2013中学受験【110】 山脇学園の人気と持続可能性
☆たしかにそうなのであろう。ただおもしろいのは、サイトの表現である。こまめに教育活動を更新しているのであるが、「一貫性」があるのである。それは生徒の「成長」1点に眼差しがむかっていることがわかる表現ということ。
☆この生徒の「成長」を見守る眼差しは、どこから生まれるのか?それは生徒と教育活動を共にするところからしか生まれない。その現場を表現するから、意識しなくてもナチュラルにその眼差しが伝わるのである。
☆眼差しを説明するのは難しいし、直接的な説明は感動を呼ばない。不粋である。では、どうやっているのかといと、基本イングリッシュもサイエンスもインタラクションのシーンや実験のシーンを表現しているから、おのずと眼差しが生まれるのである。
☆また、志を育成する総合学習も、基本はプロジェクトベースドラーニング。リサーチあり、議論あり、編集あり、プレゼンありで、実にアクティブ。そこに教師は立ち会っているわけだから、眼差しが映し出されるのである。
☆このように広報活動が、生徒の活動を見守る眼差しが映し出す仕掛けになっているところが、山脇学園の生徒獲得戦略の秘密だろう。しかも、この広報活動の絶対条件は、生徒が成長する教育活動が実践されているということである。この実践がなければ、眼差しそのものが生まれないのである。
☆そして、この人気は一時のものなのか、それとも持続するものなのか。つまり、2015年の転換点に対応できるのか。これは、できる。というのも以上のような教育活動は、すべてをアクティブラーニングというカテゴリーで表現できるのであり、アクティブラーニングのようなプログラムこそ未来において生徒の成長が放つインパクトを創ることになるからだ。
☆また、生徒はこまめに自分の学習や生活をノートに書いて、振り返るし、教師もコメントを贈る。この活動も、学習ポートフォリオの手法であるから、未来インパクトを放つエンパワーメントの場となっている。
☆このアクティブラーンニグを英語でやり、学習ポートフォリオをアプリで行えば、教育活動そのものが21世紀型教育になる。そして、広報活動の奥義である「眼差し」を戦略的にモニタリングのメカニズムに変換すれば、「広報活動」は「エンロールメントマネジメント」にシフトする。
☆こういう話をすると、なぜ「エンロールメントマネジメント」などという横文字で言うのか?広報活動のことに変わりはないだろうと。たしかに、ドメスティックにはそうなのだが、山脇学園が英語島とか科学島と呼ばずに、イングリッシュアイランドとかサイエンスアイランドとわざわざ呼んでいるのは、ドメスティックではなく、グローバルな未来を見据えているからだろう。
☆グローバルということは、生徒の進路が国内だけではないということである。つまり、海外も射程に入れるということである。それには、広報活動もグローバルな戦略を練らねばならないということ。
☆その戦略のことを「エンロールマネジメント」というのだが、これはたんなる呼称の問題ではない。学校が海外大学の進路に取り組むとなれば、“Dual Enrollment”を理解しなければならない。これを理解するには、発想を「エンロールメントマネジメント」に切り替えねばならないのである。
☆“Dual Enrollment”とは何か?日本の高大連携にはない発想だから、本当に理解している人は日本では少ないだろう。日本の高大連携の話では、ハーバード大学やオックスブリッジに入学する話などはでてこないだろう。
☆文科省が最近慌てて、グローバル人材育成だとかIB(国際バカロレア)だとか騒いでいるが、この話が“Dual Enrollment”に関係している。したがって、日本ではまだまだ知られていない進路指導のシステムである。そしてそれがゆえに、帰国子女の多くが、日本の大学を目指すという不思議な現象が生まれるのである。
☆“Dual Enrollment”というシステムがないがゆえに、「内向き」になるということなのでもある。若者の意識の問題ではなく、世界に通約可能なキャリアシステムがないだけのことなのだ。文科省が慌てているのも、そこに気づいているからだ。このシステムのないことを逆手にとって帰国生をたくさん獲得して、「東大早慶」色に染めているのが、渋谷教育学園グループや攻玉社の帰国生教育である。なんともパラドキシカルだ。
☆それはともかく、山脇学園の進む先には、高精度な21世紀型教育へのシフトが開かれている。したがって、同学園の人気の持続可能性は高確率であるだろうし、実はこの大変化ができたのは、短大を閉鎖したからだ。短大があると、“Dual Enrollment”の発想が生まれてこないからである。思い切ったことをしたものだ。山脇学園の同窓の未来への決断には頭がさがる。
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