東京女子学園 教育の質追究の根っこ
☆2006年教育基本法改正のときも今後の教育行政や私学の方向性についてご教示いただいた。今回も憲法改正の話題やスーパーグローバルハイスクール、日本語IBなどグローバル人材育成の話題満載の局面を迎え、それが大きく私立学校の教育にも影響するがゆえに、實吉先生の考え方をお聴きするのは重要だと判断したのである。
☆實吉先生にお会いすると、必ずこんな本読んだかなというトリガークエスチョンから始まる。≪私学の系譜≫について、どれだけ現代の問題にリンクさせて考えているのか、ブレストするところから始まる。
☆「日本をダメにしたB層の研究 」を書いた適菜収さんの思想が話題になった。小泉郵政選挙のとき、広告代理店スリード社が、国民を「構造改革に肯定的か否か」を横軸、「IQ軸(EQ、ITQを含む独自の概念とされる)」を縦軸として分類し、B層をターゲットにねらうという企画書を提案したと言われている。
☆適菜収さんは、このB層の概念を、民主党政権時代や安倍政権、ポップカルチャーなどに拡張し、さらにニーチェ、ゲーテ、オルテガなどの哲学者の視点を交えて、深めている。
☆収さんは、思想家・作家だから、極端な表現をする。たとえば、民主主義=全体主義=人権主義=一般意志=ルソーという文脈を明快に表現してしまう。
☆B層も実際には、オルテガの提示した大衆の成れの果てであると語っているから、民主主義も、内的矛盾が噴出した結果全体主義を生み出すところまできた成れの果ての民主主義のことを言っているのだろう。
☆そこらへんはクリティカルに読んでいかなければ、B層はまたまた煽られてしまう。適菜収さんのニーチェ的アイロニーなのかもしれないが、痛快であると同時に破壊的な書である。
☆ともかく、小泉政権に典型なワンフレーズ・ポリティカルに乗ってしまう雰囲気だけで判断してしまうB層をコントロールできない今日の危うさを、實吉先生は確認しながら、実際には、それは近代が始まって以来、ずっとそうだった。
☆日本の近代の幕開けはB層のルーツがたしかにあった。官学は、「近代進歩史観」を全面展開し、それは今も「勝ち組負け組」という文化に根付いてしまっている。
☆それに対し、≪私学の系譜≫は、明治以来距離をとってきたし、闘っても来た。
☆滴菜さんは、A層とかB層は、構造改革というのがなんであるかクリティカルに考えるコトができない教養のなさを指摘している。
☆リベラルアーツを大切にするのが≪私学の系譜≫であるから、やはり私立学校の位置づけはA層やB層にはない。かといって、神は死んだのニーチェに代表される思想がベースの滴菜さんの考えるC層とも違う。
☆どちらかというとA層を批判しつつ協働し、B層C層の考える力を向上することによって、日本の未来を創っていく教育を追究しているポジショニングにあるというのが、實吉先生の立場だと思う。そして、それが共に生きる力を育成することになるのだと。
☆それゆえ、最近、實吉先生の3つの私立学校のタイプを発展させたわたしの提案「中高の最適比較優位の分類」は間違っていないのではないかと確認してみた。
☆分類の方法に正解も不正解もないが、方向性を表現するのは最終的に「ことば」でなければねと。現実はこんな簡単に分けられないのだからと。ただ、図を表現し続けていくことはよいのではないかと、實吉先生の反照的均衡の考え方に触れることができた。
☆高校無償化所得制限や様々な新しい学校の設置の話題についても具体的なコメントをいただいたが、いずれご紹介したい。
☆大事なことは、批判もするけれど、そこで終わらない。むしろ、変化がABCD層、それぞれにどのような意識を生み出すのかそこを見極めることが重要だよと。
☆教育の質に注目する人口が増えたり、良質教育にはお金も必要なのだという意識が立ち上げれば、あるいは立ち上がるように啓蒙するのは大切であると。立ち上がったとき、あるいは立ち上げようとしたとき、はじめて最適な教育政策が打てる。
☆B層のような、問題意識が半径5メートルくらいという政策担当者はそういないという信頼も一方で用意しておきなさいと語られた。そういう気概で、實吉先生は政策担当者や教育関連企業の重鎮たちと日々対話をし交渉し続けているのである。
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