21世紀型教育 知識基盤社会から対話基盤社会へ④
☆それには、Can Do リストが重要なカギを握っているとも述べた。いまのところCan Doリストは、英語科で主に話題になっている。それはグローバル人材育成の政財官学の動きに合わせて起こっている。
☆グローバリゼーションというのは「多様性」というのがキーワードである。国際バカロレアやそのディプロマベースのカリキュラムを活用しているUWCなどまさに多様性の権化。
☆したがって、日本の英語教育においても「多様性」抜きの能力を目標にしてもどうしようもない。つまり大学入試のための英語教育は、グローバル人材育成のためには、「多様性」という意味でまったく役に立たない。
☆そこで、この動きに乗るために、Can Do リストを「CEFR」の「Can Do statements」を基準に作っていこうと動き始めているのである。
☆というのも欧州評議会(EU議会ではない)は、ベルリンの壁崩壊後のヨーロッパにおける多様性をどのように豊かにするかを生活レベルから考えざるを得なかった。こういうときの得意技として、欧米はまず「言語政策」なのだ。
☆その「言語政策」の一環として10年以上前に「CEFR」というの基準が誕生した。しかしながら、最初は言語政策であったが、「多様性」から出発しているがゆえに、文化や学問の領域に広がっているのが「CEFR」の現状である。もともと「CEFR for Laguage」であるから、LanguageはすぐにLOGOSにシフトする。というよりも最初から内包している。
☆そんなわけで、またまた日本の英語教育は、このLOGOSの部分を排除してCan Do リストができあがるから、困ったものだが、ここから10年たてば、教育政策の枠から広がると希望を持つ以外になさそうだ。
☆ともあれ、Can Doリストは、能力の閾値を測定するためのデータベースとして重要になる。単語一つ覚えるのでも、どのレベルで一気呵成に記憶量が増えるのか、考える能力においても、どのレベルで急にアイデアが閃いたり豊かになったりするのか。そういうことを知るためにもリスト化=コーディングしておく必要がある。
☆今までもIRTというテスト測定は、この閾値を測定するすぐれた統計学であったし、今もあるのだが、能力の閾値=threshold levelではなく、問題の難易の閾値で、その問題はどういう能力を示唆しているのかは、さらに分析が必要であった。
☆ところが、Can Do リスト化によって、二つの能力を比較することが可能になるから、どこのレベルからthersholdが現象するのかがわかる。上記のようにクロス集計して視角的に理解できるし、相関係数でも傾向をみてとれる。
☆今のところ、この手法は、NHKの英語講座、英検、GTEC、TOEFL、TOEIC、PISAで活用されている。IBやIELTSも呼び方は違うが、同様の考え方が使われている。つまり「CEFR」は独自の試みであると同時に普遍的なのである。
※TOEFLでは、Language Competency Descriptor。TOEICでは、Can・do Tables。
☆ところで、これらは、教師やリサーチャーが生徒を分析するために使われてきた。もちろん生徒自身による自己評価としても活用している。
☆しかし、凸版印刷のような教育支援システムがはいれば、生徒は自らCan Doリストそれ自体をつくるようになるだろう。これが発達の最近接領域なのである。もちろん、凸版印刷はそんなことはプランしていないだろうが、すぐにそういうビジネスが動き出すだろう。
☆今のところは英語科で話題沸騰しているわけであるが、PISAやIBにも通じるところからもわかるように、あるいはTOEFLやIELTSにも通じているところからわかるように、思考力やエッセイの規準としても活用できるのである。
☆「CEFR」は、Common European Framework of References for Languageの略であるが、CEFRLとはなっていない。つまり、CEFR for Languageであって、CEFR for Logosの可能性は開かれているのである。
☆Can Doリスト for Languageの段階で、知識基盤社会から対話基盤社会にシフトする兆しが見えるが、Can Do リスト for Logos になれば、グローバル教育、イノベーション教育、リベラルアーツというGIL路線は完全に開かれる。このGIL路線こそ対話基盤社会のビジョンであることは言うまでもない。
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