変わるか教育[10] 京大と河合塾 2015年対応に
☆日本経済新聞(2013/3/19 10:08)によると、
京都大と大手予備校の河合塾は11月から、全国の高校2年生約6万人が大学を経て社会人になるまでの約10年間の成長の過程を追跡する調査を始める。高校時代に培った学力やコミュニケーション能力が、大学や社会人になってからのキャリア意識や前向きに仕事をする力とどう関係しているか分析。高校と大学の接続のあり方や大学教育の改善策の提言につなげる。
☆この分析は、大学生や社会人に関してはオンラインで行うということ。ここが肝要である。おそらくやりながら、拡大していくだろう。
☆意識調査はたんなるアンケート調査だろうか?そんな20世紀型の量的リサーチを京大や河合塾がやるはずはない。
☆そう想定できるのは、高大接続や大学教育改善ということは、人材成長コンバーター教育装置をつくるということだからである。つまり新しい評価尺度とオンライン評価システムを質的にリサーチするという話である。
☆この動きは、国内事情というより、グローバル事情がある。英国のピアソンは、OECD/ PISAと連携し、2015年に新たな試みを行う。すなわち、協働的問題解決力の測定、コンピュータ使用型調査の更なる活用についてリサーチするのである。この背景には、将来のコンピュータを活用したアダプティブテストの有効な提案をする目論みがある。
☆ピアソン桐原(「OECD学習到達度調査の開発をピアソンが受託~世界各国の生徒の学力を2015年に測定 」)によると、PISAプログラムのトップを務めるOECD事務総長教育政策特別顧問アンドレアス・シュライヒャー氏は、次のようにコメントしたという。
「2015年のPISAは、国際的な学力調査として新しい局面への出発点となりうるものです。調査方法において我々はテクノロジーをさらに有効活用する必要があります。また、世界中の政府が人生や就業において若者に必要なスキルとして挙げている"問題解決能力"を測定していく必要もあります。ピアソンは、OECDおよび加盟国政府が教育におけるグローバルな評価基準を作り上げるために、非常に大胆な戦略を提案してくれました。」
☆アダプティブテストなるものは、米国のETSお得意のテスト測定学によるものである。多次元IRTの活用によって、ミクロにはヴィゴツキーの最近接発達領域が測定できる。
☆マクロには人材の成長傾向が測れる。当然コンピューターを活用するということは、計算合理性と予見可能性を追究するから、グローバル人材の成長の傾向を評価するグローバルスタンダードを造り上げる目的がある。
☆これによって、英国も米国も欧州も、優秀な人材をグローバルに、つまり国境を超えて移動させる巨大な教育市場を創ろうというプランなのである。これに対して、IBもUWCなどのインターナショナルグループに頼っていたのでは、この動きに駆逐されてしまうので、日本語IBだとかブランドの浸透力を高めようとしている。
☆京大と河合塾が、そのマーケットのコーディネーターになれば、それは教育的にも経済的にも意義あることである。一方文科省はIB機構と交渉を続けるのだろう。なんだか幕末の薩長連合と幕府の関係に重なるなあ。
☆ともあれ、こうなると、すでにできあがっているETSが非常に優位なポジショニングに位置できる。PISAがIRTを活用してくれればくれるほど、結局米国スタンダードがグローバルスタンダードに自ずとなるからである。
☆あとは日本がTPPを推し進めてくれれば、日本の留学生を大量にキャッチできるのである。幸い日本でもやっと英語を本格的に学ぶ準備はできてきた。言語と学力の両面でトランスフォームがしやすい状況ができてきたのである。京大と河合塾はそこに参入する2015年対応に乗り出したのであろう。
☆そうそう河合塾はアクティブラーンニグを推進しているから、授業のコンバーターも着々と形成している。こちらのほうは、京大も東大も協力し、私立中高にまでその影響は及んでいる。かつて、廣松渉哲学路線が、こんなグローバル教育産業路線として発展するとは、サプライズであるが、基本は要素還元主義ではなく関係総体主義の価値観を継承しているのは今も変わらない。山中教授ではないが、Vの自問自答が行われているということだろう。受験市場が教育市場に変容する契機を河合塾が創出しようとしているということだ。
☆要素還元主義の大手予備校や教育産業が大勢を占めている中、河合塾が抜きんでる可能性がでてきたということか。
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