2013中学受験【96】 かえつ有明が注目されるワケ< 問いの共同体>
☆しかしながら、帰国生入試の応募がダントツ多いということにも表れているが、大学合格実績と教育のフォームというテクニカルな面だけではなく、もっと本質的な背景に、その注目の理由がある。
☆帰国生の保護者は、大学合格実績という目先のことで学校を選ばない。というのも、それだけ考えるならば、渋谷教育学園渋谷や攻玉社などにいけばよい。保護者は、帰国生が大学入試のときに、それだけでアドバンテージが高いことは百も承知である。だから、それ以上に大切なものを希求しているのである。
☆それは、海外で経験してきたグローバルな教育の質をそのまま継承しかつ発展させてくれる可能性のある教育である。この教育は、日本の学習指導要領にだけ目を向けた教科という知の分断スタイルの教育には、存在しない。グローバル人材を育成しようと掲げた文科省自体がそれに気づき、IB(国際バカロレア)型手法の学びを作らねばと、昨年後半やっと動き出した。
☆その手法がかえつ有明にはすでにあったのだ。これには帰国生の保護者は大いに驚いたようだし、帰国生のための塾の先生方もこんな授業はかえつ有明にしかないと口コミが広がった。この方法は、<community of inquiry>を創ることだと学内では言われている。とりあえず<問いの共同体>を創ることとでも訳しておこう。
石川副校長によるスペシャル・サイエンス科クラス
☆そして何より大事なことは、この<問いの共同体>創りが、ひとり帰国生の英語のクラスだけで行われているということではないということなのだ。帰国生の保護者は、ここに感動するわけだ。帰国生だけを特別扱いするのではなく、一般生もこの<問いの共同体>創りのメンバーであるからなのである。つまり、これがかえつ有明の文化だからだ。
文化祭で、サイエンス科の取り組みのプレゼン 嘉悦校長との対話シーン
☆この文化の形成は、「サイエンス科」というクリティカルシンキングを育成するプログラムによって見える化し、あらゆる教育活動に浸透させてきたことによるということは、今では周知の事実である。
生徒会のミーティングでのブレストシーン
☆<問いの共同体>とは、結局教育が対話篇だということだ。IBのベースは、ヨーロッパのリベラルアーツ。プラトンのソクラテスというキャラクターにファシリテーター役を演じさせ問答を繰り返していく対話編という作品は、哲学の古典中の古典だし、その対話手法をめぐって2000年以上、対話とは何か問い返し続けられてきている。明治維新、私立学校が遭遇したのは、この対話編だった。教えるのではなく、互いに問いかけるオープンな知的活動とでも言おうか。創設者嘉悦孝もその一人。アダム・スミスを通して、その哲学のエッセンスを教育につなげた。新生かえつ有明は、そこを「サイエンス科」をテコに不易流行化したのである。
作文入試対策講座のシーン
☆そしてそのことを伝えるべく、説明会のたびに「帰国生のための対策講座」「サイエンス科のエッセンスである作文入試対策講座」を積み重ねてきた。もう3年にもなる。卒業生も、留学体験在校生も、生徒会も、部活の生徒も、大いに説明会で対話に満ちたかえつ有明について語った。この語りにこそかえつ有明の文化が染み渡っていることに、受験生の親は共鳴したに違いない。
合唱コンクールの練習風景
☆中学受験の応募が始まり、センター入試も行われるこのシーズンに、かえつ有明の空間は、いっせいに合唱コンクールの練習に歌の翼を広げる。最初は、バラバラだったのが、だんだん一貫性のある合唱になる。その過程がまた<問いの共同体>を形成する機会そのものなのだ。
高3生が、大学入試の戦略について教師と対話しているシーン
☆その歌声に癒されながら、高3生は目的達成のために、教師と対話している。そして何も対話は直接対面によるものだけではない。
☆掲示板も語りかけるし、壁の穴も問いかける。<問いの共同体>創りが貫徹しているのである。
シーズンごとに壁の穴のディスプレイは変えられるきめ細かな配慮
☆私立学校は教育の論理と経営の倫理で成り立っている。戦略的経営と本質的教育の積が納得と確信を受験生の親に与える。かえつ有明の成長は、そのシンボル的な事例である。
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