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NHK 今なぜ哲学?

NHK Eテレは、 2012年8月28日(火) 23:00 ~ 23:29、「哲子の部屋」という哲学番組を放映。 笑い飯・哲夫 、吉木りさ 、 國分功一郎(高崎経済大学准教授)が出演。サンデル教授の白熱教室の番組とは、一見真逆。しかし、サンデル教授の扱う素材は日常的なニュースが多いから、素材にされる側ではなく、ポップカルチャー側からの哲学があっても当然。しかし、今なぜNHKは哲学なのか?

Dialogue

☆グローバル人材だあ!ハーバード大学へ留学だァ!高校留学支援制度だァ!とか、米国の哲学の教科書まで翻訳される時代でもあるからだろうか?もちろん、これらは現象というより、時代の要請である。時代のクレイムである。

☆しかし、NHKは、なぜこのタイミングなのか?

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☆「ソフィーの世界」。1995年NHK出版が世に出した。これもヨーロッパの哲学教科書である。空前のベストセラーとなった。なぜ?95年と言えば、

第二次世界大戦が終わって50年を迎えた年。

阪神・淡路大地震

地下鉄サリン事件

Windows 95の発売

☆2010年、NHKはサンデル教授の「白熱教室」を日本語版にして流し始めた。これは、当時の民主党は、まだ鳩山内閣のブレインたちが動いていたからだろう。鈴木寛氏、金子郁容氏などは、「熟議」プランによって、文部官僚をはじめとする政府官僚に広く「新しい公共」路線をけん引していた。この「新しい公共」の下敷きは、ハーバーマスの思想であるが、そのハーバーマスがドイツに紹介していたのは、コミュニタリアンのサンデル教授である。

Justice

☆公共哲学をベースにしたあのマイクロファイナンスでノーベル賞を受賞していたユヌス氏も、日本にたびたび訪れていたぐらいだ。その翌年、時代を大きく変えたリスボン大地震を想起させる東日本大震災が起こった。そして原発の事故。ヒロシマ、ナガサキ、フクシマという時代を問い返す事故。

☆リスボン大地震のとき、社会を人間存在を問い返したのは啓蒙思想。明治政府は、この啓蒙思想を捨てて、日本官僚近代国家を作ってきた。フクシマはそれを問い返す拠点となった。そしてこの問い返す思想として、再び啓蒙思想が見直された。つまり、サンデル教授の依拠する思想である。

☆NHKの教育番組は、文科省の意向に背くことはない。したがって、文科省が何とかしようと思って結局近代化を推進してきた自己矛盾でどうしようもないといころを、実はよく知っている。そこで、そこを補うために、メディアとしてアカデミックからポップまで、広くその自己矛盾を解消する番組を制作することをミッションとしているのだろう。

☆「哲子の部屋」に出演した國分功一郎准教授も、フランス現代思想をベースにしている。つまり行き着くところはジャン=ジャック・ルソーなのである。原点への回帰。起源ということか。

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