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2014中学受験【076】 海陽学園が変える日本の教育

☆今年9月、鈴木隆祐氏による著書「海陽学園が変える日本の教育」が出版された。278ページの圧巻で、ある意味「海陽学園論」として企業立の学校論を支持する論考である。もちろん法的には学校法人ではある。

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☆しかし、昼間の学校は伝統的学校であり、夜の学校「ハウス」は、鈴木氏によると「学園の心臓部」という二重構造は、一般の寮制学校とは違う。

☆世の批判は、企業立の伝統的な学校を劇場化しているところに集まるが、鈴木氏が実際におそらく宿泊までして取材しているうちに、「ハウス」のグローバル企業的な人材育成教育に松下幸助や稲盛和夫の精神に重なるのを見、さらには渋沢栄一や福沢諭吉のような道徳経済合一論の精神が脈々と継承されているのに気づかされ、教育ジャーナリストの振りあげた剣を収める形になっている。

☆鈴木氏の本が効を奏したのかどうかはわからないが、フリーズした中学受験市場にあって、いやだからこそなのかもしれないが、2014年度の特給入試の応募者は昨年比107%である。1回目の帰国生入試も増えている。

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☆入試問題を見れば、まさに開成の入試問題。タキソノミーに対照すれば、レベル6のうちレベル4までの範囲内できっちり出題。これは東大・早慶入試問題レベルの思考力である。

☆知識そのものは中学入試の範囲内だが、思考のエッセンスは、もはやそのレベルを要求している。もちろん、これは偏差値ではなく、思考のプロセスのレベルであるから、レベル4であるから難しいということではない。

☆漢字の読み書きでも、難問は出題できる。この難度というのは偏差値換算でき、一方、タキソノミーのレベルは世界標準の思考の質に換算することになるから、測定のモノサシがそもそも違う。ここらへんの違いがわからないと、昼間の伝統的な私立学校ミニ開成としての海陽学園という見え方になってしまう。

☆しかし、タキソノミー的な発想がわかる人(つまりIBやAレベルのことを知っている人。イートンとかハーバードという話になると偏差値ではなくタキソノミー的な発想になるはず)から見れば、昼間の学校ではレベル4までをしっかり学び、レベル5やレベル6を夜の学校「ハウス」でやっているのだということがわかる。

☆もちろん、それは鈴木氏のこの著作を介してはじめてわかるのだろうが、ともあれCEFRと同様レベル4までは、スキルやテクノロジーだけでいけるのであるが、レベル5と6は、そのスキルをいかに感性を研ぎ澄まし人間力を鍛えていく武器として活用していくか、つまりそこがグローバル人材育成の要なのである。

☆文科省のある顧問が、ケンブリッジの学生と東大生を比べると、レベル4までの知識量は東大生に軍配があがり、レベル5と6の論理的かつ相手の感情をコントロールする雄弁論では、ケンブリッジの学生に軍配があがるという。

☆ケンブリッジの学生は、知識量ではなく、そこはシンプルにし、議論でソフトパワーを増大させることができるのであると。

☆だから、昼間の学校と夜の学校「ハウス」の連携が重要である。逆に言うならば、私立公立問わずほとんどの学校がタキソノミーのレベル4までなんんとか四苦八苦教え込んでいる20世紀型教育を行っている学校であるから、今のままでは政策で声高に謳っても日本のグローバル教育は難しいということを示唆している。

☆まさに、「海陽学園が変える日本の教育」というわけだ。寮制学校は他にもあるではないかと言われるかもしれないが、本書を読めばわかるように、「ハウス」にかかわるスタッフは、企業人である。

☆教師もいるが、そのキャリアは教師人生一筋というわけではない。教育は人がつくる。その人が教育学部や教職課程で育成された人材だけだと、客観的な知識をタキソノミーのレベル4までで教えるようにしか鍛えられていないから、たとえ夜の学校があっても、海陽学園のようにはいかない。

☆IBやAレベル、AP、21世紀型スキル育成教育でトレーニングされてきた世界各国のグローバル人材と対等に勝負ができないのは言うまでもない。

☆この「ハウス」で24時間体制で生徒とともに未来の夢を実現するために「今」どうするか熱い想いで導いている教師を集める手腕は、企業立でなければできない手腕なのかもしれない。

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☆ところで、本書の「学園の心臓部」の章を読んでいたら、日本の名キャプテンシーを育てた「ティーチャーオブティーチャーズ」 で有名な教師もハウスマスターとして写真に登場していた。

☆突然九州から首都圏にやってきて、多くのイノベーティブな先生方の心に火をつけて、自分は風のごとくいなくなった。まさにトリックスターのスケープゴートという文化人類学的典型の私学人なのだが、いつの間にか日本の教育を変える最前線で未来の世界リーダーを指揮していたとは!喫驚であった。

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