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変わる教育[41] 海陽学園 寮の新機軸

☆世の中グローバル人材だとか、21世紀型教育だとか、当たり前のように語られ始めた。それはよいことだが、スローガンだけで、やっていることは変わらないということのほうが、まだまだ多い。

☆ところが、海陽学園は、寮システムを活かした新機軸の発想を着々と実現している。「昼間の校舎での授業と行事」と「夜の寮での学びの組織態」が相乗効果を生んでいる。

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 左手から寮、カフェテリアなどの講堂、校舎、写真は体育館から撮っている

☆グローバル人材育成や21世紀型教育の共通点は何かというと、フリップト・クラスルーム(反転授業)。従来のように、講義で知識習得をしたり行事で体験をするのではなく、それは全部自宅でやる。授業や行事では創造的学びや応用問題にすぐに取り組むのである。

☆そして授業は独りで学ばない。チームで学ぶこともない。ピアインストラクション形式(参考→変わる教育[20] ハーバード流講義形式授業!)。じゃあどこで独りで学ぶのか?寮である。しかし、寮では、独りで学ぶときばかりではない。フロアーごとのミーティングやハウス(寮棟)ごとのミーティングがあり、そこでコラボレーションする。この寮における自学自習と協同学習のかけ合わせが、昼間の授業の思考力を回転させるための蓄電となる。

☆この蓄電はしかし、知識や情報だけではない。インタラクションや葛藤処理という実体験の中から問題解決能力、つまり、ともにサバイバルするスキルを学ぶ。リーダーの条件ということ。しかも、この寮における生徒1人ひとりの様子を、保護者も共有する。

☆どうやってか?それはハウスマスターやフロアーマスターが、言語化したものを保護者に毎週のようにメールで配信するのである。もちろん、この体験→言語化→共有というプロセスは、生徒も毎日行う。ポートフォリオではなくプロセスフォリオの徹底。

☆多くの学校の体験学習の間違いは、言語化プロセスが脆弱だということ。みんなで感動しました!感動を共有しましょうとばかり輝く目をした写真をパチリ。写真、それは1秒の姿。しかし、実際は90%の時間苦しいから楽しいのだ。他者との葛藤より自己との葛藤に悩み楽しむのだ。

☆その状況を見守る人は、今や普通の家庭でもなかなかいない。寮ではハウスマスターとフロアーマスターが24時間体制で行う。もちろん、付かず離れず。この間合いは、若いフロアーマスターが、企業に戻ったときにもっとも役立つリーダーシップのスキルである。そして、その間合いをとれる境地に生徒も達するとき、学力も伸び、精神も豊かになる。

☆とにかく、この寮のシステムがやはりすごい。一つのハウス(寮棟)に生徒は60人くらい。そこに大人のハウスマスターが1人、フロアーマスターが3人。生徒側にもそれに対応する4、5人のロールがある。

☆寮というと規律と道徳で縛られているようだが、海陽学園の寮生活はもちろん熱き心の教育もあるが、クールな戦略教育もあるのだ。つまり、徹底したデータ教育。

☆1年間で、60人のうち9%がリーダー経験をする。おそらく一年で交代もあるだろうから、18%はリーダー経験をするだろう。20:80原理をうまく使っている。リーダーの学び方を学ぶ姿勢、チームビルディングの姿勢を、ハスマスターやフロアーマスターが、ミーティングしながら象っていく。

☆ロールモデルをつくり、何せ60人であるから、全員のミニテスト、定期テスト、模擬テストの詳細を分析、日記を詳細に分析、言動を詳細に分析できる。その結果、ロールモデルの基準に達しないメンバーを20%以下にするように丁寧に指導していく。

☆生徒同士は、個人ワークとチームワークを繰り返し、それに乗れていない生徒は、ハウスマスターやフロアーマスターは面談をする。もちろん、その面談スタイルは、あるときはコーチ、あるときはファシリテータ、あるときはメンター。このコミュニケーションのスキルをハウスマスターは変幻自在に生徒の状況に応じてシフトする。その姿をフロアーマスターはまた学ぶ。そして各ハウスのPTAのハウス委員とも協力する。

☆寮生活が、保護者も巻き込んだ学びの組織態になっているのである。今日このような強力な学びの組織態を家庭で作ることはできない。だから塾予備校に頼ることになる。

☆しかし、塾予備校は、まだまだ個人ワークで、相乗効果を生み出せない。だから、海陽学園の寮システムは、他の学校や教育場にはないとも言える。

☆ともあれ、20:80原理でいく。リーダーシップを20%象り、それをロールモデルに1人ひとり指導。逆についてこれない生徒を20%以下にしていく。あるハウスでは10%いないと聞き及ぶ。これによって、あきらめないチームを作ることができる。もしついてこれない生徒が20%以上いると、どんなにリーダーがエールを贈っても、どうせという雰囲気の広がりを阻止できない。それが20%以下なら、そのエールもとどくし、友人やマスターのアドバイスにも耳を傾けられる。

☆ただし、これはハウスマスターのキャリアと力量にかかっているともいえる。どんなに優れたシステムも、最後はリーダーシップという人間業に依拠するしかない。優れた文化資産を保守するのはシステムではあるが、そのシステムを維持するのは人間のリーダーシップである。この循環がわかっている学校や企業は少ない。結果勝ち組と負け組ができる。

☆どんなに優れた組織も、優れたリーダーシップがなければ持続しない。どんなに優れたリーダーも、優れた組織がなければ、力を発揮できない。リーダーと組織がともに成長できる学びの組織態。これを生み出しているのが海陽学園の寮システムなのではあるまいか。

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