工学院の思考力セミナーがすごい IBの第1ゲートをくぐる(1)
☆思考力型問題を従来の一般試験に埋め込む形の入試と工学院のようにまるまる一つのテストとして「思考力テスト」入試を行うところがある。工学院スタイルは、かえつ有明、聖学院、文化学園大学杉並、佼成学園女子。
☆工学院、かえつ有明、聖学院は「思考力テスト」という名称、文化学園大学杉並は「A型入試」と新設の「難進グローバル入試」という名称、佼成学園女子は「PISA型入試」。
☆「公立中高一貫校」の適性検査とどう違うのかと受験市場からはよく質問をうけるそうだが、簡単に言えば麻布のような入試レベルをプロセスをきちんと挿入していくことによって、考えるコトができるかどうか問う問題だという。
☆知識をベースにする問題では、考えるコトができるのに、知識がないためにその資質を表現することができないために、得点できない生徒がいる。そういう生徒をふるい落としていたのでは、未来の本当の人的資本をどんどん喪失していくと気づいたということだ。
☆タキソノミー的には、
☆適性検査が20世紀型思考次元までしか要求していないのに対し、思考力型テストは21世紀型高次思考まで求めるものである。ただし、高偏差値の入試と高次思考の入試は一致しない。思考の次元が低くても難しい問題は作ろうと思えば作れる。逆に高次思考の問題でもリーズナブルな問題は作成できる。
☆さて、工学院の「思考力テスト」だが、実におもしろかった。というのも、他校の思考力テストとはまた違うのだ。かえつ有明のように、思考の道具を使えるかどうかをみるのとも違うし、聖学院のように、思考のプロセスのジャンプに気づくかどうかをみるのとも違っていた。
☆具体的にみてみよう。
☆いきなり「トイレについて考えよう」という。これには受験生も唖然。思考力テストだから、超大なテキスト資料を渡され、それを分析していくのかと思えば、トイレのアイコンを見せられて、トイレについて考えようというのだ。
☆これは美術のいやいや時代のパラダイムを大転換させた一作品「泉」をマルセル・デュシャンが美術界や思想界に贈り届けたときの同じ衝撃だっただろう。
☆今回のセミナーを担当したのは、図書館の司書教諭有山先生と家庭科の萩原先生。お2人は「ふだんトイレのことは考えないでしょう。だれでも知っていると思っているKnowledge(IBでは、これを「知識」と訳さないようにと要求している)だからこそ、Knowledge Questionになるんですよ」とほほ笑む。
(右から有山先生、萩原先生)
☆萩原先生は、今では家庭科というのは身近なところにあるものを科学して、社会や世界に結びつける科目なんです。石鹸や洗剤1つで化学も学ぶし、その化学変化はすぐにもエコロジーに結びつくんですよ」と。
(文科省が訳付きで公開している。ここではKnowledgeは知識と訳されているが、この箇所ではいいのだろう。むしろ、knowledgeとknowingの差異が興味深い)
☆IBの思考力育成教科にTOKというのがある。そのダイアグラムをみると、萩原先生流儀の家庭科は、AOKs(知識の領域)をすべてカバーする学問ということのようだ。
☆だから、「トイレ」1つが、受験生の前に、突然IBのAOKsすべてに広がった存在となるのである。その入り口がステップ1。「トイレとは、あなたにとってどんなものか、まずは自由に書いてみよう」と。
☆ここでは、まず自分なりのWOKs(Ways of Knowing)を活用させる。IB(上記のダイアグラムはオリジナルで、これはIBでは生徒に考えさせて、さらに広げるプログラムを挿入している)のオリジナルのWOKsには、感情、感覚、論理、言語が挙げられているが、最近では、これ以外に信念、記憶、本能、想像というのも取り上げられるようになっている。
☆工学院思考力セミナーでも、生徒は、きたないきれいとか、においとか感覚をツールにトイレについてのKnowledgeをふくらませていた。トイレの付随施設やトイレのメーカーなどにも合理的なツールで接近している生徒もいた。
| 固定リンク
「21会校」カテゴリの記事
- 富士見丘 最良の女子校<03>受験知ではなく探究知へ(2017.03.01)
- 進撃の21会【01】 UCLと21会校の対話はじまる グローバル維新2089に向けて(2015.03.26)
- 第18回 21会定例会 議論 about 2015年21会ビジョン(2014.12.05)
- 聖徳学園 「ジグソー法×ICT」授業(2014.11.07)
- 工学院 脱フレームイノベーション(2014.11.06)
最近のコメント