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札幌で≪私学の系譜≫を確認する 新渡戸稲造と辰野金吾

☆1894年新渡戸稲造は、当時の小学校令ではまだまだ学校に通えない生徒が出てしまう状況にあって、そのような生徒たちの居場所として「遠友夜学校」を開設。札幌農学校の同僚である宮部金吾に教育の理想を手紙に託した。のちに宮部金吾は新渡戸稲造に替わり同校の校長に就任。

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☆宮部金吾は、札幌農学校の植物学の教授であるが、同学校の同期に新渡戸稲造と内村鑑三がおり、ともに≪私学の系譜≫を紡いだ。

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☆札幌というのは、新渡戸が宮部宛ての手紙に書いてあるように、彼ら≪私学の系譜≫の精神が結びついている地である。おそらく多くの人が忘れているだろうが。

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☆その象徴が「遠友夜学校」であるが、当時木造建築のその学校は、今は保存されていない。しかし、札幌市資料室に記念室として今も訪れることができる。小さなスペースであるが、ここにはたしかに新渡戸稲造、内村鑑三、宮部金吾、有島武郎などの≪私学の系譜≫の精神が保存されている。

☆もともとこの記念室は、遠友夜学校の建っていた跡地にあった市の施設に保存されていたのが、2011年に移転してきた。それも偶然なのかわからないが、移転してきた建物は、元札幌控訴院の建物。

☆見た瞬間に、もしやと思い札幌市に問い合わせてみた。すると設計者は浜野三郎ということがわかった。今でいう東大工学部建築学科卒業の司法省の役人である。

☆なぜ司法省かと思うかもしれないが、当時の法制度を実現する監獄や裁判所の建物は、自前で設計していたのである。そのため、東大の建築学科から人材を採用していたのである。

☆うむそれでは、なぜ≪私学の系譜≫なのか?それは東大のパラドクスであるが、≪私学の系譜≫は、官学も私学も明快な概念がないときに、東大の中で生まれたのは、上からの明治国家づくりが初めての近代国家づくりだったのを思い起こせば、すぐに納得できるだろう。

☆東大の工学部の中には、明らかに≪私学の系譜≫と≪官学の系譜≫の両方がはじめから存在していたのである。

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☆というのも、東大工学部前身の工部大学校は、ジョサイア・コンドルから始まり、その弟子辰野金吾に継承されていったからである。コンドルは、政府に雇われながら、アールヌーボーを織り込み、権威や権力をアピールするネオバロックは好まなかった。そのために、官を去らねばならなかったのだが、岩崎彌之助に請われ、丸の内の赤レンガビル街をデザインしていく。

☆その精神が反映しているのが、先ごろ復元された赤レンガ造りの丸の内駅舎である。言うまでもなく、辰野金吾設計によるものである。そして、サイズはだいぶ違うが、このデザインは札幌の控訴院とどこか相通じるものがあるのではないか。

☆しかし、浜野三郎は、今でいうところの東大工学部建築学科を卒業して司法省で任に就いたことしかわからない。ただ、同じような裁判所が文化財として名古屋に残っている建物は、山下啓次郎設計によるものである。山下啓次郎については、孫である山下洋介が祖父のエピソードを書いた「ドバラダ門」が参考になる。近代五大監獄の設計者でもある。つまり、東京帝国大学工学部卒業後司法省にはいるのである。

☆この山下啓次郎は、辰野金吾の門下生であり、当然コンドル流儀も継承していると予想してもよいだろう。というのも山下啓次郎は、のちに辰野金吾が尽力してつくった現在の工学院の教授にも就任しているぐらいだからである。

☆司法省という、三権分立を実質骨抜きにした強大な行政機関で山下啓次郎は近代監獄を5つも設計し、裁判所も設計しているのである。当然その後輩である浜野三郎は、司法省という官僚機能から逸脱しないはずだ。だから、山下啓次郎の設計を尊重しているはずなのであり、司法省が原則推奨していたのはネオ・バロックであったにもかかわらず、コンドル流儀が織り込まれ、大正モダニズム的雰囲気を漂わせているのは、そういうワケがあったのではないだろうか。

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☆工学院というのは、建築を通して、≪私学の系譜≫を官僚近代に埋め込んだ興味深い役割を果たしている可能性がある。

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☆札幌には、その痕跡が残されているのではないかと思えるのだが、いかがだろうか。

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☆その証拠に日本の近代形成時の国家的建築は、実によく似ているではないか。この国会議事堂の設計にも工学院関係者や卒業生がかかわったと言われているのであるが、官に≪私学の系譜≫を織り込むことによって、そのミームを活かすそのアイデアを歴史的に研究する価値はあると思うのだが、どなたか解き明かしてくれないものだろうか。

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