変わる教育[06] 公立中高一貫校適性検査は法規違反か
☆来年の入試からくじ引き選抜が撤廃される埼玉県立の中高一貫校、伊奈学園中学校(伊奈町)の入試問題の妥当性が、3日の県議会一般質問で取り上げられたというのである。入試問題(公立中高一貫校の場合は適性検査と呼ばなくてはならないが、伊奈学園の場合は自ら選抜と呼んでいる)の信頼性・妥当性・正当性をめぐって、議会で議論されるとは、やはり時代は変わってきているという感がある。
☆朝日新聞が例としてあげている上記の問題は、古典的なつるかめ算。
新井一徳議員(自民)が、過去の問題をパネルで紹介しながら「算数や歴史の知識がなければ解けない問題だ。県内の塾には同中への入試対策コースもある」と指摘。「公立中では学力検査を行わない、と定めた学校教育法施行規則に違反していないか」と問いただした。
☆というのはもっともだ。しかし、この問題を塾にいかなくても考えることができるようにすることは可能である。はじめにつるかめ算があるわけではなく、上記の問題のような現象をどう関数関係で解き明かしていくかというアイデアが先行している。
☆しかも、つるかめ算は、連立方程式の技術がなくてもそのアイデアを小学生でも考えらるようなモデルにしているのだから、むしろ科学や学問のエッセンスを誰にでもわかりやすく伝えるアイデアとしては、むしろ民主的な創意工夫である。
☆だから、残念ながら新井議員は、塾がこの方法を編み出した受験テクニックであるという先入観があったのは否めない。
☆一方、前島富雄教育長は「選択して答えさせる問題でなく、自分の考えを言葉で書かせている」と反論したというから、これもまた妥当性を欠く。というのも伊奈学園が用意している解答は、つるかめ算の説明そのままだからだ。これでは、新井議員に突っ込まれてもしかたがない。
☆前島教育長は、数式ではなく、文章化すればそれで考える問題であるとする臆見を持っているのも、これまた否めない。この問題は、ソクラテスのような対話編にしたり、実際に表にして、数えて行ってみるという、まずは体験型の調べ学習のプロセスを踏ませるなど、このつるかめ算の解き方の前段階のきめ細かい「最近接発達領域」に踏み込んでいれば、適性検査として妥当性は担保できただろう。
☆いずれにしても、「適性検査」という名称をつけるかつけないかで、学校教育法施行規則に違反か否かを問うのではなく、問題作成の正当性・信頼性・妥当性に踏み込んだという意味で、やっと教育にも科学と民主主義が始まったのである。
☆米国では、テスト作成学や評価測定学が学問として存在する。選抜というコミュニケーション行為には、人権の問題がリスクとしてあるという民主主義の原理を保守するためにである。
☆評価は教師や文科省に準じる機関にされるものだという文化は、民主主義的プロセスから外れるリスクがある。そういう認識が定着するためにも、新井議員のようなツッコミは今後も大切である。
☆もっとも、政治の話だから、違うチャンネルでこういう答弁になったのかもしれない。そこはカッコにいれての話としてお読みいただければとは思うが。。。
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