工学院の図書館 新しい学びをリンク
☆工学院大学附属中学校・高等学校(以降工学院)の図書館の司書教諭の有山先生にお会いして、新しい学びが立ち上がる大事な環を見つけた。
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☆それは中高生の好奇心や関心をエンパワーメントするYA(ヤングアダルト)コードである。
☆この表は、有山先生が「Education in the School Library №2/2012年」(学校図書館研究会)というレビューに掲載したものである。YAという概念はいろいろあるようだが、大事なポイントは、読書のための本の対象者を児童と大人というカテゴリーでしかわけてこなかった従来のぼんやりとした意識に、はっきり中高生をYA(ヤングアダルト)として認識の杭を打ち込んだということなのである。
☆今までだって、学年ごとに推薦図書リストが各所で作成されてきたではないかと反論されるかもしれない。しかし、その基準は結局のところ教科書ベースであり、「お勉強」のノリ以外の何ものでもなかった。
☆これほど思春期時代のYAの好奇心をワクワクさせないものはない。YA世代が読書離れを起こしている理由は、学力問題ではない。個人の興味関心の領域まで教科書という万人のための誰のものでもない知識で埋め尽くそうという20世紀型教育には彼らは嫌気がさし、そりゃあ反抗的になる。
☆しかし、反抗すべき対象は、もっと違う世界の痛みを生み出している仕組みに対してだろうけれど、YAのエネルギーを家庭内や学校内に転移してしまう恐ろしいシステム!
☆ところが、工学院では、すべての生徒に好奇心が開かれている。特に図書委員のボランタリーな知的活動は新しい学びそのものである。いったいなぜナチュラルにこういう活動が生まれるのかと思っていたところ、 新着オススメ本の棚と有山先生のおススメ図書の選び方の分類表、つまりYAコードの両方を重ねてみて、合点がいったのである。
☆実は、どんなに意欲的で好奇心旺盛な生徒も、YA世代にマッチングさせるための質的リサーチ・コード表がないまま、闇雲に選定されていた図書との出会いによってでは、その好奇心を探求活動につなげ、社会や世界に貢献させるまでに発展させる確率は極めて低かった。
☆だから、たまたま闇雲に選定された図書の中でしっくり出会うことができた生徒が、何か特別に才能があるように錯覚されてきたのである。
☆本当は、YA世代にマッチングする図書と出会うことがきちんと認識されてきたならば、おおくのYA世代が自分の才能を開花させてきたに違いない。
☆ところが、実際は上から目線でこの本を読めと言われてきたから、読書離れがすすみ、最低限教科書知識が読書代わりになってきた。
☆それでは、結局できるだけ記憶したYAが学歴社会で勝ち組になり、そうでないYAは、学歴ピラミッドの中の中下位層に位置づけられてきたのである。つまり、偏差値というポジショニングゲームで疲弊してきたのである。偏差値社会というのは、全員がたとえば60以上になろうとしてもなれない椅子取りゲームなのである。
☆新しい学びは、そんな学歴社会の歯車になるのではなく、社会全体をそれぞれがそれぞれのやり方で包み込み、社会貢献するための人間形成を目指しているのである。
☆ただ、有山先生のように、YAコードを認識・意識してこなかったから、そこはミッシングリンクであったのだ。それゆえ、新しい学びを作ろうとする意欲に燃えていた数多くの教師が、YA世代の好奇心を羽ばたかせる翼を育ててあげることができなかった。意に反して学歴ピラミッドの中でできるだけ有利なポジションを見つけてあげる支援しかできないできた。
☆現実はそれ以上でもそれ以下でもないとあきらめてきた。しかし、今ミッシングリンクはYAコードとして発見できた。もちろん、コーディングは、教師一人ひとりによって違うのであるが、それは互いに議論しあって、より普遍化していけばよいわけである。その第一歩が工学院の図書館にあるのである。今後の展開が楽しみである。
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