« 変わるか大学【07】 東北学院大法科大学院 募集停止に | トップページ | 中学入試市場の未来【08】 「駿台・浜学園」首都圏に進出 »

変わるか大学【08】 夕刊フジ 国際教養大学の記事 必見!

☆文科省の教育イノベーションのネタ本「教育×破壊的イノベーション」(クレイトン・クリステンセン)のセオリー通り急激に頭角を表した学校がある。高等教育では、秋田の国際教養大学である。夕刊フジ(2013年3月7日)の「国際教養大、開学から9年で難易度急上昇 大半が有名企業就職 授業はすべて英語」の記事はその成果を讃えている。

Photo

少子化の影響で大学間の学生獲得競争が熾烈を極めるなか、受験生たちから高い支持を得ている大学がある。秋田市の公立大学「国際教養大(AIU)」だ。授業はすべて英語で行われ、卒業までに1年間の海外留学が必須。ユニークな教育方法と、ほぼ100%という高い就職率で人気を集め、開学からわずか9年で受験難易度が10ポイントも上昇する異例の“出世”を遂げた。「卒業生の2人に1人は、三菱商事や電通などの有名企業に就職する」というエリート養成大学を徹底解剖する。

注目度の高さは、受験難易度の推移でも一目瞭然だ。05年度入試では、センター試験の合格得点率が71~79%(代々木ゼミナール調べ)だったのに対し、13年度は90%にまで上がった。旧帝大の名門、大阪大法学部(89%)と同水準で、91%の一橋大社会学部(後期日程)に次ぐ難易度だ。

☆たしかに目覚ましい。しかし、この事態はいかにして可能か?上記のような教育イノベーションをやれば、みなこうなるのか?なるのなら、みなそうする。教育イノベーションというテクニカルな側面とファンダメンタルな層が重なるということが肝。夕刊フジはそこを見逃さない。一般紙以上にすぐれた見識の記事にちょっと驚いた。

国際社会で通用する教養人を育成することを創立理念とし、2004年に開学。初代の理事長兼学長は先月亡くなった中国研究の第一人者、中嶋嶺雄(みねお)氏で、母校・東京外語大の元学長としても知られる。AIU創立の際にはグローバルな人材を育てるため、徹底した外国語と個性重視の教育を唱えた。

☆株価や為替と違って、教育はテクニカル層とファンダメンタル層が乖離していると生徒は集まらない。前者だけでは最初だけ、後者だけだと気づかれない。ところが、中島先生は、その両方を強靭なリーダーシップで徹底した。グローバル人材教育の基礎は1学年から行われている。

☆1学年の夏休みは学生は秋田の地を離れ、企業でインターンシップを体験する。私の前職の教育研究所でも毎年数人受け入れていた。今でいうプロジェクトベースドラーニング、アクティブラーニングのプログラムのデザイン・運営のサポートやチーム学習のチューターなどを他の大学(早稲田、慶応、東大、一橋など)の生徒とともに行った。国内留学という形だが、これはある意味ギャップイヤーやファンデーションの発想を夏に盛り込んでいるということだろう。

☆インターンシップのやり取りは、何も中嶋先生と企業の社長がやるわけではない。スタッフ同士がやるわけだから、中嶋先生が亡くなられた後も、そのシステムは稼働する。

☆そうそうシステムの話ではなく、ファンダメンタル層の話だった。一度中嶋先生の講演をお聞きしたことがあるが、1989年の衝撃を中嶋先生は身をもって立ち会った。そのとき動かしがたい信念と堅固な意志が明確な輪郭を描いたという。その衝撃を受けた場所とは、ベルリンの壁の崩壊の方ではなく、天安門事件の方である。

☆このときに、世界の叫び「見えない強制収容所」からの人間解放を聴いたのだと思う。中嶋先生は人生からその問いかけを投げつけられたのだと。天安門事件、ベルリンの壁、ペレストロイカ、バブル崩壊、89年から世界はグロバリゼーションに突入する。再び青年を閉じ込めるのか、ここで開くのか、中嶋先生は小沢征爾や故斎藤先生の響きに共鳴しながら、解放の響きを奏でようとしたのだと思う。

