東大合格者数の季節2013「09」 鴎友学園女子と公立中高一貫校の差異
☆今年の鴎友学園女子の東大前期日程入試の合格者は11人。逗子開成同様、大飛躍である。東京の公立中高一貫校である白鴎、両国、小石川中等教育学校、桜修館はそろって5人だから、東大のアウトプットは倍以上違う。
☆この差異はいかにして産出されたのだろうか?
☆入学者の偏差値の違いだと言われるかもしれないが、そうだとすると、もっと格差があってもよい。だからすでにその相関はあてにならない。
☆決定的な違いは、聖書と園芸のプログラムは、公立中高一貫校にはないということである。それが東大合格者数の違いにどう結び付くのか?それ以外はどんなところが共通しているのか?と聞かれるかもしれない。
☆まず共通点と言えば、読書やリサーチのシステムは変わらないと思う。これは図書室という知のインフラが整っている限り、コストパフォーマンスはあまり変わらない。もし、図書室の開いている時間が大幅に違えば、たとえばどちらかが24時間開いていますというぐらいの差があるのなら、コストパフォーマンスに違いはでてくるだろう。
☆英語の授業も、テキストの質や時間という違いはあるかもしれないが、基本東大入試問題に関しては、効果の差がないといえよう。ただし、大学にはいってからそれ以降に鴎友学園女子の質量ともに公立中高一貫より優位性があるとは思う。
☆それにやがて、TOEFL導入が国策であるだろうから、英語力育成システムの差は私立中高一貫校と公立中高一貫校の差はなくなる。
☆そうすると、結局英語で考える力と言うことになる。しかし、これもIB日本語が国策で促進されるから、2015年以降は目に見える形で差がなくなるだろう。学習指導要領にもIBデイプロマの一つTOKのエッセンスが導入されるからクリティカルシンキングの素養が分厚くなっていく。
☆そこでも差がなくなる。いや私立中高一貫校でもまだまだこのクリティカルシンキングというレベルでの思考力育成型プログラムを持っていないから、公立中高一貫校旋風にやられてしまうところもでてくる。すでにでてきているのだが。
☆ともあれ、そのような事態は鴎友学園女子にはかかわりのないことである。公立中高一貫校がよってたかって挑戦してこようと大丈夫。そうするとやはり聖書と園芸の教育が、公立中高一貫校との決定的な違いということになる。
☆それでは、この教育のどういうところが破格なのか。それはこのプログラムがないと、1+1は2であるという要素還元主義になるが、この教育があると1+1は10にも100にもなるという関係総体主義になるという差異なのである。
☆それでは、キリスト教主義などの宗教主義が教育理念にない私立は要素還元主義なのかというと、そうではない。共立女子のようにアートがそれの代替をするところがある。麻布はリベラルアーツがそれを代替する。もっとも共立女子の教育ミームの鳩山一郎はカトリックだし、麻布はもともとプロテスタントで、隠れクリスチャンスクールは、いっぱいある。
☆中村中学校も、小林理事長の家系はカトリック。現理事長の父上は、上智大学で神学や哲学を教えていた。前法王の重要な著作の翻訳者でもある。かえつ有明の嘉悦理事長校長もカトリックである。
☆渋幕は、麻布的な雰囲気は理事長校長にはあるが、教員は要素還元主義だろう。要素還元主義は、わかりやすいし計算可能性、予見可能性、効率性が高いのだから、理念と現実がセパレートしているのは、きわめて戦略的である意味おもしろい。市川もその流れだろう。今年の東大の実績が飛躍しているのはそういう理由だろう。
☆公立中高一貫は、要素還元主義で、まだまだ伸びるということかということになる。それ以上に関係総体主義が戦略的になれば、その伸びは阻止されてしまうだろう。
☆共立女子などは、戦略的教育を行わないので、東大よりも京大の研究雰囲気に憧れて、京大に向かってしまうという年があったり、やはり政治や官僚がちゃんとしなきゃという学年だと東大に向かってしまう。それは生徒の自由意志だよというのが、なんともカトリック的だ。アウグスティヌスの思想の系譜。
☆ところが要素還元主義は、自由意志はないという決定論的科学主義だから、戦略的に動き易いのだ。
☆JG、雙葉、鴎友学園女子というキリスト教主義の学校はなかなか戦略的になれない。何せ神の計画に身をゆだねているのだから、ただし、そのゆだねるときに一貫性という神の計画に近づく戦略を考案するという問いを生み出すことは、プロテスタントは可能なのである。
☆カトリックは、その問いは人間的だからと一蹴されるのが伝統的なのだが、プロテスタントは神の計画は直接聴くことができるという自然法を出し抜く戦略を持っている。カトリックは、聖書と人間の法の間に自然法の存在を認めるが、プロテスタントは聖書という神の法と人間の法を直結させることができるから、戦略が可能となる。
☆だいぶ横道にそれたが、こんなことを公立中高一貫校はまず考えないだろう。そういう背景があるかないかという教育の質の違いがポイントなのである。
☆もちろん、要素還元主義の価値観にたてば、そんな背景や価値は無意味であるということになる。それは言論・思想の自由であるから、大いに結構であるが、トーマスをはじめ、日本人の大好きなハーバード大学のガードナー教授のいう「創造」というものは、要素還元主義からは生まれない。ガードナー教授は、商品デザインを創造的とよぶのはラフすぎるという厳しい考え方をしている。
☆この厳しい意味で、筋金入りの創造重視教育を実践してきたのが鴎友学園女子なのであることは知っておきたい。
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