると、高校留学してなぜ国内大学なのだろう?となる。ここを掘り下げると、啓蒙的になってしまうから書いていないのだろう。
☆これは、現代国語の検定教科書の素材文でも批判されているが、メディアの中立性の仮象である。ライターがあえて書けなかったのか、無意識なのかは、結果的にはどうでもよく、ある方向性を決定づけてしまっているのである。
☆ここでは、グローバル人材を育成しようという世界的視野が背景に退き、英語が得意になるために留学を利用しよう、すると大学合格実績が向上するという流れを正当化している。
☆佼成学園女子は、実はここにねらいがあるわけではない。というのも留学の経験というのがいかに実り豊かなものであるかということの方が重要なのである。
☆受験市場は、そこはどうでもよい。英語が得意であればそれでよいのだ。しかし、この短絡志向が、大学生の教養レベルの学力低下をもたらしている。この学力低下の悪の権化はAO入試や推薦入試だというのが、これまたどうしようもない受験市場の戦略的虚言である。
☆英語の大学入試を見ればわかるように、もし英語の力だけが得意で大学に入学するならば、当然ながら教養などいらない。英語の入試問題が解けるのに、教養も思考力もそれほどいらない。
☆だから、大学入試レベルの英語だけが得意になって大学に入っていくこの流れが、日本の大学を危うくしているのだということに気づかねばならない。
☆そしてだからこそ、留学が価値があるのである。留学すると日本の大学に入るための英語力がつくだけはない。異文化理解とかそういうのもあるが、なんといっても思考力がつくのである。そのうえで英語力もつく。そういう英語で考えることができる人材が国内大学に進学することが危うい大学を救うし、それはガラパゴス日本社会を世界に拓くのである。
☆そういうわけで、東大は秋入学を設定し、ギャップタームで受験英語力だけではなく、きちんと教養的経験をしてきて欲しいと思っているし、グローバルな利益中心経済主義ではなく、グローバルな倫理的経済主義の考え方を身につけて来てほしいと考えているのであろう。
☆しかし、すぐに反論があがる。早めに資格試験にパスするために、結局予備校に通い、もとの木阿弥ではないかと。
☆いやはやとんでもないなあと愚痴っていても仕方がないので、東大はあわてて来年2013年から、入学後300人を選抜し、グローバルリーダー養成コースを立ち上げるというのだ。将来そこに進むために、ギャップタームを活用してほしいということなのだろう。
☆ともあれ、論文レベルの意味で「書く英語」、「考える英語」の力をつけたいわけである。将来本格的に大学がリベラルアーツをやりたいわけだ。これがなければ世界標準でないから、国際大学ランキングがどんどん下がっていく。したがって、大学生の学力低下をどうするかなんて言っている暇はなくなってきている。リベラルアーツにシームレスに中高の教育がつながるには、留学体験は得難いのである。帰国生が大切にされてきたのも本当はそういう意味である。
☆それは、東大の帰国生に課せられる小論文試験の内容を見ればすぐにわかる。一般試験とはまったく違う問題である。問題のためのトラップなどまったくなく、純粋に考える力や発想力をみたいという期待値の高い問題が出題されている。
☆さて、ここまでくれば、佼成学園女子の本当の教育の目的が見通せるだろう。留学生には、海外で学んできた体験を、留学しないで国内でガンバっている生徒に知的刺激や学びのチャンスを広げるきっかけに転移するという、重要なミッションがあるのである。同校では、それを学びの転移と呼んでいる。
☆佼成学園女子の英語教育は、このような有機的な結合がシナジー効果を生んでいるのである。もっとも、この教育がさらに充実すれば、進学先は国内でなくてもよい。スタンフォードやケンブリッジだっていいじゃないかということになる。つまり、産業のみならず教育の空洞化が音を立てて始まるのである。
☆ジャーナリストならば、書きたくてウズウズしているテーマであるが、岩波文化はもはや流行らないのだろう。世は読者中心主義である。
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