2013中学受験【83】 東京私立学校のサイエンス教育 新しい時代の開拓者達
☆私立学校の特徴の一つに先進性というのがあるが、この教育活動もその先進性を象徴する活動である。というのも、OECD/PISAの科学リテラシーの結果に驚いて、文科省が、ゆとり教育の補強として「スーパーサイエンスハイスクール構想」を行うようになったのは、2002年である。今から11年前であるから、私立学校の先見性・先進性のすごさがわかるだろう。
☆しかも文科省のこの構想は、一部の学校だけに予算がつけられるもので、いわば理数系のエリート校養成プログラムである。しかも科学技術人材育成という意味に限定され、広く市民のためのものではない。
☆ところが、科学と民主主義というのは、近代化の歴史の中で、切っても切れない仲なのである。科学者の目は、広く市民の目でなければならない。この近代啓蒙市民の目を大切にしている精神を有しているのが、ずっと私立学校の建学の精神なのである。
☆それゆえ、この「生徒理科研究発表会」は、各学校の部活、クラブ活動、サークル活動の一環として行われている。つまり、動機づけが、文科省のような制度的外的きっかけではなく、内的きっかけ=好奇心から生まれる内発的モチベーションによって生成されているのである。それゆえ、52年も続き、これからもますます発展するのだろう。
☆しかし、市民の科学の目を大事にしているからといって、あなどれない。レベルは相当高いのだ。
・動機
・仮説の考案
・準備
・実験方法の考案
・条件を試行錯誤して設定
・フィールドワークや実験を通してデータの収集
・データの比較分析
・因果関係の発見
・検証
・考察
・今後の展望
☆など本格的な科学論文を組み立てる学びも展開されている。そしてプレゼンのためのレジュメが研究紀要に結実する。なんといっても圧巻なのは、データは自分たちで収集して誤差をどのように修正するかまで考えて分析する姿勢。
☆委員長の相澤先生(聖学院)は、研究紀要で「新しい時代の開拓者達」と題して、こう語っている。
この紀要には、理科の様々な分野から疑問点や問題点を抽出し、創意工夫をもってその解決にチャレンジした足跡が載せられている。課題に何度も果敢に取り組む中で、理科の知識と活用力がさらに醸成されていったのではないかと思う。総合的で豊かな知性と活用力が求められている現代に対して、実は、既に新しい時代への準備が今日の発表会に参加する各校にて、そしてこの会場にてなされてきているのである。各校における新しい時代の開拓者達を育む取り組みに、頭が下がる思いである。
☆それにしても、今日は東京の中学入試初日出願日でもある。この取り組みを受験生の保護者が知ったら、受験情報でも説明会でも収集できなかった、科学的思考を養う私立学校の教育の奥行きを知り、驚愕するに違いない。いかに偏差値というものが学校選択において間違いであり、子どもたちの科学的な好奇心や開放的精神、そしてなぜという疑問をもつマインドを打ち砕く兇器であるか気づくだろう。偏差値を学校選択に使うことがいかに疑似科学にすぎないかということを。
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