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東洋経済の記事「もはや御三家にあらず? どうする武蔵!」

東洋経済オンライン 2月25日(月)8時0分配信 の「もはや御三家にあらず? どうする武蔵!」の記事は読む前から予想していた通りの内容だった。

☆インタビュアーは、武蔵の大学進学実績の低迷、入学者の偏差値低下の2点を背景に質問していたし、武蔵高等学校・中学校の梶取弘昌校長は、もともと御三家とは中学受験業界が名づけただけで、武蔵の「自由」や「学問的精神」について語っているわけではないという主張をしていた。

☆しかしながら、偏差値が低い生徒が入ってくると、学問的な精神を学内で維持できなくなるので、保護者のニーズに応えて、大学進学実績も巻き返していくというダブルスタンダードでいくと。

☆インタビュアーの軸は、メディアが自身の教育に対する視点の偏狭さをクリティカルシンキングできなくなっている現状であるからしかたがないが、舵取先生の方は、学問的精神や自由を語るならば、そこをバサッと斬るべきだったのではないだろうか。

☆もっとも、編集されてしまったのかもしれない。

☆しかし、偏差値が低ければ学問ができないような捉え方はちょっと違うなあと感じた。中学1・2年のときは「自調自考」を間違ってとらえていると指摘し、基礎のない学問は学問でないというような言い方をしているのもどこか違うと感じた。

☆偏差値のないグローバルな世界では、何を基準にしているのか、自調自考の基礎とするものは何かについて、舵取先生は、もっと語ったに違いないが、そこはカットされていたということだと思うが。

☆「他校は保護者へのアピールが本当に上手だと感じます。生徒の暮らしぶりを書いた学級日誌を保護者に渡したりして、「丁寧な面倒見」を掲げているようです。でもそういうのは「学問」や「教育」とは遠いですし、子供の自立を阻害する要因でしかない。というか、そもそも大学合格にすら関係ないと思います。」という言も気になる。

☆保護者との関係やポートフォリオに対する評価がデメリットの面だけが強調されている。オープンで生徒の成長をポートフォリオ化していくことは重要な学習理論の一つで、学問領域の話でもあるのではないだろうか。

☆もし「学問」を武蔵のカリキュラムの特色であると強調するのであれば、正当性、信頼性、妥当性について判断する方法を披露したほうがよいだろう。

☆「ドイツやフランス、中国や韓国などの提携校に行って身ひとつで勝負するんです。武蔵の国際感覚の育成は“修学旅行まがい”のものとは違って、送り出すのです。学校間での手続きなどは武蔵が行いますが、先生は現地にはついていきません。ほかの学校の国外研修というのはたいてい、先生がついていって、観光地を周ってそれでおしまいというところが多い。でも武蔵のやり方は違います。自分の力でホームステイファミリーと合流して、現地の進学校に通います。現地の生徒に交じって現地の言葉で授業を受けます。最初の1週間程は帰りたくて仕方ないようです。授業内容によっては、言っていることの大半がわからないこともありますから。」という言も気になる。

☆「修学旅行まがい」という言い方は、クリティカルではない。ボヤキに近い。海外に先生がついていかないけれど、学校間での手続きは学校が行うというのも、だからなんだというのだと。自分で手続きしていく生徒も他校にはたくさんいる。

☆「自分の力でホームステイファミリーと合流して、現地の進学校に通います。現地の生徒に交じって現地の言葉で授業を受けます。」というのも気になる。先駆けとして武蔵はそうだったかもしれないが、今では多くの学校がそうしている。多くといってもまだ首都圏中高一貫校の10%ぐらいだが、これからますます増える。

☆武蔵の本物教育は、他校と比べてどうだではなく、この近代の矛盾が市民レベルに自覚的に影響をあたえるようになったグローバルな時代をいかにとらえ返し、脱構築していくのか、今後、社会学、心理学、哲学、言語学、遺伝子工学、建築学、芸術などの学問が社会の構造をいかに脱構築していくのか、その学問の基礎をいかに形成しているかについて語ってほしかった。

☆インタビュアーは、それを引き出してほしかった。御三家であるかどうかなどというまったく科学的根拠のないバカげた問いの設定ではなく、世界の教育史における首都圏の私立学校の特異点について、舵取先生と話を深めてほしかったのであるが。。。

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