« 小学校の英語教育 国際理解教育から知識基盤社会理解教育へ | トップページ | 第7回全日本高校模擬国連大会出場校 学校選びの参考データの1つ »

日本でイノベーターが育たない理由 学習指導要領に原因

☆「産学官連携ジャーナル」2013年10月号で、永野博氏(政策研究大学院大学 前教授/OECDグローバルサイエンスフォーラム議長)が「世界が競うイノベーション人材の育成―若手後継人材に賭ける各国の現状をみる」というレポートを掲載。

画期的なイノベーションのもととなる発明、発見を行った人は、よほど発想力が豊かで、意思の強固な人であったに違いない。イノベーションは種を生み出さなければ生まれない。上流(種を生みだすところ)がなければ下流(市場開拓)はない。フロントランナーになるためには、上流の人材が不可欠である。

☆これはどういういことを言っているかというと、日本ではイノベーションの種を生み出す上流=大学などの研究機関の条件が貧弱であるということなのである。その装置の条件はというと、

どんな人材が必要なのか。独立してどこでも働ける人材である、それも高度に優秀な人だ。博士号取得者というのは、自ら問題を設定し、解決策を考えられる人材だ。そのため、世界の多くの国では、博士に対する需要は他の学歴よりも大きく、収入もよければ、失業率も少ない。しかし、そのような卓越した若手人材を育てるためには、それ相応の環境が必要だ。ドイツ研究振興協会のヴィナカー元会長は、①できるだけ早く独立して研究できる能力を身に付けさせる ②メンターの存在 ③学際的なディスカッションのできる研究環境 ④最良の博士課程学生やポスドクが至近距離にいること ⑤透明な選考システムを持つテニュアトラックシステムの存在 ⑥女性研究者への適切な対応(配偶者のポストへの考慮など) ⑦家族と暮らせる最低限の支援、をそのための条件として挙げている。

☆かつて日本も、その種を生み出す上流は、日本の庶民の勤勉・倹約という文化にあったかもしれないが、世界の大学がそのような文化的暗黙知を上記のように形式知化して、自らをイノベーションの種を生み出す装置と化した。

☆その良し悪しは別として、日本はその装置化が遅れてしまった。それは、次のことから明らかだという。

将来を嘱望される若手人材に、若いうちにマネジメント能力をつけさせ、自由に発想しつつ新たな課題を見つけさせる研究資金は日本には全くない。この10年来の世界でのファンディングの動きも知られていない。日本のファンディングのシステムはキャッチアップ時代をひきずり、大学の博士課程は、研究室の後継者の育成という伝統からはみ出さない。この影響は統計データにも明らかに表れている(図1)。世界において優秀な論文とされる、引用率の高い論文の世界での創出割合は、もともと非常に高かった米国を除くと、先進国では日本だけが低下傾向にある。公的財源に対する論文生産性も非常に悪い。ハイテク貿易の伸び率も日本だけは異常に低い。日本にいると実感できないが、国際的に比較すればすぐに分かる事実である。

(図1)

Innovation

☆この話題については、工学院大学附属中高の校長平方先生と別の角度から話し合った。それは、現行学習指導要領には、そもそも 独立してどこでも働ける人材を育成しようというキャリア教育がない。進路先教育があるばかりだ。まして、高度に優秀な人で、自ら問題を設定し、解決策を考えられる人材という「メタ認知」を有した人材育成の教育内容は想定されていない。

☆それは知識基盤社会到来に向けて組み立てられているはずの情報教育でさえ想定していない。次期学習指導要領の改訂にむけて国立教育政策研究所教育課程センターが中心になってリサーチした報告書「社会の変化に対応する資質や能力を育成する教育課程編成の基本原理」を読めば、その想定していないことの反省に立っていることは明らかである。

☆IB200校の話も、ある意味現行学習指導要領の想定していない部分をIBディプロマで補完しようということではないかと思えてしまうほどだ。

☆次期学習指導要領の教育課程編成の基本原理は、オーストラリアが中心に欧米とコラボしているグローバル教育や21世紀型スキル教育を下敷きにしていることも明らかで、そこではブルームやマルザーノのタキソノミーも検討されている。

☆思考のレベル基準やCEFRのレベル基準、OECD/PISAのレベル基準は、概ねコールバーグ=ハーバーマスのコミュニケーション発達レベル基準に相当する。6段階になっていて、レベル5にメタ認知が登場する。

☆従来の学習指導要領はレベル4までしか想定していないから、与えられた課題を理解する思考力は身についてきたが、与えられた課題=所与がいかなる条件によって設定されたかを問い返し、新たな問いを自ら設定するメタ認知能力は、学校教育全体の中では育成されてこなかった。

☆それを反省し、次期学習指導要領の教育課程編成の基本原理のイメージを以下のように「21世紀能力」として作成している。

Photo

☆日本のイノベーションを生み出す種は、大学の条件整備が遅れていることも挙げられるが、そもそも初等中等教育段階でも抜けている。いくら大学だけ整備しても、それにつながる初等中等教育の梯子がかけられなければ、大きな成果は生まれないだろう。

|

« 小学校の英語教育 国際理解教育から知識基盤社会理解教育へ | トップページ | 第7回全日本高校模擬国連大会出場校 学校選びの参考データの1つ »

教育イノベーション」カテゴリの記事