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週刊東洋経済7・6 エリート教育とお金 必見!(6)

☆週刊東洋経済は今回に限らず、実はいつもお得な学校を探すというコンセプトで学校情報を発信している。入学時の偏差値が低くても卒業時のパフォーマンスが高いところは、どこだ?大事なことは「短期的に」というわけである。

☆このこと一点に限れば、問題はないが、その背景に「優勝劣敗主義」という≪官学の系譜≫の価値観で編集されているので、読者が紹介されている学校がすべてそうであると思いこまれても困る。そこで、ウダウダ書いているのである。

☆勝ち組負け組というのは、両方とも勝ち組の競争の土俵に立てるメンバーでの競争で、はじめから競争に立てない90%の国民を切り捨てているというのが本当の問題なのである。10%に同誌が売れればそれでホクホクだからマーケティング的にはよいのではあるが。

☆ともあれ、グローバル時代に勝ち残れというコンセプトが了解できるのは、公立中高一貫校、私立中高一貫校、インタナショナルスクール、進学を重視している公立高校、国立の中高だけで、同年齢人口の10%の領域の話である。

☆この中で、私立中高一貫校とインターナショナルスクールの一部は≪私学の系譜≫に属し、グローバル時代を共に生きる時代に変えようという“Change The World”というCTWのエンブレムを胸に秘めている。

☆これらのCTW学校は、しかしながら、国内外の大学を問わず、生徒1人ひとりにあった進路をともに考えていく環境にあるから、結果からみたら、東大京大をパッシングして海外の大学に進むということにもなる。

☆公立中高一貫校、進学を重視している公立高校、国立中高は、基本スポンサーは国家であるから、そこに対する異議申し立ては原則禁忌である。本来は国家のスポンサーは国民だから、それもおかしな話だが、国民はお上だという意識や官尊民卑に甘んじるオリエンタリズムに浸っているからしかたがあるまい。

☆国家がスポンサーだと思っている場合、国家を問い返す勇気のことを内部告発というから、それはリスクが大きいのである。このような組織であるのは、一連の体罰・いじめ問題の時や原発事故答弁の時にテレビで見て周知の事実であろう。

☆外から国家の組織を変えるしかないのである。アダム・スミスやケインズ、ロバート・シラー教授のように賢い国家に。J.J.ルソーのように。全体意志を排除する一般意志を構築すること、これである。

☆すると、戦後≪私学の系譜≫の人々が、国内にその装置をドサクサにまぎれて埋め込んだのが初等中等教育段階の私立学校なのである。国家から公立学校に比べて相対的に自由な領域をなんとか残したのである。

☆戦後ふんばった≪私学の系譜≫の人々とは、吉田茂、白洲次郎、田中耕太郎、天野貞祐、南原繁、矢内原忠雄、神谷美恵子、河井道、務台理作、小泉信三、前田多門・・・という私学人である。私学人とは必ずしも私立学校出身者ではない。

☆江原素六、新島襄、福沢諭吉、矢島楫子、渋沢栄一の精神を継承する人々を指す。かれらの精神を引き継いだ≪私学の系譜≫第二世代は、内村鑑三、新渡戸稲造、石川角次郎、高橋是清である。この系譜を継承した上記の弟子たちが、戦後教育基本法成立にむけて陰に陽にコラボしたのである。

☆この精神は、第一次安倍政権のときに末梢しかけられた。教育基本法が改正されたのは安倍政権の時である。その過程の中で、現代私学人が戦後教育基本法を成立にむかわしめた私学人たちと同じように陰に陽に闘ったのである。それでなんとか精神を保守した。

☆そのときの現代私学人が、八雲学園の近藤校長、富士見丘の吉田校長、東京女子学園の實吉校長、東京私学教育研究所の清水所長(当時鴎友学園女子校長)、工学院大学附属中高の平方校長(当時聖学院の校務部長)の方々である。

☆麻布氷上校長(当時)は、土曜の特別授業で、自ら教養講座を開設し、そこで丸山真男著作集の読書会を行った。なぜ丸山真男か?氷上校長の父上は南原繁の娘と結婚し、同時に弟子だったのであり、丸山真男とは兄弟弟子だったからでもあるが、丸山真男はその≪私学の系譜≫に属さず、師南原繁とその弟子たちの活動のオブザーバーだったからである。つまり、戦後教育基本法の成立の時代を客観的にみる目を持ったうえで、時代を斬る教養をトレーニングしていた。

☆もちろん、講演会などでも、熱く語った。共立女子の渡辺校長(当時教頭)といっしょに拝聴しに行き、その夜は氷上先生と渡辺先生と熱く語り会った。

☆しかし、そのときに私立学校の中から安倍政権に与したところもある。渋谷教育学園幕張の田村校長はその筆頭。それゆえ、新自由主義ベースの雑誌などには看板私学としていつも登場する。経済価値行動の歴史をたどっていくと実におもしろいチャートがみえてくるものだ。

☆今回アベノミクスを当面認めながらも、現代私学人が警戒しているのは、再び教育改革の路線が国家主義に戻らないかどうかなのである。

☆子どもの未来を守るのに、国家主義的環境だけは避けたほうがよいのは明らかである。そうなったときのために脱出してサバイブしようというエリートを育てるのでは、そこにはじめから乗れない90%の国民はどうしたらよいのか。

☆東洋経済の投げかける学校選択の価値観は、本来的な深刻な局面を開かせてくれるのである。それゆえ、必見!なのだ。

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