変わる教育[68] グローバルエリートからグローバル市民へ“Change Lives, Change Organizations, Change the World”
☆東洋経済オンライン2012年11月30日の「MBA留学は本当に人生を変えるか?グローバルエリートの"聖地"は、今」という記事はこう始まる。
世界最難関の経営大学院、スタンフォード大学ビジネススクールのミッションは、“Change Lives, Change Organizations, Change the World”。世の中を変え、組織を変え、そして、世界を変革するグローバル人材を育成する。このミッションが象徴するように、欧米のビジネススクールでの学びや経験は、学生、特に留学生の人生を大きく変えると言われている。
私自身、2000年にコロンビア大学ビジネススクールに留学し、自分の人生が変わるのを実感した一人だ。
7年間勤めたNHKを退職し、多額の教育ローンを背負いながらの留学だった。背水の陣で、「MBA留学」に人生を賭けて挑んだのである。
その結果、自分の価値観が全部入れ替わるような、強烈な体験をした。投資額以上のリターンを得たと言ってもいい。
過去の成功体験なんか通用しない、自分が成長し、変わり続けることでしか、グローバルリーダーにはなれないことを、留学して初めて知った。
ビジネススクールは、まさに「世界中から集まってきた学生たちから発せられる強烈なエネルギーのパワースポット」。友人たちのエネルギーに圧倒されながらも、目標に向かって前向きに、主体的に、かつ謙虚に学ぶことの大切さを学んだ1年半だった。
☆著者は、佐藤 智恵さん。同誌プロフィールにはこう記載されている。
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、退局。2000年1月米コロンビア大学経営大学院留学、翌年5月MBA(経営学修士)取得。株式会社ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局等を経て、2012年より独立。主な著書に『ゼロからのMBA』(新潮社)、『外資系の流儀』(新潮新書)。公式ウェブサイト http://www.satochie.com
☆スタンフォードとかMBA、ハーバードの話題がでてくるが、たしかにそういう大学のビジネススクールをでてくると、人生は一変するだろう。佐藤さんのような女性がどんどん社会進出するのは、グローバルトレンドでもある。しかし、
ハーバードの日本人学生は、1学年、笹本さんを含め全部で7人。900名中7名だ。日本人学生が比較的多いことで知られていたウォートンでさえ、840人中、日本人は浅原さんを含め4人。コロンビアに至っては、11年9月に入学した日本人は、550名中、川本さん1人しかいない。その他のトップビジネススクールの学生に聞いてみても、日本人留学生(日系アメリカ人などは除く)の数は、だいたい1学年に数人から10人程度。日本のGDP(世界第3位)を考えれば、信じられないぐらいの少なさだ。
☆だという。今グローバル人材を育成しなければと、政財官学が叫んでいる理由の一つにこの日本人の内向き志向があるという話に符合する。
☆がしかし、2年間で900万もする学費は、富裕層か学歴エリートにしか門戸は開かれていない話しでもあることも事実だろう。中国や韓国の家庭が、子どものために涙ぐましい努力をするシーンはテレビでもよく放映されるが、実際には富裕層が占めているのであり、MBAのメンバーを支える層がつくる社会は、問題がないとはいえない。しかし、だからこそ、
ビジネスを創り出し、雇用をもたらし、儲けを社会に還元する起業は、グローバルエリートの世界では「最も価値あるもの」
☆というわけであろう。イギリスの産業革命のみならず、アメリカの独立革命を支える根拠となったアダム・スミスの「国富論」を地でいっている発想である。アダム・スミスの提唱する市民は、今振り返れば、現在の富裕層である。
☆そういう意味では、帝国から国家、国家から国際都市、国際都市からグローバルシティと転換してきた歴史的市民は、そろそろ市民=富裕層=グローバルエリートからグローバルシチズンとしての市民に転換してもよい時期だろう。
☆その点コロンビア大学は、このグローバルシティとそれを支えるグローバル市民に注目する。分校を各国につくるのではなく、地理的空間にセンターをつくるが、それはすべてネットで結び、グローバルな知の拠点をネット内につくるという手法。これはアダム・スミスのようなグローバルエリートが、アメリカ市民にその富裕層としてのエリート知をアメリカ市民にアメリカンドリームが成立するようにエンパワーした方法と同じである。
☆富裕層となった市民が、そのルーツに自分たちが戻れるほど不自由な生活を送ることは不可能だから、新しい市民にそのテクノロジーをエンパワーする寛容性と才能をたたえ合うというのがグローバルエリート。その新しい市民としてグローバル市民が、日本にも生まれるチャンスがある。佐藤さんは、そのヒントを語り続けている。もちろん佐藤さんの足場はグローバルエリートである。
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