2014中学受験【013】 吉祥女子 20世紀型教育で乗り切る
☆マーケットいうのは、だいたい以下のような参加者のキャラクターになっている。
☆吉祥女子の説明会の戦略は、徹底した20世紀型授業で、がっちり進路指導を行い、東大を頂点とする学歴ピラミッドで勝ち組になることを伝達するものだ。
(写真はパンフレットから)
☆「吉祥進学」は40ページもの冊子で、年6回発行される。2ヶ月に1回だから、ものすごいコスト(時間と労力)を教員は集約する。しかも中身は目先の受験についてである。
☆そして受験体験記など4種類もの進路指導というより受験指導そのものの冊子が発行される。ほぼ毎月受験指導の冊子を生徒は手に取るのである。
☆2018年から大学入試改革があり、それは今の高校生ではなく、中学から影響を受けるにもかかわらず、旧来の受験制度をしっかり固めて行きますよという表現。受験言説満載の説明会。
☆しかし、受験雑誌に掲載されている吉祥女子の情報のたくさんのコピーを読む限り、自由と芸術の校風が描かれている。
☆たしかに、豊島岡女子と鴎友学園女子との三校の比較記事では、キリスト教主義でないからストイックでないという意味で自由であると映り、豊島岡女子のように割り切って東大と医学部に向けてがんばりますと標榜しない分、教養主義的で、芸術も捨てていないところが、柔らかい。
☆メディア戦略では、三者の中で独自の雰囲気があることをきっちり表現されるようにコントロールしているのである。
☆そして、実際の説明会では、理系女の傾向が芸術系よりも顕著になってきていることをきっちり表明し、レイトマジョリティのハートを射抜く。戦略家が内部にいるということだろう。
☆卒業生がカナダ語学研修について、やはり異文化を知ることができるプログラムは「最高」だと語っているビデオを流していた。しかし、これは洗足や富士見丘に比較すると、ただの語学研修で留学とはほど遠い。
☆しかし、偏差値と大学合格実績を学校選択の指標としているレイトマジョリティに、豊島岡女子や鴎友学園女子に比較して、優位性があると映ればそれでよい。
☆また、たしかにグローバル人材育成の時代到来だが、当面東大学歴ピラミッドは変わらないし、本当に革新的な世の中になるにはもう少しかかるからと実利的なアーリーマジョリティも、それで満足するだろう。
☆この市場のマジョリティの参加者は、子どもの才能の可能性よりも職業選択の可能性の未来を見据えている。
☆だから、学校当局は、しっかりマーケティングして、新しい市場創出ではなく、今ある市場でいかに生き延びるかという戦略を立てているのである。
☆したがって、グローバルスタンダードなクオリティスコアは、豊島岡ほどではないが鴎友学園女子よりは低いのである。
☆しかし、それがかえって生徒には居心地がよい。当面変わらない東大学歴ピラミッドの中でほどよいポジショニングをゲットするのに、実はたいして努力しなくてすむ勉強をやり(知識を定着させてそのポジションをゲットするのはたいして苦ではない。そういうトレーニングを中学受験で叩き込まれているから)、大いに部活を楽しむことができるのだから、こんな自由でアーティスティックな学園生活はないだろう。
☆社会科は、ディベートや論文などの指導もするということだが、地理、歴史、公民の縦割り分野の一般的な入試問題の構成。もし本当にディベートなどに本格的に取り組んでいるのなら、教科横断的になるし、少なくとも分野横断的になり、栄光や麻布のような「主題編成型」入試問題になるはずだ。
☆国語も受験で読書ができないだろうから、過去問に取り組んだときに、ぜひ読んでもらいたい文章で少しでも読書体験をと説明する。そして記述も出題すると。
☆しかし、模擬試験と変わらない長文と設問にどこにオリジナリティがあるのかよくわからない。おそらく麻布や桜蔭の問題など研究していないのだろう。
☆理科も実験を大切にしているから、入試でも実験に関連する問題を出題していると、具体的に問題を示して説明してくれたが、いきなり知識がないとできない問題からスタートするし、実験から法則を導き出すといいながら、単純に関数計算させるだけの問題。その関数こそ原理なのに、そこを説明する問題を設定していない。
☆数学は、豊富な知識がある教師がいるということを伝える、他校の数学の先生方と対談している記事のコピーを説明会資料として配布いるが、吉祥女子の生徒が決定的に受験言説に取り囲まれていることを露わにしてしまっている部分がある。それだけ、言語を戦略的に使い、レイトマジョリティになに新奇をてらっているのと見限られないように計算しているところがすごい。
富士山の稜線が指数関数のグラフと一致するという画像を見せて「日本人が富士山をキレイだと感じるのは、心の奥底で指数関数をキレイだと思っているからだ!」という話をすると、生徒はサーっと引くんですけど(笑)、中には引っかかる子がいるんですよね。
☆この富士山の稜線の話題は、ダ・ビンチコードおなじみの数学の神秘のお話しで、教科横断的あるいは学際的な知性の生徒にとっては、受験数学からしばし離れて、目を輝かせる話なのだが・・・。
☆山脇とは違い、芸術プログラムを持ちながらも、精度の高い20世紀型教育で、生き残ろうとしている吉祥女子の戦略的したたかさに感服した。
☆ただし、配布された資料で、海城の先生と「中学以降の親のサポート」について対談する記事もあったが、いくらレイトマジョリティが、東大学歴ピラミッドの社会構成を前提にしているからといって、それに合わせて語ってしまうのは、問題である。
☆親と子、男女の問題などは、経済の問題のみならず、社会全体の問題にどのように立ち向かっていくのがよいのか考えるサンデル教授の提案する「正義」問題に関係するだけに、危うい。
☆この記事を読んで、どこが問題?と思ったら、それは本物の教育的な感覚や市民社会感覚を持ち得ていないといえないことはない。受験言説に合わせすぎるのは、やはりリスクが高い。。。
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