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2016中学入試 どうなる私立中学【38】 闘う渋谷教育学園幕張

☆2015年11月10日、渋谷教育学園幕張の理事長・校長田村哲夫先生は、「渋谷教育学園は共学トップになれたのか」(中公新書ラクレ)を出版しました。20年前は東大3人でしたが、今年56名合格者を輩出。

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☆開設以来33年たって、「千葉県で随一の進学校を作る」という理想が盤石のものとなったわけで、そうなった理由を書かれているということなのでしょう。

☆1998年・99年の私学危機のとき、女子校のモデルが鴎友学園女子、洗足学園だったように、渋幕の教育は、共学化する私立学校のモデルとなりました。

☆本書には、そのモデルのシステムとマインドが書かれています。しかし、なぜ今のタイミングなのでしょう。もちろん、編集者が売れると判断しただろうし、渋谷教育幕張のOB・OGの中には、メディア関係で活躍している優秀な人材が輩出されているの、戦略を企画したのでしょう。

☆では、その戦略とは何か?一つは田村先生が高齢ですから、次代を担う先生方に、吉田松陰の「留魂録」さながら、あるいは田村先生の敬愛する内村鑑三の「後世への最大遺物」をイメージしているのでしょう。

☆それにしても鴎友といい、渋谷教育幕張といい、「内村鑑三」の魂という無教会派の魂が生きているのに驚きます。もちろん、田村先生の母校麻布学園は、内村鑑三の師江原素六が創設者で、実に奥深いのですが。

☆その点洗足学園はキリスト教主義ですが、どちらかというとリバタリアニズムとしてのキリスト教主義で、カジュアルで生徒が集まりやすいので、宗教色のない学校のモデルになっていますね。

☆さて、もう一つは、千葉に2つ目の公立中高一貫校の登場です。千葉中につづき、東葛飾中が開設されました。千葉中の開設の時は、警戒されていたものの、渋谷教育学園幕張へのダメージはありませんでした。

☆募集定員が80名だったし、公立志向者と私立志向者では、家庭の年収層がちがっていたということもあるでしょう。千葉中が開設された2008年はリーマンショックの年です。

☆学費が安くて渋谷教育幕張と同じ質の教育を受けることができるならというグループが千葉中に殺到したでしょう。当時はまだまだ所得階層の違いに敏感な保護者が多かったでしょうから、きれいに公立と私立の学費による区分けはくっきりしていたと思います。

☆ところが、今年東葛飾中が登場し、募集定員は80名ですが、千葉中と合わせると、160名です。しかも、共稼ぎも多くなっている昨今、世帯年収では、私立も通わせることができるという家庭が多くなっています。

☆ですから、県立中高一貫校と渋谷教育幕張の併願は多くなるはずです。すでに模擬試験などで予想されていることでもあります。

☆ということは、千葉県の管理教育に物申すという勢いで「千葉県で随一の進学校」を目指してきたのですが、そこにゆらぎが生じる空気が生まれてきます。何せ中高一貫校はある意味特区ですから、何をやってもよいし、渋谷教育幕張を覆すためには、予算もつきます。おまけに、2020年大学入試改革対応のために、アクティブラーニングだ、思考力だ、論文編集力だ、グローバル教育だは当たり前になります。

☆おまけに、東大を打ち負かしたシンガポールの大学(NUS)は、学費から生活費から全額給付奨学金をくれるのです。渋谷教育学園幕張はむしろシンガポールから撤退しましたから、先見の明がなかったということになりますし。

☆県立中高一貫校の生徒は、中高も無料で勉学し、大学も、米国、シンガポールやインドネシア、フランス、ドイツなどに留学すれば、将来学費が倍増すると言われている日本の国立大学よりも安い費用で行けるようになります。もちろん奨学金が前提です。

☆こうなると優秀生160名は、まず県立中高一貫校を目指すでしょう。リセマム の外岡紘代の記事によると、「東葛飾中では、募集定員80名(男女同数を基本とする)のところ、1,157名(男子585名、女子572名)が志願。志願倍率は14.5倍となった。一次検査を受検したのは1,147名(男子579名、女子568名)で、受検倍率は14.3倍」だそうです。

☆田村先生の敬愛する内村鑑三やルソーのような思想を持ち込めない県立中高一貫校は洗足のようにカジュアルで、現実主義で、功利主義で驀進できるからです。(内村鑑三とルソーは文科省の嫌われ者なのですから!)

☆そこで、田村先生はそれでよいのかとアテンションを掲げたのです。

☆そしてもう1つは、21世紀型教育2.0以上を推進するグループの登場です。2002年から2010年にかけて、田村先生自身が重視する「知性」「理性」に激震が走りました。それは世界の学校が一斉に21世紀型スキルに大転換したからです。ここでは、タブレットや電子黒板は当たり前で、そのうちAIを活用したデータ-サイエンティストしてのSGT(スーパーグローバルティーチャー)をずらりとそろえる学校が現れたのです。

☆「自調自考」というスタイルがPBL型アクティブラーニングによって、破壊的創造の憂き目にあっているのです。あわてた渋谷教育学園グループは、SGH指定校になりましたが、新興勢力にはかないません。

☆洗足や鴎友だって、30年前は偏差値は30台、40台でした。渋谷教育幕張だって、スタート時点で生徒募集で成功していましたから、ある程度ありましたが、今のような高さではありませんでした。

☆そのことを一番よく知っているのは田村先生です。開智学園の総帥青木理事長の21世紀型教育を掲げての東京進出、あの広尾学園を立ち上げた大橋清貫学園長がまたも奇跡をおこした三田国際の生徒募集戦略。もちろん、いずれも渋谷教育幕張とは全く違う先鋭的な教育シーンを毎日展開しているのですから、焦ります。

☆しかし、モデルチェンジはもうできません。常に新興勢力に追いつき追い越されるのは、田村先生ご自身が知っています。それゆえ、アテンションをあげたわけです。

☆しかも、今回は21世紀型教育2.0以上を推進する私立学校がグループになって迫ってきています。かえつ有明や工学院、順天、桜丘、聖徳学園などの共学校は、三田国際同様、渋谷教育学園幕張モデルを参考にしていません。ダイレクトに海外の名門大学、名門高校、そしてグローバルアントレプレナーシップを発揮している団体です。

☆鴎友や洗足、そして渋谷教育学園幕張が30年かけて浮上してきた勢いを、ICT時代は3倍速以上で創出します。2011年発足した21世紀型教育を創る会のような学校は、2020年を一区切りとして設定しています。他の難関校は、この動きを一笑に付していますが、歴史認識の見識をもっている慧眼の田村先生は、密かに警戒しているでしょう。

☆御三家はおわらせたのは自分なのだから、渋谷教育学園幕張は終わらない。その田村先生の信念が今回の本として生き生きと表出されています。

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