軽井沢現代美術館で草間彌生=ソフトパワーに遭う
☆2008年に、大手企業の保養所を改装してオープンした「軽井沢現代美術館」はおもしろい。神田の三省堂書店に構えている海画廊が経営しているから、倫理的な市場の原理で稼働している。
☆だから、現代美術館と言っても、わかりにくさがない。子どもが訪れて、親しみながらも、ポップカルチャーやクールジャパノロジーと似て非なるものであることに気づく仕掛けがある。
☆しかしながら、ちゃんと版画などの作品を販売しているから、同じように商品という視点もある。商品で貨幣に交換されるのだけれど、心が物象化されきった製作物との違いを気付いた上で、精神が形象化された制作物を購入できる仕掛けはおもしろい。
☆今開催中の企画展は、「海を渡った画家たち-草間彌生を中心に-」で、2012年4月1日(日)から11月30日(金)まで行われている。草間彌生は、昨年5月より欧米4都市で大規模な回顧展が巡回し、話題を集めているらしい。同美術館でも、世界で活躍する草間彌生を
中心に、奈良美智、村上隆、名和晃平、白髪一雄等を展示紹介している。
☆特に草間弥生の作品は量が多いだけではなく、ここ最近の作品も展示されており、物象化されそうでされない円熟した形象化に静かに驚かされる。
☆一面の菜の花を思わせるフラクタルな次元の広がりを得意としていた草間であるのに、そのフラクタルを形の中に入れ子にしていく。それがまた形というのが、なんて不安定な瞬間の形象なのか、つまり決して物象化というハードパワーに支配されない崩壊の過程を内包し、それが未来を形象するソフトパワーになり得るかを語りかけている。
☆ここには、近代が問題にしていたジレンマを一蹴するマルチレンマの非連続が、なぜか形象化されている。ここにも市場の原理としての理性の狡知がある。
☆奈良美智の子どもの眼光は、まさしくその理性の狡知の象徴ではないかと改めて感じた。「カワウィ~」というバラエティの世界を包摂してしまう狡知としてのカワイサ。それは村上隆のフィギュアにも同様にある。何をシロウトが言うかといわれるだろうが、コンテンポラリーアートを見た後の違和感がない構成であるのには、安堵する。市場の原理があると、美術館もかくも雰囲気が変わるものなのか。つまり、ソフトパワーのなせる業である。
☆いずれにしても、この地は南原がすぐ近くで、鳩山一郎をはじめ学者がたくさん避暑に来ていたといわれている。この地で、鳩山はクーデンホーフ・カレルギーの書に出遭い、唯一の被爆国日本は、世界に友愛革命を起こすリーダーになることを使命とすべきだと決意した。
☆この友愛精神は、その後共立女子の3つの校訓の一つになった。渡辺校長の部屋で、よくその話を聞くのだが、校長室には草間弥生の作品がある。この学校もソフトパワーに満ちている私立学校である。
☆そうそう、展示を見終わると、お茶とクッキーのサービスもある。そこでひとしきり談話し、販売用の版画を眺めていると、つい購入したくなるものだ。私も子どものための絵画教室のプログラムを3つほど思いつき、仲間とブレストを行うことができたのは、幸いなひと時であった。
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