☆その響きは、姜尚中教授や諸富教授が、引き続き奏でている。フランクルの「夜と霧」の想いを共有しながら。

Photo_2

☆もしこの倫理観のない教育イノベーションを行ったのだとしたら、秋田という立地条件で駈け上ることはできなかっただろう。

高い就職率という実績も大きいが、AIUの学内には学舎とともに学生寮が併設され、24時間365日開放された図書館がある。学ぶための充実した環境こそが、強みのひとつとなっている。「1年生は全員が寮に入居し、勉強三昧の毎日を送ることになる。部屋は外国人留学生との2人部屋。異なる文化を持つ者同士で、寝食をともにすることで国際感覚が身についてくる」(AIU広報)

☆しかし、文科省というのは、モデルケースがうまくいくとすぐに広めようとする。これは国民にとってありがたいが、先行者利益を奪ってしまう恐ろしい政策。まるで、江戸幕府の藩とりつぶしの行為そっくりである。

☆この図書館の24時間開放とか外国人留学生と寝食共にするという多様性環境がなければ、グローバル人材育成を成しえないと確信するや、その環境をまずは高校から埋め込もうと舵をきった。なぜ高校からかというと、そこからでないと日本ではなじみのないデュアル・エンロールメントができないからだ。

☆高大連携があるじゃないか?そんなものはデュアル・エンロールメントではない。受験生囲い込みの戦術にすぎず、キャリア教育にまったくなっていない。ファンデンションとかAレベルとかAPとかIBとかいう次元のものでなければならない。

☆そして、国際教養大学でやっているシステムを高校に埋め込むことによって、それは可能になるという発想なのだ。その近道は?なんだすでにあるじゃないかと。

☆それは、経団連が強力に支援している「公益社団法人 ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)日本協会」のことである。ここが、日本の高校生を世界にあるUWC校に架け橋している。そしてカリキュラムはどこのUWC高校もIB(国際バカロレア)のDPを採用している。

☆文科省はこれだ!と。経団連がバックなら怖いものはないのだと。そこで200校を「日本語IB」校にするというのだ。これには、IB機構は、半ば嬉しく、半ば憂いている。

☆文科省が動けば、日本の税金が投入されるから、すてきなのだ。しかし、「日本語IB」校というのは、どう考えても多様性がない。多様性がないところは倫理観が養われない。みな一つの理念に向かって邁進できるからだ。あのアイヒマンのように。私は命令されただけですからと、ホロコースト大虐殺をやり遂げてしまえるのだ。

☆欧米では、「夜と霧」というヒットラーの作戦を今も忘却しないように、そしてその忍び寄る「見えない強制収容所」建設を阻止するクリティカルシンキングを養うプログラムがある。それがTOKである。ナレッジ・イシューというトレーニングは、メタ認識をいかに世界の重要問題に応用できるように高次思考のレベルまであげていくかというグローバルリーダー育成プログラムになっている。

☆中嶋先生は、この想いをまずは、国際教養大学で行ったのである。しかし、このリベラルアーツには続きがある。そのあと就職してはダメなのだ。いや就職してもよいのだけれど、必ず再び海外の大学・大学院などに留学しなければならない。そうでなければ、「見えない強制収容所」に回収されてしまう同化が起こるからなのだ。

☆この事態は、まだ9年ではなんともいえない。そして中嶋先生は亡くなられた。このダメージは、国際教養大学にではなく、卒業後の未来にこそある。歴史は、いつもパラドクスなのである。

☆しかし、いずれにしても、文科省のグローバルリーダー育成プログラムは、高校からデュアルエンロールメントを介して大学につながる準備はできたわけだ。アベノミクスの動きは、なんでもこじ開けていくだろう。イノベーションによって破壊していくだろう。

Photo_3

☆アゲアゲノリノリであるから、何でもありなのだ。「日本語IB」校もできれば、一条校のIB校も別だてでできるだろう。国際教養大学・大学院のコンセプトは首都圏にシフトするだろう。それがアベノミクス市場原理だ。斎藤環氏なら「ヤンキー市場原理」と言うだろうが。

☆さて、どう対応すべきか、「創造価値×体験価値×態度価値市場の原理」でたち臨む以外に他あるまい。それがこのところ出会い話を聴いたロンドンの留学生たちやブラウン大学の留学生たちの意志でもあるのだから。

|

« 変わるか大学【07】 東北学院大法科大学院 募集停止に | トップページ | 中学入試市場の未来【08】 「駿台・浜学園」首都圏に進出 »

教育イノベーション」カテゴリの記事