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教育インパクト[02] これから起こること 東大黎明期の意味

☆2005年に、東大では、「東大黎明期の学生たち-民約論と進化論のはざまで-」と題して、展示資料を公開している。

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☆このまだ初代東大の総長渡辺洪基以前の東大のルーツ時代、つまり東大初総理が加藤弘之の時代に、日本の官僚近代の光と影の矛盾がスタートした。そんな140年も前の話が今に及ぶなんてことはない。古い話だと、ちょっと前だとそう言われて一笑に付されただろうが、サンデル教授の授業、3・11と体験している今日、極めて重要な話であると興味を持たれる方も少なくないはずである。

☆というのも、140年以上も前に、すでに日本で議論された思想は、サンデル教授と同じ話であるからであるし、3・11以降、加藤弘之が提唱した優勝劣敗の背景にあった社会的ダーヴィニズムは見直されなければならないと誰もが思っているからである。どうなるかわからない今回の選挙戦も、しかしながら、この優勝劣敗思想が前面にでることはないのはその証である。民約論は、東浩紀氏によって、「一般意志2.0」という書によって再び世の議論になってもいるぐらいだ。

☆そして、この発想は本ブログの理念であるが、このとき現在の≪私学の系譜≫と≪官学の系譜≫が生まれたという話しなのだ。≪官学の系譜≫は官僚近代日本を形作ってきたし、それに対し≪私学の系譜≫は、もう一つの近代を常に対峙させてきた。もちろん、ことはそう簡単ではないが、「東大黎明期の学生たち-民約論と進化論のはざまで-」のサイトの説明を読んでいると、この色分けがある意味証明されているのである。

☆また、グローバル人材育成という今日の話は、しかしながら、明治維新のころの人材育成にあまり変わらないのも見え隠れしている。逆に言えば、≪官学の系譜≫があえて切り捨て、≪私学の系譜≫がそれを保守してきた経緯から考えるならば、グローバル人材の育成方法を、東大黎明期の議論までさかのぼっておく必要がある。

☆もし≪官学の系譜≫の過程を通るのであれば、それはうまくいかないことはすでに歴史が証明済みであるからだ。そしてそのことに疑いをはさむ方は、3・11以降を体験した私たちの中には、それほど多くないはずでもあるからである。

☆さて、2005年の展示のテーマである「民約論」とは、そこでは何もルソーの社会契約論のみをさすのではない。天賦人権説としての啓蒙思想一般を指している。だから、その思想の普及版としてイギリスでベストセラーになった「セルフ・ヘルプ」の翻訳「西国立志編」が併存しているのはそういう理由だろう。

☆この「西国立志編」は、今では「自助論」として地球物理学者だった竹内均先生の翻訳で読めるというのもどこか縁があるとしかいいようがない。ともあれ、この「西国立志編」は、「学問のすゝめ」と並ぶベストセラーで、今でも読み継がれている。あの五島慶太翁も大学生時代、英語で読んでいたというからその影響力ぶりは想像できるだろう。

☆この書の発想のコアは、アダム・スミス流儀の自由論に基づいた起業家精神の面目躍如の塊である。山中教授が米国の研究の拠点としている米グラッドストーン研究所恩師のロバート・メーリー名誉所長(81)と、同僚のディーパック・スリバスタバ心臓血管病部門長(46)は、日経(2012年12月10日)のインタビューに次のように回答している。

ロバート・メーリー氏: 「アントレプレナーシップ(起業家精神)を奨励している。創造性を持ち、リスクをとって重要なことを手掛ければ失敗してもたたえる。研究所の中核をなすのは最高水準の研究、科学を尊び同僚を敬う気持ち、そしてチームワークの3つ。これらによって人類に貢献する。山中教授はすべてを実践してきた」

スリバスタバ氏 「研究所は科学的、知的な自由度が高い。新しいアイデアが大学院生、ポスドク(博士研究員)から教官まであらゆる人たちから途切れることなく出てくる。相手と違った考えも受け入れてもらえる。多分野の人たちの異なる考えが集まり、課題を解決しイノベーションを生み出す。そして何よりも、毎日が楽しいと思える環境がある」

☆東大黎明期に学生たちに影響を与えた発想と何ら変わらない発想である。グローバル人材とは、このような発想の人材である。≪官学の系譜≫が切り捨ててきた自由と起業家精神を取り戻すには、≪私学の系譜≫の出番なのである。公立学校が私立学校のエッセンスをどのように吸収するか、それが重要なのである。

☆しかし、自由と起業家精神がない制度では、心ある教師によってしかその精神が伝わらない。心ある教師の数を増やすにはいかにして可能か?これから起こることはそういうことだ。

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