2013中学受験【128】 共立女子 価値選択の転換点
☆正門で受験生だけが試験会場に進む。保護者は、校舎隣接の共立講堂が控室になっているので、そこに向かう。もっとも、神保町は、喫茶店も多いから、外で待つ保護者もたくさんいる。古本屋の拠点でもあるから、気を紛らすために本屋めぐりをする保護者もいるだろう。
☆9時15分、1つ目の教科である国語の試験が終了するや、講堂に渡辺校長が現れた。自分の息子の受験体験の話をして、保護者の不安な気持ちを癒しながら、C日程の受験状況を説明。終了した国語の問題についても触れた。
☆礼法の共立。形ではなく、おもてなしの心の構えが肝要であるが、その構えがこういうときに姿を表すのである。
☆話しが終わったら、壇上から降りてきてくださって、少しお話を伺えた。
「手続き者の数が例年に比べ多い。第一志望をしっかり決めている受験生が増えているのでしょうが、もちろん、相変わらず偏差値の高い学校に入ったら、そちらに入学する生徒もいます。教育の質の深さを見てもらえば、偏差値の多少の高低はあまり関係ないのですが、そういう価値選択も当然あってよいわけですからね」
☆共立女子は、非常に興味深いポジショニングに位置している。受験市場的には、質的教育について判断することのないカテゴリーに入っている。つまり、大学進学実績と偏差値で学校を選択するカテゴリー。
☆したがって、学校の意向とは違って、偏差値の高低の競争地帯にいるのであり、この競争に巻き込まれるのはやむを得ない。
☆だから、そこから脱しようと、渡辺校長は、学校の教育の質について大いに語り、授業における問答形式であるピアインストラクション型対話についても熱く語るのである。しかし、そんなことは御三家とかいう言説に疑いを持たない受験市場ではだれも聞く耳を持たないだろう。
☆だから、共立女子を選択するかしないかは、明確に価値選択の転換点を通過することになる。
☆がしかし、かりに本当に20世紀型受験市場の偏差値と大学進学実績で選択するとするならば、より共立女子を選ぶのが必然なのであるが、それに気づかなくなっているとは、受験市場の思考停止状況であることを証明しているようなものだ。
☆共立女子は、首都圏では定員枠が最も多い女子校である。310名なのである。240や280にしたら、当然偏差値は上がる。定員の条件が違うのに、それを修正換算しない偏差値の高低で選択するのは、選択ミスになる場合もある。
☆共立と言えば、大妻となるのが今までの習い。両方併願してどちらも合格している受験生もいるだろう。ある意味贅沢な悩みの期間を迎えるわけだが、さてさてどちらを選択するのか。
☆両校の教育の質をよくよく見極める時間はこれまた充実したキャリア学習である。共立の渡辺校長は、物質化された要素分解主義ではなく、関係全体のつながりを思考する関係総体主義。このポストモダニズムの思想をけん引してきた思想を教育のベースにしてきた。一方大妻は要素分解主義で、現実以上でも以下でもない分析的経験主義でやってきた。
☆しかし、大妻の理事長花村邦昭先生は、渡辺校長に近い。ハイデッガーの存在論を語るかと思えば、経済を活性化するビジネスは何か、新しい市場はいかにして可能かを問いかけてきたり、ナレッジマネジメントの暗黙知論を学校教育に導こうとしたりする。
☆日本総研の創設者で、クリエイティブクラスとエンジニアの才能者と協力し、実際にビジネスをあらゆる領域で掘り起こしてきた。常に存在の故郷を現代化した都市デザインをしてきたのであり、そのコンサルのリーダーだった。都市デザインと教育デザインは実は民主主義においては同構造である。
☆もしも、花村理事長の気概を、中高の教師が了解していたとしたら、すてきなことになる。もっとも、この「了解」があるかどうかは重要な問題である。
☆いずれにしても、24時間花村先生とごいっしょしたことがあるが、あまりのエネルギッシュな生きざまに驚いた。24時間、問いを無限に投げかけてくる。若造相手に丁寧に、問いの視点の開きを導いてくださった。コンサルの極意は問いの質となんてったって量なのだと学んだことを思い出す。
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