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新6年生のために(16) 武蔵の入試問題「社会」の魅力と問題点

☆武蔵の今年の社会の入試問題は、いつもながら魅力的だった。ただ、いつも気になるのは科目別の合否の分布。同校は公平にもきちんと公表している。

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☆分布表をみて、誰もが感じるのが、60点満点で83%以上できていても合格していない受験生もいるし、42%できていて合格している受験生もいるというという点。

☆社会科だけできてもだめで、4教科総得点だよ、だから何も問題ないよということだろう。しかし、武蔵の社会の問題は、社会科の問題であって社会科の問題ではない。「頭のフェイント」がはいっている。

☆まず、長文のテキストとグラフや表など非連続テキストが情報として提供されている。

☆一般の社会科の入試は、この文章テキストに沿って問題が出題されるし、グラフや表が端的にどんな特色を表しているのか問う。

☆武蔵の問題も、自分の知識を長文テキストやグラフや表の非連続テキストに重ね合わせて解く部分がほとんであるから、社会科の入試問題といえばそれまでのように思われる。

☆しかし、次の問いは、果たして知識だけで解けるだろうか?

問2 山陽道が古代の中央政府によって特に重視されたのはなぜですか。

問4 幹線道路の整備は、江戸幕府の支配にとって必要なものでした。それはどうしてですか。

問5 明治政府が鉄道を陸上交通の柱と位置付けたのはなぜですか。政府によって行われた近代化政策との関連を考えながら書きなさい。

問7 第二次世界大戦後、鉄道と自動車交通は、それぞれどのように変わっていきましたか。図2・図3・図4を参考にして書きなさい。

問8 問題文にあるように、近年、さまざまな問題が現れていますが、交通網の整備はそれまでと変わらないやり方で進められています。交通網に関して近年現れてきた問題と、これから求められる交通網の整備のあり方について、君のしっていることをまとめて書きなさい。

☆教科書や参考書に書かれている記述を記憶していて、それをつなげればできるかもしれない。

☆しかし、武蔵は長文テキストの最初のパラグラフでは、「すべての道はローマに通じる」という格言からはじめている。ローマ帝国が道路網を整備していった理由について記述されている。

☆これは、道路網や交通網と国の関係のモデルあるいはプロトタイプを示している。日本の道路網と時の権力との関係史の話の前に、ローマなのだ。

☆ここは結局「都市計画」のデザインの視点―軍事、政治、経済、情報、労働力など―を「理解」し、それを日本に「適用・応用」する思考力がためされている。しかも、歴史によってその視点の背景が変わるから、時代の「分析」が必要になる。

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(武蔵の社会科の問題は、ブルーム型タキソノミーの6つのレベルすべてを問うている)

☆また、ローマの帝国と道路網の関係から都市デザインの視点を抽出する作用は、実は「メタ認知」というクリティカルシンキングの視点を考える思考作用である。

☆さらに、最終問題で、自分の体験をもとに考えよとクリエイティブな「自己決定」を要求している。

☆この一連の思考作用とレベルの上昇は、もはや社会科の問いを逸脱し、思考そのものについて問うている。

☆社会科のテストであるのに思考力テストでもある。これを「頭のフェイント」という。才能児を見出す問いかけのシステムなのだ。

☆にもかかわらず、80%以上できているのに、合格できない生徒がたくさんいる。彼らは、社会科の力だけではなく、思考力の才能があるかもしれないのにだ。

☆武蔵の社会の入試問題は、かくして「頭のフェイント」が効いていて魅力的だ。にもかかわらず、その魅力に十分呼応している生徒を合格させていない可能性がある。

☆4教科合計点で合否を決めるのか、4教科を統合する思考力で合否を決めるのか、つまり、デノテーションかコノテーションか、熟慮すべき問題ではないだろうか。

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