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2013中学受験【45】 西武台新座 アクティブラーニング

☆栄東がサイトでアクティブラーニングの教育を前面に打ち出しているのに比べ、西武台新座はサイトではたどっていかなければわからない。今春中高一貫校新設をスタートし、ずいぶん注目された。

☆しかし、かえつ有明などもそうだったように、立ち上がりは受験市場全般を意識して、大学進学への取り組みを前面に出している。つまり図と地と分けると、図には大学進学実績教育、背景である地には独自のそしてグローバルな教育をという生徒獲得戦略を実施しているのだろう。

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☆やがて、生徒募集も安定してきた段階で、図と地の反転を行うつもりであろう。そう予想できるのは、アクティブラーンニグの導入の仕方に、かなり本質的なところからきちんと組み立てていく構想力を感じるからである。深澤校長はこう語っている。

私たちがつくる新しい中高一貫校には、KALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)をモデルにしてICT環境を整えたSACLA(西武台アクティブラーニングラボ)というフレキシブルな教室を設置しますが、これはあくまでインフラであって、きちんと普段の授業の中に位置付けて運用していかなくては意味がありません。そのため重田先生(東京大学大学総合教育研究センター助教)にも、プログラムやツールなどのプランニングでお手伝いいただきますが、私としましてはぜひとも、「学ぶことが楽しい」ということが実感できる、夢や感動がある学びの場にしていきたいと思っています。

☆普通の授業の中に位置づけるということはどういうことか。重田先生はMITの例を挙げてこう語る。

これはMIT(マサチューセッツ工科大学)のアクティブラーニング教室の一例ですが、数名ずつのテーブルが島型に配置されていて、物理の実験を行うんですけど、最初にクイズが出題されて全員がクリッカーというツールでクリックして答える。答えはみんなバラバラで、その結果をモニターで全員が認識します。そのあと基礎講義があり、課題が出されてグループワークを行います。結果をグループごとに発表したあと、もう一度最初と同じクイズが出されます。今度はほぼ全員の生徒が正解しますが、授業内容を理解したということを、教員も含めて全員が視覚的にわかる仕組みになっている。これは効果的な学習方法であるだけでなく、学びの楽しさや喜び、感動を味わうことにもつながります。

☆ハーバード大学マズール教授だと、これを200人の講義で行う。ピアインストラクション(PI)と名付けている。つまり、アクティブラーニングというプロジェクト型の学びとPI型講義はDNAの構造のように交差するのである。

☆ただし、このPIL(Peer Instruction Lecture)とAL(Active Learning)が交差するにはICTのツールが必要であるのと同時に対話(たとえばデヒッド・ボームが言う意味でのDialogue)も必要である。

☆ところが、日本の教育で対話教育はまだ行われていない。エッ!コミュニケーションを大事にしていると異論反論がでてきそうであるが、「権力型コミュニケーションと市民型コミュニケーション」の区別や「抑圧的コミュニュケ―ションと創造的コミュニケーション」などの差異、そして生徒の成長の発達段階に応じたコミュニケーションの進化などについて意識している学校はまだまだ少ない。

☆アクティブラーニングのベースである構成主義的発想のルーツであるコールバーグの道徳発達を意識して取り入れている学校は麗澤である。しかし、このコールバーグの理論にはコミュニケーション論が抜け落ちている。

☆一方、現在最大の社会学者で哲学者(他界したロールズやローティの親友でもある。またサンデル教授の思想をドイツに紹介もしている)であるハーバーマスは、コミュニケーションの道徳発達という視点でコールバーグを批判的に換骨奪胎しているが、このような見識を踏まえてコミュニケーションをとらえ返している学校は土浦日本大学中等教育学校である。中川校長はこう語る。

私も,教育に必要な四つのコミュニケーション能力を示し,先生方のリーダーシップの更なる向上を求めました。
 四つのコミュニケーションとは,①学ぶ力を養う「学習コミュニケーション」②問題意識を養う「創造コミュニケーション」③批評能力を養う「対話コミュニケーション」④まとめる力を養う「抑圧的コミュニケーション」を言います。

 ……抑圧的コミュニケーションが全くない学校は無秩序な状態であり,大きな問題をはらむ。逆に,創造コミュニケーションがない学校があったとしたら,それは危険である。子供たちの潜在的な能力や個性を開発する環境は,抑圧するところは,抑圧しながらも,全体的に創造的な雰囲気が充満しているという環境が必要……

 こういう雰囲気をますます作り上げていくことが,土浦日本大学中等教育学校では強く求められているのです。

☆同校は、このようなコミュニケーションの基礎を土台に、生徒全員がラップトップを所有し、校内で自在に使う。重田先生のKALSのような特別な空間を、物理的に造るのではなく、リアルとサイバースペースの統合としてのバーチャル脳内空間に生徒自身が自ら創っているのである。

☆おそらく、ICTを活用することで21世紀型スキルをと叫んでいる人々は、まだまだリアルスペースとバーチャル=サイバースペースという二項対立でとらえている。

☆共立女子の渡辺校長は、かりにリアルな空間を従来の講義型からICT型のデザイン空間にシフトしても、思考形態が二項対立である限り20世紀型なのである。iPadを使っても、物理的にポストPCディバイスになっているだけで、実際には箱モノの変容に過ぎないと。そのような要素還元主義的発想から関係総体的な感覚にパラダイムチェンジするのが21世紀型であると。

☆つまり、ICTがハーバーマスの限界を超える対話をサポートするようにならない限り、21世紀型スキルだとか21世紀型教育とはいえない。

☆深澤校長の「これはあくまでインフラであって、きちんと普段の授業の中に位置付けて運用していかなくては意味がありません」という真摯な態度は、そこを見極めるということであろう。だから栄東のようにアクティブラーニングを図に配置せず、現段階では地に配置しているのだろう。

☆「対話」とは何か?共立女子や西武台新座も活用しているニュートレジャーの制作編集の中心人物であるかえつ有明の山田先生は、米国の大学院で認知心理学を学び、なおかつデユーイ、カント、ヘーゲル、ブルームなどと対話し、その成果をいかに授業に実践させるか取り組んでいる。その一つの成果がニュートレジャーであり、爆発人気の帰国生教育という国際教養プログラムの実践であり、サイエンス科というクリティカルシンキングを育成するTOK型プログラムである。そしていま高3の進路指導をしながらハーバーマスと対決している。

☆西武台新座が、栄東のように、東大や医学部という大学進学実績を支えるアクティブラーニングの道をとるのか、かえつ有明のようにグローバルでクリエイティブなクラスを育成するためにアクティブラーニングの道をとるのか、今後が楽しみである。

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