21世紀型教育における帰国生・留学生の意味(1)
☆年に幾度か、鈴木裕之氏(スタディエクステンション代表/海外帰国生教育研究家/JOBA帰国生大学入試コース責任者)に帰国生の大学入試の小論文対策ワークショップを頼まれる。どれほど役に立つかわからないけれど、対策というよりは、考える視点を増やしたり柔軟にするきっかけづくりとして呼ばれるのだと思っている。
☆だいたいいつも合格するための小論文の3つのポイントを最初に問いかける。1枚のポストイットに1ポイント書いてもらう。次に、ペアワークで、情報交換し、ペアを変えていく。
☆細かい書き方に注目する生徒やざっくり理念を並べている生徒もいておもしろい。
☆どれも正しいが、それを3つにわけるにはどうしたらよいか。問いかけると整理をすると、当然ながらすぐに反応。
☆チームに分かれて、ポストイットを並べる議論が始まる。ウェッブマップ、ボックスチャート、クラゲチャート、マトリクスなど図は書いていないものの、並べ方はそんな思考のツールを使っている感じだ。
☆しかし、これではなかなかまとまらない。それは当然だ。これらの図は思考を拡散するときに有効だが、収束させるには不向きだからだ。
☆そこで、対話をさしはさむ。昨日小論を描いたお題が「デモクラシーが目指す平等と個人が自分の才能を活かすアイデアや活動は互いに相いれないか?」ということについて考えたということだから、このお題の説明をみんなで語り合ってみた。
☆その段階ですでに書く方向性が見えているわけだが、それは思考を拡散している対話だ。今度は逆に収束してもらうために、この問題は、他の問題にも実は応用可能で、そこがわかれば、ほとんどの小論文を書く戦略は見えてくるねと。で、それはどうなの?
☆というわけで、デモクラシーや才能、個性を、どんどん他の言葉で置き換えていく対話を続けた。他者と個人、社会と個人、世界と自分・・・。最終的にはそんな感じの一見シンプルな言葉に置き換わった。
☆そしてデモクラシーについて書きなさいという問いは出題されるだろうか?自分について書きなさいという問いは出題されるだろうかとまた対話してみた。
☆もちろんそのような問いは存在するが、帰国生の大学入試の問いとしては出題されにくい。そこまで語り合っていくと、出題者の問いの戦略がやっと見える。結局ジレンマやパラドクスの関係をどう解決するのか考え方を問うてくるのだと口々に。
☆この収束への対話は、ピラミッドチャートの適用。もちろん、そんな絵は描かないけれど、同義語の具体性と抽象度の階層構造を脳内で行っているわけだ。
☆それともう一つ座標系。結局、パラドクスを解く方程式を創るための軸を自ら立てることだったのだ。その方程式ができれば、あとは具体的な事象を代入すればよいだけ。応用適用が可能になる。
☆もっとも、万能の統一方程式が完成するわけでないから、その都度方程式を創らざるを得ず、大変なのだが、ここまでのプロセスを自問自答して構築できるようになるトレーニングがなされているのが帰国生や留学生の特徴だ。
☆日本の教育というか20世紀型教育は、この方程式は先生が独占していて、そこに代入する事象とその解を憶えるのが生徒。しかも、その方程式が汎用性が低い場合悲劇的だ。
☆というわけで、21世紀型教育は、その意味で帰国生や留学生が、現象や事象の関係性を座標系で方程式にしてしまえる学習過程を他の生徒にも広く浸透させることがミッションとなる。
☆だから、21世紀型教育を創出するSGT(スーパーグローバルティーチャー)といっしょにワークショップやミーティングをしていると、どんどん方程式を創っていく議論になり、その方程式を使って、学習プログラムが構築されていく。
☆20世紀型の先生方と話していると、方程式のある点のできふでき、質のよしあしに感動したり落胆したりという話になってしまう。それはそれで、たしかに感動もするし改善点もはっきりする。しかし、その点以外にも見るべき現象や事象がある。方程式全体のクリティカルチェックが本当は重要。
☆簡単に言えば木も見て森も見ることが大切ということなのだろうが、そのシステムこそ教師も生徒もいっしょにアクティブラーニングをすることなのだ。
☆帰国生・留学生の学びの体験は、日本の教育が21世紀型教育に舵をきるときに大いに勉強になる。帰国生や留学生がたくさんいる学校、彼らが知的好奇心でワクワクしている学校。結局そのような学校の21世紀型教育の質が高いということになる。
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