八雲学園 時代の不安を吹き飛ばす学校
☆近藤校長の講演は、いつもながら八雲学園の不易の教育とその年の時代の不安を乗り越える流行の教育について、明快にビジョンを語られた。
☆不易の教育とは、4本の柱で構築されている。英語教育、芸術鑑賞、チューター制度、進学指導がそれである。そしてその4本の柱の土台として教育空間がある。これら不易の教育を、日々絶えることなく緻密に教職員と生徒が一丸となって行っているのである。このことは、English Performanceに象徴されている通りである。
☆今年の時代の不安は、いじめの問題である。八雲学園では、この問題が世を席巻してからあわてて取り組んだのではなく、いじめの問題が起きないように、また起こってもすぐに解決のために動けるように態勢ができている。つまり起こってから対応する危機管理体制ではなく、それ以前からのリスクマネジメントが確立しているのである。
☆この決定的な態勢の一つが、チューター制度であることは言うまでもない。チュータ制度は、担任の先生以外の先生がチューターとなって、24時間体制でコミュニケーションをとるシステム。密室・秘密主義の教育カウンセラーを導入するのではなく、多角的でオープンマインドの雰囲気を創り出すコミュニケーション環境を確立しているということだろう。
☆また、マナー教育も充実している。マナーというと儀式的とか形式的という浅薄な見方をする人もいるが、互いに尊重したり、ウェルカムの精神やおもてなしの気持ちを生み出したりと、本物の価値を他者との間に呼び覚ます行為であるということである。
☆この本物の価値をシェアすることこそ、いじめのような問題を生み出さない人間関係をつくりだすというのは実に納得のいくの話であるし、社会学的見方をすれば、近藤校長のこの説明は交渉重視成果志向型コミュニケーションではなく、交流重視了解志向型コミュニケーションである。つまり、権威・権力主義的なコミュニケーションではない。
☆このようなコミュニケーションが雰囲気をよくするのは、当然だろう。しかし、大事なことは、生徒1人ひとりが、本物の価値をどうやって創出するのかということである。近藤校長は、そのためには本物体験と世界レベルの体験をすることであると。
☆なるほど、だから芸術鑑賞だし、ケイトスクールとの交流だし、スポーツも世界レベルの選手と交流するということなのだ。
☆昨年は、3・11という世界中の人が共有する不安とそれを克服する事件が起こった。そのときすでに八雲学園は耐震構造の教育空間を建築し終えたばかりだった。やはり時代の不安を吹き飛ばす学校である。それは日々の本物教育の実践の結果に過ぎないということだろうが。
☆さて、来年は近藤校長はどのような話をするのだろうか?不安を先取りするなと言われそうであるが、不安に耳を傾けることは、人間の本物存在を問い返す人間の証明であるはず。そこにこそ本物教育の根っこがあるのではあるまいか。
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