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≪私学の系譜≫面目躍如!私立学校初任者研修北海道地区研修会始まる。

☆昨日8月5日(水)から「平成27年度私立学校初任者研修北海道地区研修会」が始まった。7日まで3日間実施される大規模な研修。参加対象者は、北海道の私立中学・高等学校の新規採用教員及び新規採用に準ずる教員で、20代教員が圧倒的に多く、初日参加させていただいたが、我が娘よりも若い先生方が集結している場は、実に新鮮だった。

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☆主催:一般財団法人日本私学教育研究所、後援:日本私立中学高等学校連合会、実施:北海道私立中学高等学校協会。教育研究所理事長・連合会会長である富士見丘学園理事長・校長の吉田晋先生が開会の挨拶。

☆現在日本の教育は、21世紀型教育、グローバル教育、アクティブラーニングに直面しているが、今回集まった初任者教員が30年後、40年後日本の教育の担い手として活躍しているときには、もう22世紀型教育の重要性が議論されているだろう。建学の精神を中心に、いまここで出会った生徒の教育に情熱を注ぎつつ、22世紀型教育は自分たちが担っていくという大きな目標も忘れないでほしいという挨拶で研修会は始まった。

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☆一般財団法人東京私立中学高等学校協会副会長、一般財団法人日本私学教育研究所私立学校初任者研修事業検討委員長である工学院大学附属中学高等学校校長の平方邦行先生は、初任者教員が当面直面する21世紀型の学びについて語った。

☆2020年大学入試改革で大学が変われば、中高の授業も変わるという流れが、実際には2030年教育ビジョンや2045年のAI革命を見据えて時代が要請していることであることを丁寧に語った。初任者教員が30年後2045年を迎えたとき、たしかに22世紀型教育が論じられているだろうというビジョンが見えた瞬間だった。

☆私の方は、平方先生のスピーチを受けて、とくにPILとPBLのアクティブラーニングのワークショップを通して、21世紀型学びの本質を共有した(35分だったので、できるかどうか心配だったが、若い情熱にあふれる先生方なら大丈夫だろうと、思い切ってやってみたら、やはりできた。もちろん、エッセンスのみだが)。

☆最初はピアインストラクション(PIL)講義のさわりを少し。30秒とか1分とかの短時間の対話の組み合わせを行った。実はこの短い時間で行うデザインは、欧米の研修では結構ある。コンテンツではなくシステムのリフレクションに重点を置く場合そうなる。この手法は東京や福島でも活用した。

☆アクティブラーニングの大切なところは、リフレクションをこまめに織り交ぜていくこととそのシェアによる気づきが生まれる仕掛け。この仕掛けをうまくつかうと、オープンマインドとフラットな信頼関係が広がって、普段行わざるを得ない規律型コミュニケーションを創造型コミュニケーションにシームレスにシフトしていく。

☆そしてこの継続は教師も生徒も学習者として創造的コミュニケーションが展開するのが日常化する。この前提があってはじめて自律/自立は稼働するし、そうなれば自らどんどん調べ考えていくから「べき数(累乗)」的に伸びる。

☆偏差値のベルカーブをピーキーにぶち破ることができる。この実感は20世紀型教育ではイメージがつかないだろう。21世紀型学びの大きな特徴なのである。

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☆そんな体験の次はPBL体験。お茶大の英語の入試問題を活用して、自ら問いをつくり、マトリックスを活用して、その問いをそれぞれポストイットに書き出して添付。縦軸はブルーム型のタキソノミーをを予め設定。横軸は「思考力・判断力・表現力」。すると、問いの作成に偏りがあることに気づき、アクティブラーニングのシェアの意味を共有できたと思う。

☆つまり、アクティブラーニングでもう一つ大切なことは、タキソノミーのような基準(コンピテンシーとか呼ばれる)を今回は時間の都合で予めブルーム型を活用したが、それまでも自分たちで議論していくことが重要。そしてそれがあるから問いの構造や生徒の学びの状況が見える化・測る化できる。評価が生徒と共有できるのである。「タキソノミー、見える化、測る化」を体験的に共有したわけである。

☆そしてその後、いよいよメインの北海道地区自身による初任者教員研修のプログラムに移行した。最初は、12校の若き教員が10分ずつ、自分の学校の紹介と自分の志をプレゼンするプログラム。

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☆先輩方が、君の志は何ですかと問いかけたわけだが、まさに新渡戸稲造や内村鑑三が札幌農学校で問われたことと同じである。両雄はその後、東京をはじめとする日本全国の教育の礎になるのだが、そういう意味で北海道は、≪私学の系譜≫のルーツの本流なのである。

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☆思いやりの心、隣人愛、世界を引き受けるマインドなど、どの学校も表現は違うが“man for others”というう内村鑑三なら「勇敢な高邁な精神」と言ったであろう建学の精神を熱く語り、その実現のための多様な教育活動をプレゼン。そして志は、結局その建学の精神をのよき継承者になるという決意表明となった。

☆初任者教員のこのマインドとそれを実現するスキルトレーニングへの意志に、北海道私立中学高等学校協会の先生方も頼もしく感じていたようだった。

☆今回の研修は、本日明日と「学習指導分科会」「学級経営分科会」「生活指導分科会」と具体的な教育現場の問題解決の議論をしていく段取りになっている。現実の中にいかに理想の燈をともし続けることができるか。木も見て森も見る現実と理想の統合教育こそ≪私学の系譜≫の本流の証である。

☆北海道の市民が、目先のことだけではなく、北海道全体の知識基盤社会として経済復興を果たすために、このような私立学校の教育に目を向けることは極めて重要である。

☆21世紀型教育は21世紀型経済を必要とする。北海道ルネサンスは≪私学の系譜≫の上流に自分たちがいることに気づくことから始まるのではないか。帰り際、その系譜の本流が創設した北星学園女子の浅利校長、とわの森三愛の榮校長、そして≪私学の系譜≫を保守する北海道私立中学高等学校協会事務局長笠原先生と対話をして、そう確信を抱いたのである。

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