小中一貫のもたらすコト
☆毎日新聞 6月3日(火)2時31分配信 によると、
文部科学省は、市区町村の判断で公立の「小中一貫校」を設置できる制度の導入に向けて検討を始めた。現在、一部の自治体が小中一貫校を「特例」として導入しているが、制度化で普及拡大を狙う。現行の小学校6年、中学校3年の「6・3制」だけでなく、9年の義務教育期間を「4・3・2」や「5・4」と弾力的に運用し、地域の事情などに合わせた教育課程(カリキュラム)の編成が可能になる。政府の教育再生実行会議が議論中の「学制改革」提言にも盛り込まれる見通しで、同省は来年の通常国会に学校教育法の改正案を提出する方向だ。
☆小中一貫校の必要性は、次のように言われているようだ。
①6・3制の場合、不登校などの「中1の壁」が課題になっている。
②最近は小学生の心身の発達が、早まっており「6・3」の区切りの弾力化を求める声が強まっている。
③文科省の小学校英語を小学5年生から正式教科にする方向性に合わせ、小中一貫教育によって系統性・連続性を重視した英語教育の構築模索。
④小学高学年段階から中学校同様の教科担任制の導入模索。
⑤少子化に伴う小中学校の統廃合も進むことが期待。
☆しかし、一方で、
⑥小中一貫校と従来の小学校や中学校との間で転校した場合、学年やカリキュラムがずれて対応しにくい問題がある。
⑦9年間子供同士の人間関係が固定される課題。
☆制度論では、①②③は解決できない。不登校の問題は6・3制の問題ではなく、コミュニケーションの質の問題である。もちろんコミュニケーションの質は制度によって規定されるが、その制度は6・3生という制度ではなく、教育制度全体の枠組みの問題である。
☆心身の発達を考慮した思春期学が学習指導要領にないし、なくても心身の発達理論を教育の中に浸透させる人材育成制度があればよいが、それは期待できないから、変わらないだろう。
☆大学入試の英語が変わらない限り、小学校先取りカリキュラムになるだけで、学習指導要領が根本から変わるわけではないから、何も変わらない。
☆⑥の問題はとりあえずあげてみたのだろう。小中一貫の方が促進教育になるから、小中一貫から6・3制に転校することは全く問題ない。その逆の転校はまず考えないだろう。つまり、ここの本当の問題は、階層性が促進するということである。
☆⑦人間関係の固定は、都会ではあまり考えられない。塾など様々な機会があるからである。地方においては、そもそも少子化の影響で、地域がすでに固定化しつつあるだろう。むしろICT化やオンライン授業でそこは再構築すべきだろう。
☆というわけで、④と⑤が小中一貫校の準本当のねらいということ。
☆すると、ますます教科色の濃い流れができる。グローバルで学際的な雰囲気はなくなる。
☆また、財政的な切迫感が学校教育に色濃く漂う。要はしかたがないのだと。
☆こうなると親は、公立学校教育から離れる。ICTを使った外部の学びを考えるし、多様な学びの機会を探すだろう。
☆学習塾と私立学校の新しい連携が生まれる可能性がある。小中学校の通信制が認められれば、一気呵成に公立学校は無化してしまう。
☆欧米と比べ、日本は最も損得勘定功利主義の価値観の国。福祉国家化は考えにくいのは、民主党政権の失敗で明らかになった。徹底した市場主義の進行が予想される。
☆市場主義の在り方こそ考えなければならない。従来は市場主義の多様性は不問に付して、十把一絡げにくくっておいて、市場経済一般を批判し、別の解決策をつくって、そこに税金を注入してきた。合法的に税金を一部の利益のために活用するというやり方。このやり方がそろそろ壁にぶつかっているということが、今回の小中一貫校制度化で明らかになるコトだろう。
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