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子どもの日:未来を見通して子どもの今を考える(1)

☆現代は、一体何が起こるのかわからない不確実で不安定な時代と言われている。しかし、それはいつの世も同じで、むしろ、これほど多くの人々が用心深く未来を見通そうとしている時代もないのではあるまいか。そしてにもかかわらず、それでも未来は不確実で、何が起こるかわからない。

☆だがそうは言っても、歴史を振り返れば、大きな未来への流れは速くなったり淀みながらも、確実に進んでいる。当面は開きつつある格差も、修正の方向に流れる。それには、今までのように略奪資本主義がほかの社会主義や独占資本主義などにとって代わられるユートピアの実験やその反動が行われるのではなく、資本主義自らが共生資本主義に転換するという離れ業をやってのけることによってではあるが。

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☆果たして、それがいかにして可能なのかは、にわかにはわからないが、略奪資本主義では、先進諸国の政治経済が停滞低迷衰退を突破できないのは確かであろう。そもそも化石燃料には限りがあるのだから。

☆突破するには、おそらくまず企業が根本から変わらなくてはならない。国家や政治は、それを促す法整備をするにすぎず、当然法律も合法的な略奪資本主義の正当化を改めなければならなくなる。

☆それだけでも、ワークシフトは起こるし、経済は活況を帯びてくるが、ともあれ、そうなると、今の子どもたちの将来の仕事も、ワークシフトを起こすことになる。

☆このような未来を見通すことによって、実は中原淳氏と溝上慎一氏の共同編集著作「活躍する組織人の探究 大学から企業へのトランジション」(東京大学出版会 2014年3月)は、さらなりリアリティが増してくる。

 ☆本書で中原淳氏はこう予想する。

企業の観点から見た「大学時代の経験」とは、合理的な採用・選抜等の人材マネジメントを実施していく際の情報リソースのひとつである。大学がレジャーランドと揶揄されていたかつてのとは異なり、今や大学における大学生の学びの経験は、徐々に変化し、多様なものになってきている。大学によっては、成績評定の厳密化や達成度調査の経年実施など、評価の観点が強化され、さらには、その教育内容も、アクティブラーニング、プロジェクト学習、キャリア教育、職業統合学習(Working integrated learning)、サービスラーニング、海外留学の必修化など、より主体性を必要とし、また実践的で職業関連性の高い内容が徐々に導入され、多様なものとなってきている。このような背景を踏まえ、大学時代、学生がいかに学び、どのような人々と出会い、何を実践してきたのか、という「大学時代の学び・経験」は、企業が人材マネジメントをおこなう際、これまで以上に有望な情報リソースのひとつになるであろうと考えられる。

☆保田江美氏・溝上慎一氏は、第7章の研究報告である「大学時代の経験」から見て、こう語る。

これまで、先行研究においては、大学時代のキャリア意識が卒業後の就労に影響を及ぼすかどうかはほとんど検討されてこなかった。本研究の結果は、大学時代のキャリア意識が大学時代の自主学習の主体的な学修態度に影響を及ぼすという大学生を対象とした先行研究を同様に認めつつ、かつそれが初期キャリアとしての組織社会化に影響を及ぼすという新しい知見を示唆する内容となった。このことは大学生の学びと成長の観点から進める大学教育改革が、単に大学教育内だけの成果にとどまらず、さらに学校から仕事へのトランジションとしての成果にもなることを示唆しているともいえる。

☆つまり、高学歴と年収の多寡は、相変わらず相関はあるものの、徐々に、どの大学を卒業したかというシグナルだけではなく、大学で何を学び、どのようなネットワークを形成したかが、重要な人材マネジメントの情報リソースになるということ。

☆それだけではなく、さらにそのような学習経験を積み重ねた人材は、組織社会化に最もなじみ、その結果、ここからが重要なのだが、会社のイノベーションの貢献において潜在的能力を組織参入後、顕在化し、頭角を現してくるというのである。

☆従来は、どの大学を卒業したかだけが重要で(そうではないということになっているが、実質はそうであることは判明している)、採用後、会社がOJTやメンター制度で、人材育成をしていくからよいということになっていたが、今後は、大学時代の学習・経験の情報リソースを活用することにより、会社存続のための人材再生産をするだけではなく、会社のイノベーションを果たす人材を新たに育成できる確率が高くなるというのである。

☆それが私立中高一貫校にどういう関係があるのか?それならば、そういう大学に入ればよいのだから、高大学合格実績の学校を選ぶという従来の選択指標でますますよくなるではないか。

☆ところが、保田・溝上の研究は、高校も射程に入っている。そして高校と大学でのプロジェクト型学習や主体性の高い経験が革新的企業において将来に有益な影響を与えるであろうことを予想させるデータも扱っている。

☆ゆえに、今後「大学時代の学習・経験」と革新的企業への就職は、「中高時代の学習・経験」にも及ぶことになる。

☆だからこそまた、企業の選抜・採用システムのみならず、それに対応する大学改革に伴う大学入試改革が2018年に本格化しようとしているのである。

☆このような未来への見通しに基づいて、中学入試における学校選択の情報を収集することは、ますます重要になっていくだろう。

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