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国際教養大学の本音(2)

☆まず基本的なことだが、国際教養大学は卒業時の目標の1つにTOEFL600というスコアを掲げている。TOEFL iBTに換算すれば100くらいか。すると、IELTSでは、6.0くらい。

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☆これはどういうことかというと、イギリスの大学に入学する際の英語のスコアだということである。CEFRでいえば、B2レベル。

☆これでは、グローバルビジネスでも本当はうまくいかないかもしれない。つまり、欧米流儀のグローバルシチズンとかリベラルアーツを目標にしていればもう少し目標を上げなければならない。

☆しかし、官僚企業日本株式会社の枠組みでは、そこまで必要ないのだ。それはNTTの人事人材開発担当部長の講演からも明快だった。C1C2レベルのグローバルリーダーはコストがかかるから少数精鋭育成できればよいのだと語っていた。

☆欧米のグローバル教育は、対象が市民全員。エリート教育としてのグローバルリーダーなどという発想はない。

☆国際教養大学は、故中嶋学長が築き上げてきたグローバル人材育成大学からグローバルリーダー育成大学にシフトチェンジするという話だった。しかし、どうも準エリート教育でよいと言っているように聞こえた。TOEFLと言うから、英語のスキルだけの話で、グローバル人材は英語力というよりリベラルアーツなのだと逃げ道が用意されているのがそう思えたのかもしれない。

☆しかし、このリベラルアーツも科目としては存在しない。自由な対話や議論なのだと鈴木学長は講演された。だから授業は講義形式ではなく、リベラルアーツ的枠組みの授業を行うと。要はアクティブラーニングだよと言っているに過ぎない。

☆このようなTOEFL600に基づくアクティブラーニングだとCEFRでいうC1C2はトレーニングできない。グローバル人材は解なき社会で自分で考え自分で決断するのだといいながら、言語能力がB1B2どまりだと、メタ認知やクリティカルシンキングが育たないから、賢いけれど優秀な組織人で終わってしまう。TOEFLを前面に出しているのは、CEFRという言語=思考という欧米流儀のリベラルアーツ的発想を持ち出さないためであるのかもしれない。

☆中嶋先生のお弟子さんが物申したのは、そこだったのかもしれない。

☆また、国際教養大学にエールを送っている文部科学審議官も、基本的には同大学のグローバル人材、グローバルリーダー、リベラルアーツのコンセプトを認めている。そもそも同大学はすでにグローバル人材育成教育のロールモデルとして、経産省の資料で紹介されて久しい。

☆審議官は、スーパーグローバル大学とスーパーグローバルハイスクールの話も既定路線のような調子で話し、この流れに国際教養大学のポジショニングをしているから、ますます今話題になっているグローバル人材育成は、当然ながら官僚企業日本株式会社の組織の枠組みの話ということだろう。

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