首都圏模試センター 質の大転換 (3)
☆前回「この新たな私学の位置づけカテゴリーを生成したことが、首都圏模試センターの質の大転換を意味するのである」と指摘して閉じたが、さて、どのような新しい私学の位置づけカテゴリーが生成されたのだろうか。
☆この2000年に公開した図は、新しく塗り替えられるということなのだが、軸に関しては使えるのである。文科省が示した大学入試改革の図も、このカテゴリー表をなぞるようにできている。
☆この文科省作成の図の横軸は知識の進化、縦軸は難易度となっている。これはちょっと考えるとおかしい。知識の進化度は難易度を表すはずだ。これではショートしてしまう。
☆もちろん、ショートはしない。するとこの難易度は、知識の進化度とは違う。つまり、偏差値とは違う指標を意味している。それは一体なんだろう。
☆これこそ、来年から改訂作業に入る学習指導要領の準備として行われたリサーチで、追究されていたタキソノミーである。これについては、実は東洋経済最新号でも扱われている。一般読者は、気づかないかもしれないが。
☆基本はブルームのタキソノミーであるが、それを改善しているマルザーノがアレンジしているタキソノミーである。しかし、これらをブルーム型タキソノミーと呼んでおこう。
☆なぜ、文科省がブルーム型タキソノミーを研究したかというと、欧米の21世紀型スキル、IBの評価、アクティブラーニングなどで活用されるルーブリック、CEFR基準、コールバークの道徳発達段階、ハーバーマスのコミュニケーション段階、エリクソンの発達段階、ピアジェの認知発達段階などの基礎はすべてブルーム型タキソノミーと同じ発想だからだ。要するにヘーゲルのダイアローグ発想ということ。
☆私のカテゴリーも文科省のカテゴリーも、このブルーム型タキソノミーの知識の領域を横軸にして、それ以外を縦軸にしている。
☆上記のルーブリックは、IBのTOK(知の理論)のプレゼンのモノサシであるが、これは表現上横になっているが、カテゴリー表の縦軸だけで作成されている。それはIBには偏差値という発想がないからだけである。
☆さて、首都圏模試センターが作成した「21世紀型教育キーワード集」には、「最近接発達領域」と「ルーブリック」というキーワードが載っているが、このルーブリックはブルーム型タキソノミーのバリエーションである。ともあれ、思考を評価する軸は「ブルーム型タキソノミー」で構築し、それをプログラム化した時に、「最近接発達領域」を活用する。そうすると21会校が実施している思考力セミナーやPIL×PBL型授業のシラバスが出来上がる。
☆これについて工学院大学附属中高校長である平方先生は、工学院の実践例について少しふれた。
☆「工学院思考コード」を上記のようにカリキュラムイノベーションチームを中心に作成し、PIL×PBL型授業のプロトタイプ実践ーリファイン会議を毎月行っているという。これも、基本上記の私のカテゴリーと文科省のカテゴリーに発想は似ている。
☆しかし、平方校長は、これに文科省の図を重ねて見せた。
☆すると、縦軸が文科省の想定では、工学院思考コードのCレベルに到達していないことになるというのだ。ここのC領域は、CEFR基準のC1C2だし、ハーバーマス×コールバークの発達段階でいえば、「脱慣習段階」である。
☆IBのTOK(知の理論)やイギリスのAレベル、米国のAPの高次思考の領域である。
☆平方先生は、もし本当にグローバル教育をやるというのなら、Cレベルまでやるのは当たり前だろうと。
☆こうして、2000年に作成した私のカテゴリーは次の図のように崩壊する。
☆つまり、麻布や21会校は、実際には上記の図のように「ここは従来は見えなかった21世紀型教育領域」に位置していたのに、クオリティスクールやエクセレントスクールに閉じ込めていたことになる。
☆縦軸が3Xだとするならば、IB型思考のレベルにまでいかなければならないのは当然だが、2000年段階では、IBのTOKについて調査不足だった。
☆最先端学習プログラムを創るために、1999年までにイギリスのウェールズのインターナショナルスクールの視察に行ったり、ロサンゼルスのチャドウィックスクールやローリングヒルズなどのプレップスクールの視察に行って、たしかに今でいうPIL×PBL型授業をみて感動していたのだが、「IB型思考」と所与の情報と課題の枠内で考えればそれでよい「枠内思考」との差異を考えていなかった。
☆だから、多くの先生方も、今の試験だって考えない問題なんてないだろうとよく言われるのだが、それはIBのTOK、CEFRなどの発想とブルーム型タキソノミーのミックス発想を体験していないのだから、気づかないのは当たり前である。
☆しかし、首都圏模試センターはここに気づいてしまった。カントがやったようにコペルニクス的転回に突入したのである。
☆どういうことかというと、太陽が地球を回っているという見方を、地球が太陽の周りりをまわっているという見方に変わっても、太陽や地球が変わるのではなく、思考方法が変わるのである。カントがやったことはそれだ。
☆だから、首都圏模試センターも、テスト作成やシステムを変えるのではなく、発想のコペルニクス的転回をやってのけたのである。
☆まずはこの質の大転換からスタートしたのが首都圏模試センターの偉大なところである。発想が変わらないのに、目先のシステムを変えても元の木阿弥だからだ。
☆ここに突入するからこそ、ICTがカリキュラムイノベーションに必要になる。このことに気づいているICT企業が、日本にはない。IRTの発想を持っているICT企業でなければ、これは不可能である。
☆端末やネットワークを売るだけでは、21世紀型教育をサポートできない。ぜひICTで教育を支援して利益をあげようと思ったら、10月12日は大きなビジネスチャンスとなるだろうから、参加してほしい。すでに、それに気づいている高感度なセンサーを有している方々は、申し込んでいる。
☆もちろん、子どもの教育環境に対する高感度なセンスを持っている保護者も参加申込みをしてくださっている。
☆21世紀になってっも、まだまだ生徒を自己否定感に追い込む20世紀型教育が闊歩している。未来の留学生のために21世紀を拓くには、このようなイノベーティブな学校とステイクホルダーの出逢いが必要であり、首都圏模試センターのセミナーと10月12日(日)の21会カンファレンスは、来春振り返ったとき、エポックメイキングな機会だったということになるだろう。
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