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聖学院が御三家を超える時が来た(1)

☆「御三家の終わり」。これは御三家という「言説」が象徴する勝ち組負け組中学受験市場=エゴ市場の終わりを示唆するフレーズだ。今中学入試市場は、子どもの未来を果敢に守る教師、そこで目をかけられ手を離されて未来を予測しながらも想定外のことが起こる未知なる世界で、自分のみならず他者と協力しながら生き抜いていくフォースが育つ中高一貫校を探す市場=エコ市場が30%にもなっている。

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☆つまり、中学入試市場は、エゴ中学受験市場からエコ中学入試市場にパラダイムシフトしようとしている。「御三家の終わり」とはそのパラダイムシフトを象徴する言葉だ。

☆御三家、特に開成、麻布は、実は自ら巧んだわけではないが、エゴ市場社会にかつがれ、外堀内堀を埋められて、特定の塾からの生徒でいっぱいになっている。その塾の基本方針は個人主義でありリバタリアニズムで、強いものが勝つ。偏差値の高い学校が良いという優勝劣敗の発想だ。

☆その強烈な優勝劣敗エゴ市場は、中学入試市場の16%も占めている。ここは、エゴからエコへのパラダイムシフトが起きても最後まで残るだろう。

☆私がここでいいたいのは、その特定の塾の方針の是非などではない。御三家が、無防備にもそこに占拠されて多様性を失ったことに対する危機感であり、それがゆえに「終わり」なのだ。

☆「御三家」は相変わらず、大学進学実績を出すだろうし、偏差値も高いだろう。しかし、共創的社会を創る志をもった創設者の精神は喪失し、リバタリアニズムの牙城と化する。もっとも東大が、推薦入試のように、一つの学校から東大に進学する人数枠を決めたらどうなるだろうか?そんなことはあり得ないのだろうか?

☆東大が欲しい人材は、偏差値優秀者ではない。本当に優秀な才能者ではないだろうか?全国にいる才能者を集める高大接続システムをくみたてることは、東大にとってはもっとも簡単なことのはずだが・・・。

☆とにかく、麻布のように、リベラルアーツを重視しつつも、それは土曜日だけの話であり、あとは依然教科主義であり続ける限り、リバタリアニズムの集積場となるのは時間の問題だ。

☆開成は、もはやそのリベラルアーツは、体育祭やボートレースなどの文化資本的象徴としてしか存在せず、授業は徹底的に予備校化している。もちろん、初代校長高橋是清は別の意味であるが、それを校是として掲げたから、開成がパラダイム転換するのは難しい。かくして、リバタリアニズムの完全な集積場となったのである。

☆一方、麻布の創設者江原素六の志を共有した、内村鑑三、新渡戸稲造と同世代の石川角次郎もまた、彼ら同様≪私学の系譜≫として、リベララルアーツ学校を創った。それが聖学院である。石川角次郎自身は開成から東大に進み、当時の東大初綜理加藤弘之の「優勝劣敗」講義に反論を展開した。もちろん、聞き入れられなかったから、日本の近代の影が忍び寄るのだが、なんとかその影を払しょくすべく、米国に留学して学び、帰国後聖学院の初代校長に就任。

☆優勝劣敗という近代の影を払しょくし、“Only One for Others”という共創的エコ社会を創る人材育成に取りかかった。

☆聖学院は、その、“Only One for Others”というリベラルアーツ教育の理念でもある志を脈々と継承している。

☆リベラルアーツを大切にしている私立学校はたくさんある。残念ながら公立学校にはない。何せ学習指導要領にリベラルアーツ科はないので、しかたがない。

☆それはともかく、リベラルアーツ教育を男子中高一貫校で全面展開している学校は聖学院以外にはない。

☆リベラルアーツ教育は、まずは、“Only One for Others”の精神なくしては、いかにアクティブラーニングを行っていても、それはフェイクだ。とにも、この本物リベラルアーツ教育で、大学進学実績も伸ばしていっているのが聖学院だ。メディアも毎年取り上げている。

University of Connecticut
University of Washington
albright college
muskingum university
susquehanna university
Humber College
Yukon College
中國文化大学

☆そして、上記のように、コネチカット大学やワシントン大学のような名門大学やオルブライト大学のような有名リベラルアーツカレッジなどにも進学している。

☆これが意味するコトは何か?2020年大学入試改革は、リベラルアーツ教育が直結する高大接続システム再構築の話なのだ。リベラルアーツ教育は大事だが、大学受験勉強も必要だ。二兎追わざるを得ないとしてきたのが麻布である。

☆ところが、世界標準の大学進学のシステムとは、リベラルアーツ教育=21世紀型教育がストレートに大学入学準備教育になるということを意味する。

☆聖学院が御三家を超える時が来たのである。

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