変わる教育[47] 田中文科大臣の3大学の新設認めない問題
☆「変わる教育[44] 3大学の新設認めない?」 で述べた通り、どうやら根拠薄弱ではないかというのが世の受け止め方。こんな言も飛び交っている。田中文科大臣はやっちゃった。選挙見据えてのパフォーマンス。民主党はすぐに罷免して支持率アップをねらえとかなんとか・・・。これまた無責任なメディア対応。
☆そうではなく、根拠について議論したほうがよい。根拠と言えば、ますは法令だろう。田中文科大臣の思惑はどこにあるかも、政治評論家的には重要であるが、その前に政治家は、国会で法律をつくるのも大きな仕事。
☆その法的根拠に基づいて、三権分立機能は働いているのだから、調べてみよう。「大学設置基準」でネット・サーチしたら、すぐにでてくる。
☆そして驚くべきことがわかるはず。田中文科大臣の発言は、法令上ちゃんと守られているのである。そしてもっとワクワクすることは、これは教育が変わるチャンスであるということ。この法律を変えようという動きが日本の教育行政を大きく変える突破口になるからだ。
☆結論はさておき、学校教育法にしたがって、「大学の設置等の認可の申請及び届出に係る手続等に関する規則」というルールが定められている。今回の件に関する法令は以下の通り。
第二条
大学又は高等専門学校の設置の認可を受けようとする者は、認可申請書(別記様式第一号の一)に次に掲げる書類を添えて、当該大学又は高等専門学校を開設する年度(以下「開設年度」という。)の前々年度の三月一日から同月三十一日までの間に文部科学大臣に申請するものとする。
一 基本計画書(別記様式第二号)
二 校地校舎等の図面
三 学則
四 当該申請についての意思の決定を証する書類
五 大学又は高等専門学校の設置の趣旨等を記載した書類
六 教員名簿(別記様式第三号)
七 教員個人調書(別記様式第四号)
八 教員就任承諾書(別記様式第五号)6 第一項の申請をしようとする者のうち、あわせて通信教育の開設の認可を受けようとする者は、同項の書類に加え、第六条第一項第九号及び第十号に掲げる書類を、第一項に規定する期間内に文部科学大臣に申請するものとする。
第十条
文部科学大臣は、第二条第一項及び第六項、第三条第一項(第四条及び第五条において準用する場合を含む。)及び第六項(第四条において準用する場合を含む。)、第六条第一項並びに第七条第一項及び第二項の申請があった場合には、開設年度、学部等開設年度、研究科等開設年度、学科開設年度、通信教育開設年度又は学則変更年度の前年度の三月三十一日までに当該申請に係る認可をするかどうかを決定し、当該申請をした者に対しその旨を速やかに通知するものとする。
☆これによって、田中文科大臣は、認可しないよと言えたわけだが、問題はそこにはない。みんなが、そんな認可をひっくり返すなんて暴挙だと言っていることにたいして、法令ではなんと回答できるのかということである。それは学校教育法に次のようになっているのである。
第百三十九条 文部科学大臣がした大学又は高等専門学校の設置の認可に関する処分については、行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。
☆オーマイゴッド!である。不服を言うことができないよとことだろう。そんな裁判を受ける権利があるじゃないか!いやいや行政不服申し立ては、裁判じゃないんだよねと。もちろん、行政訴訟はできるから、それはそれでよいのだが、時間がかかる。進路先として今回ターゲットになった3つの大学を考えていた受験生は泣き寝入りである。
☆とにかく、条文だけでも何重にも壁がある。その壁を保守するための法令解釈はさらに複雑怪奇。
☆現代法システムはかくしてヤヌスの側面をもっているわけだ。権利を守る正義の味方と権力を守るモンスター。近代とはそういうもの。セオリー通りだよとエリートは冷やかに言うだろう。
☆いずれにしても、この権力の妄執、リバイアサンが出てきたときはそれはもう災害としか言いようがない。そんなときはどうするか?「人が死なない防災教育」の著者片田敏孝先生の言葉に耳を傾けよう。
「大いなる自然の営みに畏敬の念をもち、行政に委ねることなく、自らの命を守ることに主体的たれ」
☆田中文科大臣も人間として自然である。大いなる自然であるかどうか評価はいろいろだろうが。。。
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