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変わる教育[57] 聖学院 スキルを超えた21世紀型教育の完成Ⅱ

☆思考力セミナーとは、毎回「未知なる知識→媒介項→知識創発のシステム思考稼働→思考の自己マスタリーとしての論述」という流れになっている。もちろん直線進行ではなく螺旋進行ではあるが。第1回目は、図形そのものは既知であるが、その分類の基準は、教科書にも受験参考書にもない未知のものであった第2回目は、在校生が創作したエッセイが未知なる知識だった第3回目は、レゴという物質が実は知識になるという仕掛けが未知なるものであった。 

☆そして今回は、インダー族の写真。インダー族については、小学生は、教科書でも受験参考書でも学ばない。そしてファシリテーターである教師は、第1回目と同じ本橋先生。いつものように東大フェローの講座でサポートしている大学生がチュータだった。本橋先生は数学の教師だが、第1回目と違い、素材は数学に関するものではない。しかし、聖学院にとって、思考力とは教科の枠を超えてベースになるものであるから、このような越境知セミナーを編集できるのである。ここは見逃してはならないポイントの一つ。

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☆まずは、写真をみて、気づいたことを書いていく。そのときに大事なことは、WhatだけではなくWhyも書いていくという基本的な思考システム。

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☆そして、未知の写真をみて、自分なりにイマジネーションを飛ばした後に、チームで情報交換の対話をする。未知の知識を対話という媒介項を通すことによって、新しいアイデアを生み出したり、独りよがりなものの見方を訂正できたりするシステム。このシステムが実は、グローバル人材に必要なコミュニケーション能力の基礎となる。

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☆当然ながらワークシートに記入している個人ワークの段階では、生徒の頭は机に埋もれているわけであるが、対話の時には顔が立ち上がる。つまりこの瞬間がシステム思考が本格稼働し始める時である。それはハーバード大学のマズール教授のピアインストラクションという21世紀型講義に通じる媒介項。

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☆さて、システム思考の醍醐味はこれから。ここまでは、受験生はインダー族について学ぶのだと思っていたわけだ。しかし、実際は、写真という情報について学ぶプロセスだったということ。普通の授業(20世紀型)だと、やさしいことから難しいことへとか、具体的なことから抽象的なことへという階段状の授業展開になるのだが、21世紀型教育を標榜している聖学院の授業展開は、テーゼ―アンチテーゼ―ジンテーゼというダイアレクティーク(対話型or弁証法型)の流れ。

☆しかも、今回のように、テーゼ(テーマ)かなと思っていたら、それは受験生のかってな先入観であって、本当のテーゼ(テーマ)はこれからという展開。いわば、テーゼ→アンチテーゼの進み方が逆転していてアンチテーゼ→テーゼになっている。これによって、ダイナミックなシステム思考が転回し始めるのである。

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☆もちろん、ここには画像と文字を比較する論理的思考のエンジンの基礎が埋め込まれている。そしてこのアンチテーゼからテーゼへという進行と比較という思考の葛藤によって、新たな問いを見つけ、新たな知識を創発していく段取りになっている。実際の聖学院の授業ならば、新たな問いそれ自体を生徒自らが問い返すわけだが、あくまで思考力セミナーは、聖学院の授業のモデル体験であるから、次のような問いが予め設定されていた。

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☆実はすでにシェアの段階で、同じインダー族の生活の写真をみて、議論しているわけだから、その写真という素材が抽象化しただけのことであるが、このジャンプが思考の原理を体得するシステム思考の大事なトレーニングなのである。しかも、これはクリティカルシンキングの基礎鍛錬でもある。

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☆しかし、これだけは終わらない。今回の思考力セミナー全体を通して気づいたことを振り返る100字要約がある。要約とは論説文などの要約だとすぐに思ってしまうが、これは要約行為の一部に過ぎない。というよりかなり大学受験という制度に毒されている偏見である。要約とは、情報圧縮のことである。インプットする情報は、文字ベースだけではなく、音声も、ビジュアルも、データも、ボディーランゲージも、とにかく多様である。

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☆それらを、一瞬にして情報圧縮していかなければ、世界の舞台で、コミュニケーションはできないのである。こうして互いに協力したあと、再び自己マスタリーのフェーズに立ち戻る。それは日常から非日常へとゲートをくぐって旅をして、再び生還したときに、日常そのものの景色も変わっているという思春期の成長物語そのものでもある

☆エミール・シンクレールに遭遇できる学校というわけはここにある。

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