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東洋大学 紙の「大学案内」廃止のインパクト

NEWS ポストセブン 12月29日(日)16時5分配信 で、コラムニストのオバタカズユキ氏が<東洋大学「大切なものはすべて、Webに集めました」は英断か>という記事を掲載。

受験生で東洋大学を受けようという場合、もはや「大学案内」を読んではいない。なぜって、2014年度入試より、東洋大学はひとつの決断を行動に移したからである。大学公式HP入試情報サイトのトップ画面を開けると、以下のような文言が華麗に流れる。

<東洋大学は「大学案内」をつくりません。紙の「願書」もありません。大切なものはすべて、Webに集めました。PCからタブレット端末、スマートフォンなどのあらゆるデバイスに対応。好きなときに、あらゆる場所、あらゆる端末で学びの最新情報や入試情報、出願から入学手続まですべてがそろうWebサイトです。Webに広がる「学びの世界」をぜひ体験してください>

☆しかし、その現実的な

理由は、私立大学情報教育協会の機関紙『大学教育と情報2012年度No.2』によると、要するにコストカット。「膨大な時間とコストをかけて制作したガイドブックが本当のところどれだけ読まれているのか、大学選択にどれくらい機能しているのか、未だに正確に掴むことができていない」と、同紙で東洋大学入試部次長が吐露している。

 なるほど、少子化で経営の苦しくなってきているところも多い大学業界である。全国的に有名な東洋大学がさほどの苦境にあるとは考えにくいが、先手を打って経営のスリム化に取り組んだのだろう。まずは、イメージ戦略時代はもう時代遅れとムーミンから離れ、次に若者は活字なんか読まないと紙から離れた。たぶん、そういう流れだったのだと思う。

☆とオバタカズユキ氏は多くの大学関係者が考えるような感想をのべてみたうえで、

全国に先駆けて紙の「大学案内」を捨てた東洋大学の勇気は讃えたい。東洋大学は、今では珍しくなった夜学(イブニングコース)を6学部9学科も抱えている。例えば、コストカットで浮いた経費をその維持にまわしてくれるのなら、私は拍手喝采である。

他では、やはり2014年度入試から、近畿大学と中京大学が紙の願書を廃止し、インターネット出願に完全移行している。東洋大学の2014年度入試が受験生集めで成功したら、この二大学はきっと「大学案内」も廃止するだろうし、後に続く大学があちこちで生まれることだろう。5年、10年後には、「大学案内のパンフを出してるって、情弱じゃね?」ともなりえる。

☆と本当のところは東洋大学の紙のパンフ廃止を全面的に称えている。そういう方向に他大学もなるだろうし、資源を有効活用する大きな一歩になると。

☆しかし、本当はもう一歩先がある。そのことについては、何も触れていないが、SNSを活用されている作家であるから、次のことは了解済み。

☆「学校案内」を廃止することによって、学生の情報収集はすべて「ログ(記録)」がとれる。Webマーケティングが可能になる。実はそちらにコストが置き換わっている可能性がある。

☆それでは、コストの有効活用にならないのではと思うかもしれないが、その逆。学生のニーズや、成長度合い(占いか?とユーモアを交えて紹介している)、嗜好性を理解したうえで、シラバスを組めるからだ。IRを仕掛けるインフラとして、Webに条件を揃えたのであろう。

☆それにグローバル戦略を遂行する準備として、英語だと言われているが、実はオンラインで何でもできる環境がベースとして大前提なのである。

☆それにしても、ハイテク時代に、ちゃんと思想にこだわっているところが奥深い。

遅まきながら始まった大学業界のIT革命。その第一歩目を、控え目でマイペースなキャラの東洋大学が、踏み出した。哲学者の井上円了は1887年、「余資なく優暇な者のために」東洋大学の前身の私立哲学館を創設した。一人でも多くの人に門戸を開こうと、哲学館の授業料を低く抑え、通信教育のような仕組みもいち早く取り入れた。その想いが、2014年に引き継がれようとしているのなら、すばらしい話ではないか。

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