変わる教育[70] 新産業革命の時代
☆クリス・アンダーソンといえば、IT革命以降、Webやパソコンの新時代性――ロングテール、フリーミアムなど――を切り取るキーワードで、世界を俯瞰してきた米ワイヤード誌編集長。自ら起業もしている。
☆シリコンバレーでクリエイティブなアクションを起こしている人材、リナックスのようなオープンソースに参加している人材を、メーカーズと呼んでいる。新産業革命の担い手にふさわしい呼び方。リチャード・フロリダが、クリエイティブクラスと呼んでいる人材と重なるだろう。
☆いずれにしても、資本家と労働者のような構図は、そこにはない。消費者と生産者を統合したプロシューマ―という呼び方もあったが、消費者であり生産者であり経営者であり、親であり子であり、友人であり政治家であり・・・マルチロールプレイヤーを果たす新しい地平に立つ「メーカーズ」。
彼らの動機は、お金ではない。多くは本業の仕事を持っているし、お金には関心がないと言っていい。ただ、アイデアを何とかして形にしたいとうずうずしている。我々が彼らの“夢”を実現できる『場』を提供すれば、少しずつ貢献してくれる。それが積み重なり、大きなモノに発展していく。
☆お金というより「時間」なのだろう。IT革命がもたらしたのは、ITという生産道具の解放と仕事の時短。これによって、クリエイティブな時間が生み出されたということだろう。これで、英語ができれば、Webを通して、自宅に居ながらグローバルメーカーズの誕生。
大企業の方が効率が悪い場合もあるということだ。メイカームーブメントの軸は、『雇用・非雇用が関係ない』という点にある。そもそも、個々のプロジェクトにとってベストの人材が、必ず自分のためだけに働いてくれるわけではない。例えばサン・マイクロシステムズの創業者の1人であるビル・ジョイ氏は、『ベストな人材は常に社外にいる』と言った。これは事実だ。
☆著者広野彩子さんは、メイカーズの発想について次のようにコメント。
確かにこのムーブメントはモノ作りのあり方を変えていくに違いない。ただそれは、これまでの市場を補完する「新たな市場の創設」なのだ。既存のモノ作りの市場を駆逐するのではなく、補完するものとして広がっていく――。
☆果たして、それはどうだろう。iPadを片手に広野さんのインタビューに応えていたクリス・アンダーソンの姿は、エジプトやチュニジアの市民革命家とどこが違うのだろう。政治思想が変わるエネルギーは産業も変えるエネルギーに変換できるし、そもそも前者は水面下の新産業革命がもたらしたものかもしれない。それはあの産業革命以降に次々と市民革命がおこったのと同構造なのではないだろうか。
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