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2015教育政策fウォッチ[001] 考える道徳へ転換

☆毎日新聞 2月4日(水)22時14分配信  によると、

文部科学省は4日、小中学校の教科外活動「道徳」を格上げし2018年度から本格導入する新教科「特別の教科 道徳」の学習指導要領改定案を公表した。現行の指導要領を踏襲しつつ、いじめ問題への対応を重視し「公正、公平、社会正義」を小学1年から扱う。また、討論しながら課題の解決策を探る「課題解決型学習」を取り入れ、「教材を読む道徳」から「考える道徳」への転換を図る。3月5日まで意見公募した上で今年度内に改定。夏ごろまでに教科書検定基準などを作成し、小学校は16年度の検定を経て18年度から、中学は17年度検定で19年度から、教科書を使った授業が始まる。

☆迂遠な表現であるが、この動きは、すでに東大とNHKを中心に行われてきたサンデル教授の「白熱教室」の小中学校版と置き換えれば、話ははやい。

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☆テキストは、サンデル教授のベストセラー。豊富な具体例から抽象的な政治経済的な正義判断へと昇華する。この本をたたき台に教科書をつくるということだろう。

☆したがって、道徳と言いながら、哲学授業、つまり思考力養成授業ということ。授業スタイルは、課題解決型というわけだからアクティブラーニング。サンデル教授の対話術習得が、教員研修の目標となるだろう。

☆水面下でどのように動いたのかわからないが、要は以前からあった道徳のプラグマティズムの潮流が、粘り強く文科省に働きかけたということか。この潮流はコールバーグ=ハーバーマスの道徳発達理論がベース。

☆アンナ・ハレントの「人間の条件」も含まれる。

☆現場ではジレンマ道徳という形ですでに市民権を得ているもの。

☆教科化されるわけだから、評価の問題がでてくる。

子供の評価は「学習状況や道徳性にかかる成長の様子を継続的に把握する」とし、数値ではなく、プラス面を記述式で評価する。ただ「道徳性」の評価法が確立されていないため、同省は専門家会議を設置し、今秋までに具体例を示す。教科書を使った授業は18年度からだが、新指導要領に沿った授業を先行実施できるように来年度中に教員用の資料を作成し、配布する。

☆道徳は評価できないなんてすぐに反論がでるが、この記述は「エンパワーメント評価」を入れるよということ。ネガティブにできないことをあげつらうのではなく、できることを伸ばすことによって、できなこともできるようになるという評価。すでにシリコンバレーのIT企業やアジアを中心に活躍しているソーシャルアントレプレナー、都市計画をデザインする自治体などが活用している評価法。クリエイティブエコノミーとかクリエイティブシティとかいったとき、この評価は必須。

☆そして、アクティブラーニングにおけるルーブリックの発想は、ここにつながる。つまり、スタンフォード大学のフェターマン教授がルーツ。

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☆サンデル教授にしろハーバーマスにしろ、コールバークにしろ、アレントにしろ、フェターマン教授にしろ、共通しているのは、彼らはクリティカルシンカーであり、発想は社会正義をベースにしているということ。

☆こんな背景の道徳教育ができたら、そりゃあリベラルアーツの基礎である。なぜそんなことが必要なのか。もちろん、いじめや不登校の原因になる抑圧的空気をなんとかしなければというのは大きい。

☆しかし、それだけはない。もはや海外から人材を確保しなければやっていけなくなる。先進諸国は移民の問題を抱えているが、日本はまだ遅れていて、それがゆえに何がおきているかというと、「道徳」を一つのチェックポイントにしようという新しい移民政策である。

☆だから今後は医療関連の人材、教育関連の人材のワーキングエリアを開放しようという動きになる。

☆このエリアは、医療倫理や学校道徳をベースにする。ところが多様性の動きは、一つの価値観を押し付けることができない。そこで、≪グローバル人材育成の視点から、低学年の項目に「他国の人々や文化に親しむこと」も加えた≫ということになる。

☆文科省がどこまで包括的に認識しているのかはわからない。おそらく縦割りだから、いろいろな部署が勝手に動いているのだろう。

☆しかし、トマ・ピケティ!なのである。歴史とは極めて狡知なのだ。

☆あるいはアダム・スミス。道徳感情は、結局市場の原理によって最適の正義を選ぶのである。

☆あるいは量子力学なのである。不確定性でありながら、日常空間は決定できるというニュートン発想は生きているのである。

☆つまり、ジレンマやパラドクスは、解決するのではなく、自由に発生する状況をつくると、解決策が生まれるという構図。サンデル教授の対話術の極意であろう。

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