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2015中学受験生のために【073】女子校アンサンブル 伝統校の良質教育の意味(5)

さて、高人気の山脇学園のプレゼンの番がやってきた。向こう100年を見据えた山脇ルネサンスを行っていることを高らかに謳った。しかし、向こう100年の社会の未来像は描かれていない。トレンドの新しい施設、新しい学習道具、プログラムを導入しているとしか響いてこない。

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なんという逆説だろう。三輪田のように本質を見抜いた教育より、トレンド重視の教育観に人気が集まるのだから。これが大衆化した中学受験の面目躍如である。本質などない。満足度に左右されるトレンドにこそ価値があるのである。これこそ山脇学園の本位に反して人気の高い理由なのかもしれない。

特に、「本校の特色は、教育施設でも教育プログラムでもありません。元気で明るい生徒です。・・・山脇学園にどうぞご期待ください」というトークは、そのことをはっきり映し出してしまった。というのも、施設やプログラムと生徒の人間力は一心同体であるのが、本物教育であり、それをセパレートする考え方は、ビジネス社会の観念であるからだ。

たしかにわかりやすい。これもまた大量消費時代の最後のウネリと読み解くことも可能だろう。そして20世紀型経済社会の終焉時を守っているという意味で伝統校なのであろう。

と思っていると、今度は跡見のプレゼンである。139年前に建学した創設者跡見花渓の物語を語り尽くした。山脇とは真逆の話である。しかし、内容も真逆。なぜなら、明治維新の政府の学校制度に翻弄されないような独自の学校を創ろうとしたという志を大いに語ったからである。明治人が描いた経済社会は、今のような略奪経済社会だけではなく、自然秩序型経済社会も想い描いていた。

多くの私学人は、この経済社会建築のための教育をした。そこを強調したプレゼンは、古くて新しい。というのも21世紀経済社会はシェア資本主義経済であり、ケインズも夢見た自然秩序型経済のイメージがやっと実現しつつあると言われているからである。跡見学園の話はそこに根付いているのだ。またまた驚愕したが、保護者は、表層的意味で伝統校として認識しただけだっただろう。残念である。

最後は、1847年の京都学習院開校以来の悠久の歴史を有する学習院女子のプレゼン。しかしながら、実際にはその伝統は近代にルーツがあるのではなく、日本誕生以来の永遠性に位置付けられる。学習院女子のこの突出した伝統について語るには、近代以前の情報が少なすぎる。プリンセスの学校という以上でも以下でもない。最強の伝統校であると言うほかあるまい。

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