ブラウン大学のソーシャルアントレ
☆ブラウン大学のBAに在学中の熊平智伸さんが、興味深い活動をしている。この夏、アショカのワシントンDC本部でインターンをしているというのだ。アショカは全世界に3000以上のフェローを持つ世界最大の社会起業家ネットワーク。
☆そこでのプロジェクトの様子や状況などをブログで論じている。
☆おもしろいというのは、このような活動のこともさしているが、熊平さんの市場や金融に関する新しい考え方が実におもしろい。常々新しい資本主義はいかにして可能かと考えているが、こういう考え方もあったのかと。
☆収奪資本主義という社会問題を市場や金融という収奪資本主義を支えてきた仕組みで解決してしまおうという野心がそれ。
☆収奪は、情報格差や私財の格差が拡大再生産される仕掛けだが、金利ゼロ時代という利潤ゼロ時代がもうすぐ到来する今だからこそ、毒をもって毒を制することができそうで楽しくなってしまう。
①私有財産制を認めつつ、相乗効果を生み出す方法。もしかしたら貨幣価値よりも贈与価値に重点を置くかもしれない。しかし、その前提は私有財産制。
②民間企業による生産は、社会問題を解決する製品の生産に限られる。自然と社会制度と脳末端神経系の包括的な循環を生み出すものであれば、すべて社会問題を解決する製品である。在庫が出るようなものは、循環を壊すから、それは作らない。ゼロサムというのはそういうことか。
③ITによって、生産手段を自ら有した労働者は創造者にシフトし、もはやすべてが業務委託契約になるから、市場の原理になじまない支配―被支配の関係は無化される。労働者は道具化からソフトパワー化されるってわけだ。
④市場競争といいながら、その背景に情報隠ぺいによる配分操作があるのが収奪資本主義の存在理由だが、その情報隠ぺいを許さないチェック機構がソーシャルアントレプレナーのコラボによってできあがる。市場競争から市場共創に転換。
☆夢のような無血革命。それが 熊平さんがリサーチ中のImpact Investing(=社会問題や環境問題の解決と経済的なリターンを目的として、企業や、団体、ファンドに対して行われる投資)によって達成されるかどうかはわからないが、そんな期待を抱かせる未来の人材がいるということは確かである。同サイトで、熊平さんはこう述べている。
世界有数の首都であるワシントンD.C.には、アメリカ議会や大統領府、世界銀行やIMF、FRBといった金融機関、スミソニアン協会やジョージタウン大学といった研究機関など、世界中の知と権力が集中している。夏になると、アメリカの大学生や大学院生が大挙して2ヶ月から3ヶ月のインターンシップをするためにやってくる。これは、日本の就活の「ポテンシャル採用」とは対照的に、アメリカの就職ではその分野で学生時代に基本的な経験を持っていることが求められるからだ。政治や政策、法律、開発経済、国際協力などに興味のある学生は、こぞってワシントンで経験を積もうとする。
☆なんだ結局、権力の中枢で働く準備をしているだけではないかと思われるかもしれない。しかし、それは違うのだ。そのように思ってしまうのは、性悪説という前提にたっているからだ。
☆ここに集まる学生は、ブラウン大学のようなアイビーリーグやリベラルアーツ大学の学生が多い。基本彼らは、man for othersの精神を身につけている。
☆中世のトマス・アキナスが、市場の原理の道を拓いてしまった。利子OK、利潤OKの正当性は、黄金律にあると。この夢はJ.S.ミルやシュンペーターに受け継がれるも、いつの間にか、交換の正義は、黄金律を捨てて、実証主義に至ってしまった。
☆それが今、パラドキシカルに、エントロピーの問題かもしれないが、金利ゼロ、利潤ゼロという時代に。市場の原理で社会問題を救おうとした聖ドミニコの弟子たちの夢が今実現しようとしているのかもしれない。
☆マックス・ウェーバーのパラドクスは、資本主義がプロテスタンティズム倫理に黄金律を無化する装置を埋め込んだのを見逃していたから生まれてしまった。そこに今ソーシャルアントレプレナーたちは気づいたのだ。「あなたがしてもらいたいことを他者にもしようよ」と。
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