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土浦日大中等教育学校のクオリティスコアが最高なわけ(5)

☆理科の松原先生のセミナーの題目は、「三本の矢が作りだす学力向上の秘訣~講義→演習→実験の流れが応用力思考力をUP」。いきなり東大の問題と実験から始まった。

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☆東大の問題も、実に興味深い実験から始まっているのだが、まずはやってみようと、参加者全員にアルミの管と磁石を配布。実験が始まった。

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☆磁石をアルミ菅の中にいれて、どうなるか参加者全員がのぞき始めた。この集中力。フロー状態(没頭状態)こそ理科の授業の面目躍如である。

☆参加者全員が、実験がいかに重要であるか体感するや、理科の授業は三本の矢によって学力をアップするということはわかったでしょうと。

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☆しかし、実際には週に4時間しか物理の授業というのはないのだ。世の中3本の矢と言いながら、本当は2本いや1本の矢で授業は展開されている。じゃあ土浦日本大学中等教育学校はどうしているのか。

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☆朝6時45分からと放課後の時間を月曜日以外確保するのである。松原先生は朝4時に起きて学校に来るという。

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☆これによって、三本の矢ができる。したがって、当然土浦日本大学中等教育学校の生徒の物理の成績は、オール日大高校25校の中で、ナンバー1である。

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☆日大付属の中だけではない。茨城県内でもナンバー1なのである(写真赤色部分が土浦日本大学中等教育学校)。では、3つの活動をやれば、どこの学校でも学力がアップするのだろうか。

☆いや違うのである。演習活動も、従来は「良問」を選んで演習していた。しかし土浦日本大学中等教育学校は違う。今やネット上で大学入試問題は大量に手に入れることができる。

☆したがって、「良問」を核に、類似問題を重ね合わせていく。すると少しずつズレがあって、考え方が少しずつ広がっていく。これによって、「良問1」と「良問2」の架け橋ができる。こうして、核になる問題をどんどん考えていくことができると。このとき大事なことは「基本原理」が使えるようになっているということ。

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☆ 3つの活動もこのような仕掛け作りが重要なのであるが、ここまで話を聞いて、松原先生は自身の授業経験から学習理論という一般理論を見出し、それを3本の矢に応用しているのではないかと思った。理科の教師ならではの発想であるが、果たしてその予想は次の展開でその通りになった。

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☆知識を宣言的知識や手続き的知識に分析したり、素朴概念と科学的概念の違いを生徒が思考していく過程こそ、演習活動であり、「良問」をやれば、それでよいとか、量をただたくさん解かせればよいというのではない。問題選定とそれを通して、生徒がどのように知識を関係づけて思考していくのか認知科学的な学習理論の背景を披露した。なるほど、授業ではなく「教育セミナー」である。

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☆極めつけは、協同学習の問題点を認識し、有効なコラボレーションを創り出しているという話だ。グループ学習はやり方如何でたんなる群衆にもチームにもなる。そこの見極めができないとやっても意味がないという。2015年にPISAで、はじめて協調学習のリサーチをすると言われているが、土浦日本大学中等教育学校では、そのリサーチはすでに終わっているのである。

☆松原先生の協同学習の手法は、熟達者どうしが切磋琢磨するチーム。熟達度が同じくらいでも対話能力が高い集団をつくれば、そこで1人ではわからなくても、教え合うことによって理解が促進するチームができるという。MITメディアラボで試みられている「憧れの最近接発達領域」を相互に見いだすチームを創っているのである。

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☆講義では、生徒が物理の熟達者になるべく、素朴な日常的概念から科学的な概念や原理に到達するようにトークしていく。しかし、これは実験と演習という活動に学習理論が埋め込まれた具体的な学びがあるからこそ、生徒は抽象的な思考を稼働させることができるのだろう。

☆今回、数学、社会、理科と教育セミナーに参加して、最後に再び黒澤先生のことばを思い出した。「経験に代入して理解していくだけでは、全体の方程式はみえにくいですね。そういうときは演繹的に見渡す必要があります」と。

☆従来の中等教育レベルの授業や学びは、先生方の熱い経験によって支えられてきた。しかし、情熱はときとして、冷めるものだし、学内全体で共有するのは難しい。

☆その点土浦日本大学中等教育学校の21世紀型教育では、情熱と創意工夫という経験の積み上げと同時に演繹的に学習理論を重ね合わせている。理論という一般化は、経験の暗黙知を共有できる大切なシステム思考である。

☆システム思考なき学校は、結局偏差値の高い生徒をたくさん集め、教師の力量に関係なく、大量の問題を解かせて、生徒の潜在力を爆発させて実績を出すということになる。

☆しかし、理論がないために、生徒たちは自分の潜在的な力を認識できないまま大学に進み社会にでる。結果は出せるが、なぜそういう結果になったかプレゼンする対話力が育たないまま。これがグローバル時代に日本の優秀な人材が取り残されている本当の問題であり、英語力の問題だけで解決するようなものではない。

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(左から中川校長、堀切副教頭)

☆中川校長と堀切副教頭が

「近未来に活躍する多くのグローバルリーダーが土浦日本大学中等教育学校から輩出されるのは予想に難くない。今回のサブテーマ≪わたしたちはどこから来たのか?わたしたちは何者なのか?わたしたちはどこへ行くのか?≫というゴーギャンの言葉の意味を土浦日本大学中等教育学校の生徒は自分なりに回答を見出せるでしょう」

☆と語った意味がわかったような気がする。

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