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変わる教育[22] 公立授業改善にコンサル

☆日経新聞2012/10/16 14:03 によると、

学習塾各社が相次ぎ公立学校の運営支援に乗り出した。栄光ホールディングス(HD)は東京都葛飾区から中学校の授業改善に関するプロジェクトを受託。早稲田アカデミーは同足立区の中学の成績上位層が対象の課外教室に現役講師の派遣を始めた。公立学校の教育水準や進学実績に対する地域住民の関心の高まりと自治体の教育改革の動きに対応しながら事業拡大を目指す。

☆教育と企業のコラボが進むことはメリット、デメリットはあるが、外の風が流れ込むメリットのほうが大きい。

☆もちろん、ここでいう授業改善、教育改革は、現状の高校入試、大学入試という学歴社会のフレームを改革することではなく、あくまでこのフレームの中で競争しようということだから、本質的問題解決にはならない。

☆しかし、このようなピースミールエンジニアリングの積み重ねが、やがてはフレームの自己矛盾を露わにするコトにつながるということは大いにあることである。

栄光HDは、葛飾区立中の教員10人の授業を専門コンサルタントが分析し、より生徒が集中できるように改善するプロジェクトを約350万円で受託した。生徒アンケートを実施し、教員に自己評価との違いを認識させる。さらに来年2月までに同社グループの日本教育大学院大学(東京・千代田)が教員にノウハウを提供し、教科指導のレベル向上を目指す。

☆開かれた授業、学校になることはよいが、そのアンケートが自由記述を分析しているのか、あらかじめ用意された選択肢をチェックするものなのかによって、その効果はかなり違う。どちらをやっているのだろうか?

☆これは後者だろう。大手企業というのはわかりやすい。350万円という金額では、自由記述を分析する質的リサーチはできないからである。選択肢を活用すれば、かなりの量的リサーチは安価にできるから、ある程度利益もでるだろうと予想がつくのである。もし企業が利益なしでやっていますと回答したら、それはモノもいいようの範疇だと思えばよい。

☆このシステムにIRTなどを入れ込むと、量的リサーチは質的リサーチにシフトする転換点を見出すことができる。そこから先は質的リサーチを取り入れれば、さらに授業や教育は改善・改革される、振りかえると景色はかなり変わっている。プラトー状態から抜け出しているということに気づくだろう。

☆教職大学院の本質的な問題点は、現場と理論を学際的にリンクする教授が存在しないことである。現場と理論を道徳的につなげる人は多いが、合理的かつ学際的につなぐ見識者がいない。その点、企業は、マーケットそのものが学際的な塊だから、経験でトレーニングされている。

☆そういう意味では、学校、自治体、企業、教職大学院などのステークホルダーのコラボは相補的な教育市場を創りだす一つの大きなきっかけであり、教育の転機になる可能性がある。

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