2013中学受験【132】 中学受験 独占市場化のヤバイ意味
☆首都圏の中学受験人口は、全国の小学6年生のわずか3%のお話。日本全体では、ほとんど水面下で行われているようなことで、普段は国民の意識にのぼることはほとんどないだろう。
☆ここで何が起こっているのか、気にする人はごくごく関係者のみ。しかし、あたかも水面下で生まれているような小さな出来事がヤバイ事態を引き起こすというのは歴史の中ではよくある話である。
☆私立中学は、本来は≪私学の系譜≫のベースにある私学の魅力や理念を守り、日本の学校教育の一つの正義を教育行政に示してきた。
☆しかし、ここにきて何かが変なのである。サンデル教授の番組は誰でもが知っているほどになっているのに、上のリストにあげた学校の雰囲気は、本気でそんな正義を求めているとは言えない無関心な雰囲気なのである。
☆これはヤバイではないか!でもどうしてなのか?それは上記のリストを見れば明らかだ。3つの塾が上記の学校を独占化しているのは一目瞭然だろう。その中で、SAPIXがここ数年で完全勝利するのではないかという勢いであるのも明白。
☆しかし、SAPIXや日能研、早稲田アカデミーの競争は表面的なことである。この≪私学の系譜≫の場が、大学予備校の利益の競争の場となっているというのが問題なのだ。東大を頂点とする学歴ピラミッドの中の椅子取りゲームで勝つための重要なエネルギー態として蕩尽されているのである。
☆3つの塾は、資本関係で、その強弱はあるが、代ゼミや河合、東進などに与している。大学予備校の東大合格実績競争では、私立高校も公立高校も区別なくクライアントだから、≪私学の系譜≫などいう話は皆無。短絡的な量の勝負以上でも以下でもない。
☆2012年の東大合格実績は、駿台が1235名、河合塾が1184名、東進が588名、代ゼミが344名。とすると、上記の学校だけで680名合格しているわけだから、予備校は、この中学受験を傘下に収めたいという戦略になるのはわかりやすい話である。
☆したがって、中学受験市場のうち、上記のような学校に各大学予備校の系列の塾が合格者を送り出すのは、最終的には、学歴ピラミッドの覇権を握ることになるのである。
☆特にSAPIXを傘下に収めた代ゼミの野望は、こうしてみると明白だ。東進に東大合格実績を抜かれても、SAPIXが高偏差値の私立中学に独占的に合格させていけば、やがては、再起できるだけではなく、大学受験市場や学歴ピラミッドの中で覇権を握ることができるのだ。
☆資本主義の優勝劣敗セオリーが、長引くデフレの中で、その物象化を加速させた。結果、大学合格実績や偏差値ではなく、教育の質なんだといくら語ったどころで、そんな言説は実効性がないという事態を生んでしまった。
☆しかし、独占市場は、他の言葉で言い換えれば、「タコツボ状態」「鎖国状態」「密室状態」ということになるから、「いじめ」「体罰」「虐待」「ハラスメント」「差別」などの“抑圧組織”を生み出す。
☆もっとも、それが臨界点に達すると、“抑圧組織”は崩れ始め、新たな方向性が走り出す。中学受験の独占市場化は、≪私学の系譜≫の意に反して、学歴ピラミッドを強化する大学予備校の経営戦略に加担するというパラドクスを意味するが、同時にそのパラドクスは、明快に意識されたとき、そこから脱しようという活動が沸騰する。
☆その沸騰が、ソーシャルメディアやWeb、スマホ、タブレッドの影響で、社会にインパクトを与えているし、抑圧に抗って、悲惨な事態が多数生まれているのは、周知の事実である。
☆それがまだ中学受験市場では、インパクトのある活動となって顕在化していないが、この時代のうねりにこの市場だけが影響を被らないというこはあり得ない話でもある。
☆なぜなら、私立中高一貫校に通う家族の世帯収入は1000万を超えている。少なくとも800万はあるだろう。首都圏中学受験人口は同年齢の3%に過ぎないが、そこに富裕層が集積していることは確かである。
☆つまり、実際には経済原理が直接つながっている場でもある。世の中大学改革こそ日本を変えると綺麗ごとを言っているが、財閥解体ならぬ予備校解体でもしない限り、学歴ピラミッドは意匠を変えるだけで、本質的には変わらない。そんな法規制は出来るはずもないから、大学改革を唱える見識者の話にはご用心。
☆では、どうしたよいか。臨界点というタイミングで、どこかがイノベーションを巧みにマッチングさせる以外にない。そのタイミングを合わせることができたところが、次のパラダイムを創出するということだけは明らかだ。
☆グローバル人材育成とか21世紀型スキルというのは、学歴ピラミッド強化にもつながる両刃の剣ではあるが、ここをどのようにリスクマネジメントできるか。それができたところがタイミングをとらえるということに、歴史を振り返ればなるのだろう。
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