変わる教育[01] 女子聖学院の入試変更
☆しかし、今耳を澄ませば聞こえてくる音は、フレームの壁がひしめいている音である。中世都市→ルネサンス都市→バロック都市→産業都市→国際都市→グローバル都市→「X都市」へと未知なる「X都市」を形成するためのフレームワークそのものが壊れる音である。
☆実は、この産業都市が生まれるトリガーが、産業革命と市民革命であり、この両革命の矛盾の中にはじめから、未知なる「X都市」出現の種があったのである。そのエネルギーの一つが≪私学の系譜≫であり、この系譜が生んできた都市は、産業都市に対し社会改良主義の田園都市である。すでに19世紀末にこの活動は始まり、庭園国家論やスマートシティにつながっている。これらもフレームワークを壊す契機であろう。
☆壊すといっても、都市の成長脱皮の時期を迎えていると表現したほうがよいのかもしれない。それはともかく、その音は中学入試という領域でも生まれている。
☆たとえば、女子聖学院の2013年度入試変更点のチラシにもそれは顕れている。
☆午後入試を増やし、入試問題を易しくして、受験のハードルを下げ、生徒獲得数を増やそうとしている戦術ではないかと考える方もいるだろう。それは、20世紀型教育の偏差値軸で見るとそうなるだけのことだ。
☆しかし、21世紀型教育のフレームを置き換えると、午後入試への決断は、選択肢を増やす開かれた戦略に変更しようということだし、数学の出題改革は、スモールステップにわけて、計算や考える問題のプロセスごとに点数を与えて評価するというプロセスフォリオ型の評価に変わろうとしているとみなせるのである。
☆たとえば、一枚目の写真の中から次のような問題形式をズームアップしてみよう。
☆今までは、(1)や(2)は出題せずに、(3)をストレートに問いかけてきた。あとは途中式を採点するということで、(1)や(2)は、暗黙知で終わっていた。しかし、今回は、それを見える化して、得点をつけるということなのである。もしも途中式を採点しない場合は、(1)や(2)まで、考えることができても、ゼロ点となっていただろう。
☆それでは、どこまで考えることが出来る生徒であるかどうか学習状態の判断はつかない。このレベルに到達していない生徒であるという結果だけが出される。これでは、(1)までしか考えられない生徒なのか(2)までしか考えられない生徒なのかはわからない。
☆ところが、21世紀型教育というのはその生徒の思考の「最近接発達領域」を評価して、エンパワーするというものであるから、プロセスをきちんと評価するのである。女子聖学院の教育は、このような「最近接発達領域」を見破り、生徒と思考のプロセスをシェアしようという教師がいるということでもある。
☆この姿勢を、他教科でも顕在し、女子聖学院全体に自覚的に広げていくという期待がかかる。もちろん、持続可能性が重要で、2014年度の入試もさらにこの方向で進むかどうかは、学校の経営陣の決断だから、見守る必要はあるだろう。
☆しかし、選択肢を拡大し、プロセス評価の開発というのは、教育が変わる音の一つであることに変わりはない。もし多くの学校が入試問題を、女子聖学院と同じようにプロセスフォリオ型に改革するということにでもなれば、その共鳴音は大きな音になるだろう。
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