聖学院がPBLにおいて先進的なわけ(2)
☆この考え方の発想は、伊藤豊先生も当然共有しているが、伊藤先生は「学力の氷山モデル」を使って説明する。実はエンゲストローム自体、自分のノットワーキングの基本形である三角形モデルの上位構造「主体―媒介ツール―対象」を氷山の一角にたとえている。
☆聖学院の中学入試「思考力テスト」の対策講座である「思考力セミナー」のときは、この氷山モデルで聖学院の考える「思考力」の説明がされるが、これは、チーム高橋がアレンジしたエンゲストロームのモデルが貫徹しているということを示唆している。
☆さて、「PBLを実践しながら、大学は教育を変えられない。しかし聖学院は教育を変えられる。どうしてこんな違いが生まれるのであろうか」という問いに戻ろう。
☆その回答はこれから折に触れ考えていくが、2008年以前のネットワーク論や市場発想は、まだまだハイアラキーを内包している。そのハイアラキーが一つの大きな矛盾をつくっているし、それが近代の影の部分の名残であることは言うまでもない。
☆エンゲストロームの三角形モデルやノットワーキングをベースにする「拡張的学習」をPBLがで実現すれば、そのプログラムは世界を変える。
☆エンゲストロームは、拡張的学習によって、それが阻まれる壁や矛盾が露わになることを本位としている。あとは、それを解決していくから世界は変わるのだという。まあ、そう簡単なものではないのがまた現実であるが。
☆ともあれ、この振り返り作業を、大学は組み入れない。もちろん、学生の成長には組み入れる。しかし、世界システムそのものにPBLや拡張的学習を組み入れない。すると、現状の世界の矛盾を無自覚に受入ながら、それに対応できる人間として自分を変えていっていることになる。
☆このとき、自分が変わるということは成長であるということになるだろうか。世界と自分の双方が変わる影響を与え合ってはじめて成長したといえるのではないだろうか。
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