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変わる教育[26] かえつ有明 ダイナミックな気運

☆今春かえつ有明は、共学中高一貫一期生の合格実績の凄まじさに、受験業界は目を覚まされたが、5月に来年度から「共学だけれど、授業は別学」という新しい教育システムを発表し、またまた注目を浴びた。学校説明会を行うたびに参加者も殺到し、卒業生の涙ながらのかえつ教育論に共感し、一方で帰国生のための国際教養講座やサイエンス科の作文入試対策講座で、かえつの知をシェアし、同校のビジョンやメンタルモデルを吸収した。

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☆こんなに話題を作ってきたのだから、あとはグライダーのように遠くまで風に乗っていくのかと思いきや、今度は「信長とジョブスの対話」をテーマに作文入試対策講座をやるという。普通の学校では、こんなに俊敏に知的創発が行われることは考えにくい。このダイナミックな気運がなぜ生まれているのか実に興味津々である。

☆石川副校長は、

「合格実績は、パンフレットにもまとめてあるように、守破離の6年間一貫の教育リズムが奏でたアウトプット。大切なのは、一期生の教育システム、学びのプロセスを徹底的に振り返り、さらにソフィストケートした教育環境。環境にはアウトサイドのシステムもあるし、インサイドのシステムもある。ある意味別学というフレームワークはアウトサイドのシステム。今までの説明会では、そこまでを丁寧に発信してきた。これからの説明会では、インサイド、つまり内発的な学びのプロセスを発信する時期。保護者は、実際にはどんな教育内容や学びが行われ、自分の子どもがインパクトを受けて成長していくのか、気になる時期でもあります。ですから、次々新しいことを打ち出しているのではなく、かえつ有明の教育の内容や質の切り口を時期に応じて変えているにすぎないのです。伝えていることは一つのことなのです」

☆と奥ゆかしく語ってくれた。たしかに、同校サイトを見れば、次のような表題が並んでいる。

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☆サイエンス科でも英語でも、学年の成長に合わせて論理的でクリティカルな思考を編集する学びが行われているというのは一目瞭然である。中2のアカデミック・エッセイのページを開いてみると、

1.意見文を理解する
2.意見文を読み分析する①
3.簡単な意見文を書く(テーマ:学校給食の導入は必要か)
4.意見文を読み分析する②
5.PISAテストに挑戦!(グラフの種類や特性の指導)
6.インターネット検索法(ブーリアン検索・各種データベース・情報の信頼性)

(ここから本格的な意見文の作成に入ります)

7.班ごとにテーマの設定
8.情報を収集
9.班でテーマの賛成理由の根拠・反対理由の根拠をまとめる
10. 「トゥールミン・モデル」を利用して、班で説得力ある発表の準備をする
11. ディベート(簡易版)
12. 個人で意見文を書く
13. 活動を振り返る

☆このようなきっちりとしたプログラムのシークエンスが描かれている。ディベートやりますよとか、エッセイ書きますよというような教育WHATの羅列の学校サイトは多いが、かえつ有明は、そのプロセスフォリオが発信されている。つまり教育WHYが書かれている。

☆当然、作文入試対策講座や帰国生の国際教養講座もプロセスを学べる。プロセスがあるということは、参加者全員がどこかで好奇心が芽生える仕掛けがあるということを示唆している。しかしだ。なぜ信長とジョブスなんだろう。

☆嘉悦校長は、

「来年110周年を迎えるにあたり、もう一度近代国家形成時期の光と影を目撃していた創設者嘉悦孝の想いに返る準備を、今から学内でしています。嘉悦孝は江戸時代、つまり武士の時代と明治以降の近代の時代を生きた。両時代の架け橋であったと同時に、イノベーションを生み出す教育環境も生み出した。今の時代は明治維新の転機の時期と構造的には同じだと思っています。だから、近代だけ見直すのではなく、その前の時代から振り返ってみないと、時代と世界を読むスコープが歪んでしまう。そんな気運が、いまここでプログラムを編集している先生方にも共振しているのではないかなと思いますよ」

☆と。やはりダイナミックな気運はかえつ有明の歴史性に呼応し、未来に向けて響きを奏でているのだと確信した。と独り酔っていたら、石川副校長が、

「本間さん、これからのサイトでの発信を楽しみにしていてくださいよ。信長とジョブスの対話を読むだけではなくて、信長とジョブスと対話するセッションを仕掛けますから」

☆と、教育のプロデュースを楽しんでいるという眼光に、こちらもワクワクしてきた。

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