変わるか教育[08] 2030年 今の仕事がなくなるのはなぜ?
☆「変わるか教育[07] 2030年 今の仕事がなくなる?」で、山内准教授が、キャシー・デビッドソン氏の考えを引用して、情報化が進んで、ワークシフトが起きている。例えば、10年前には「情報セキュリティマネージャー」や「ソーシャルメディア・コーディネーター」などという職業は存在しなかった。企業がイノベーションを進めるたびに、新しい職業が生まれ、既存の専門職を置き換えていくということをつつあると語っているのを紹介した。
☆だからICTを中心とする、スキルを学んで、時代においていかれないようにしようという流れに世はなっている。そこで、ATC21S(The Assessment and Teaching of 21st-Century Skills)は、そのようなスキルを21世紀型スキルと呼び、こう定義していると山内准教授は紹介する。
■ATC21Sが考える21世紀型スキル
・思考の方法――創造性、批判的思考、問題解決、意志決定と学習
・仕事の方法――コミュニケーションと協働
・仕事の道具――情報通信技術(ICT)と情報リテラシー
・世界で暮らすための技能――市民性、生活と職業、個人的および社会的責任
☆たしかに、10年、20年後の未来は、新しい職業が生まれ、その職業をこなせる技術が必要である。しかし、この21世紀型スキルは、未来のスキルではなく、米国のリベラルアーツの教員からは、ソクラテスやシェークスピアのスキルではないかと。
☆たしかに、ICTの技術を彼らは作っていないし、今の時代にやってきたら、すぐには使えないだろう。しかし、好奇心旺盛の彼らは、周りに問いかけ、使えるようになるはずだし、下手をすればプログラムまで学んでしまうだろう。
☆そうは思はないかだろうか。もしこれがニュートンだとか、ライプニッツだとかアインシュタインだとかなら、もっと納得がいくだろう。
☆もし、そうだと思ったのだとしたら、上記のスキルは、少なくともICT技術を除けば、すべてリベラルアーツそのものである。
☆しかし、そうは思っていないのが、世間である。残念がら山内准教授もそれを積極的に標榜していない。しかし、准教授が、今はない職業のために、子どもたちにどんなスキルを身に付けさせればよいのかという質問に、「どんな職業に就いても転移可能な、高度かつ一般的能力」と答える時、そこには明らかに、リベラルアーツ的な発想があるのだ。
☆ローゼンベルグ学長は、こうも語っている。ジョブが変わるのではなく、キャリアが変わる時代なのだ」と。
☆しかしながら、リベラルアーツ的なものは実に人気がない。リベラルアーツのディグリーをとっても、就職には役に立たない、経済やビジネスの学士や修士をとらなくてはというのが、もう一方の米国の姿である。このプレッシャーにリベラルアーツ大学はどう対応するか。まったく日本の私立中高一貫校と同じで境遇。理念なんてどうだってよい、東大早慶上智にたくさん合格させよとプレッシャーをかけられている。
☆ローゼンベルグ学長は、このような功利主義・損得主義には断固闘うというのだ。果たして、リベラルアーツかICTスキルか?21世紀型にはリベラルアーツの要素が入っているからよいではないかと言われるかもしれない。
☆残念ながら、それは表面だけで、大事なことはICTスキルで、他は化粧に過ぎない。21世紀型スキルを提供する側もされる側もそのことがわかっていない。その警鐘を、キャシー・デビッドソン氏は問いかけているのであるが、すでに氏の書のその部分が紹介されていないのが、何よりの証拠である。
☆この意識のギャップが、21世紀型スキルと21世紀型教育の違いなのである。ここまでくると、2030年 今の仕事がなくなるのはなぜかが、よくわかる。先に述べた、ローゼンベルグ学長のことばがヒントである。ジョブからキャリアへ。時代が求める職業観がシフトしてきた。つまり、人間の意味の転換が起きているのである。
| 固定リンク
「21世紀型教育」カテゴリの記事
- 石川一郎先生のメタファー対話(2021.08.22)
- 学習指導要領の再定義の必要鵜性?(2020.08.28)
- ホンマノオト21に移動します。(2018.07.25)
- 【CoMe世代】2006年以降に生まれた子供たちのためにヒューマン・プロジェクトを立ち上げよう。この10年間で、デストピアかユートピアかが決まるのだ。(2018.07.19)
- 【聖学院 生徒の未来を創るコンフォートゾーン(2)】(2018.06.28)
最近のコメント